前回のこちらの記事の続きです。
前回の記事では、心理学者である 森 裕子先生と、石丸先生との共著である「マウンティングエピソードの収集とその分類:隠蔽された格付け争いと女性の傷つき」という論文を紹介しました。そして記事の中で、森先生が、「本当に三すくみは女性だけなのか、男性も単純なひとつの評価軸だけで上下が決まるわけではない、というご意見もいただいて、確かにそのとおりだなと反省した部分もあった、というような発言をされていたことを紹介しました。
この例外もあるではないか、という批判は、はっきりいって新しい理論を生み出そうという意欲的な学術的研究者的態度に対して、超・否定的な態度であり、こういう輩がはびこっているのが、今の日本のアカデミック界の現状なんだろうな、と思います。これも一種のマウントですね。
それはさておき、本当に正しいのかわからないけれども、一部、もっともな部分もある理論というのは、実はきちんと整理すればそこから新しいものが見出せるかもしれないよ、ということで、今日は、たまたま発見した2つの理論を紹介し、そこからもうひとつの可能性について気づいてしまったので、そこまでを整理しておきたいと思います。
1.クイーンビー症候群
これはこちらの記事で発見しました。引用交えて解説していきます。
まず、研究的な話の部分。筆者は、東北大学大学院情報科学研究科 加齢医学研究所認知行動脳科学研究分野准教授 細田 千尋 先生です。
さて、ここで思い出していただきたいのが、前記事で紹介した三すくみの図です。
このクイーンビー症候群として語られることと<人間としての地位・能力>マウンティング、というのは、どうやら同じことを言っている気がします。
もちろん、上の記事ではすべてこなしている、という風に書いていますが、3つとも完璧に、というのはやはり人間では無理でないかと思います。<伝統的な女性としての地位・能力>の部分を最低限こなし、<女性としての性的魅力>は若干、犠牲にしてでも、<人間としての地位・能力>を主にアピールする、というのが、このクイーンビー症候群として語られているのではないかと思われます。
関連記事がこちらにもありました。筆者は、ジャーナリスト・近畿大学教授
の奥田 祥子先生です。
クイーンビー症候群は、<人間としての地位・能力>をメインの価値観として、発揮され、そこに<伝統的な女性としての地位・能力>の裏の関心が重なるとハラスメント的な面を帯びてくる、という印象です。
ちなみに別事例として、むしろ女性だけの職場ですと、男性の中にこのクイーンビー症候群が見られる、という貴重な声もありましたので、参考までに紹介しておきます。
サービス業から男性が遠ざかることへの一考察 ―ジェンダーステレオタイプ脱却の鍵を探る―大塚 彩音(村上ゼミ)
https://www.senshu-u.ac.jp/School/shakai/2_shakaigakka/2.5_thesis/abstracts/2022/thesis2022_daihyo1_murakami.pdf
2.バタフライ症候群
次は逆に、<女性としての性的魅力>を男性社会での生存戦略に選んだ女子について、です。
こちらの記事から引用します。筆者はライターの北条かやさんです。(リンクのSNSが全部、見れないですが、叩かれたのでしょうか? Wikipedia貼っておきます。)
この作者さんは大学の先生ではないので読みやすいですが、ちょっと軽い文体になっていますので、もうちょっと研究っぽく解釈しますと、女性としての魅力を使って職場で生き残ろうとする生存戦略とも言えます。こういう先輩が居る場合、新人女子は先輩の戦略に気づき、自分はもう少し控え目な戦略を採用することでしょう。そうすると、「協調性がない」というマウントを取ってくる、という話です。
この話の面白いところは、「男性は意外に鈍感なので、こうした女性の態度の「裏にある思惑」には気が付きにくい」ということです。つまり、これは男性向けの戦略ではないのです。あくまでも同性に対するマウンティングになっている、というところが、実に面白い。
これらの記事、すべて女性の手によるもの、というのが、男性編集者の思惑なのか、それとも女性が女性を叩きたいからなのか、それはよくわかりませんが、こうして見ていると、あれ、もうひとつの可能性については名づけられていないのかな、ということが気になりました。
それが、<伝統的な女性としての地位・能力>をアピールして、他の女性を排除していく女性の存在です。
ここで思い出したのが、エアバッグで世界最大のシェアを持ちながら不祥事で2017年に経営破綻した、タカタ株式会社の事例です。
まずはWikipediaから事実関係を整理します。