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パーパスモデルでみるソーシャルアクション4事例

この記事では「パーパスモデル」という手法で、4つのソーシャルアクションの事例を紹介します。

サプライチェーンを巻き込んだ環境再生型で自然を大切にする基準づくり、「良い会社」を認定する非営利組織の起こしているムーブメント、政治家と市民をつなぐスタートアップ、女性の自己肯定感を高める発信と教育プログラムを行う企業の継続的なCSRの取り組みの4つを取り上げます。

図解の大まかな見方はこうです。周りにはステークホルダーがいて、それぞれの役割と目的が書かれています。そして中央には、場と共通目的が書かれます。図の上下にも意味があります。下側が価値をつくる側、上側が価値をうけとる側です。色は企業、行政、市民、大学・研究機関・専門家の4つに分けて表示しています。

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ではさっそく4つの事例を順番に紹介していきます。

Regenerative Organic Certified

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概要
Regenerative Organic Certifiedは、パタゴニアが主導し、研究機関・大学・非営利団体・消費者・生産者・ブランドと共につくった環境再生型のオーガニック基準である。(Regenerative Organic Alliance(以下ROA)は彼らの協働組織の名称)

背景
アメリカでは、土壌は補充される10倍のスピードで失われており、科学者の予測では、現行の工業型農業慣行と森林伐採では、60年以内に利用可能な表土が喪失してしまうといわれている。

具体的に何をしたのか
ROAは「リジェネラティブ(環境再生型)」に加え、化学合成農薬や化学肥料に頼らず、土壌の持つ力を活かして環境への負荷をできる限り少なくする「オーガニック」の概念を加えて基準を作ることに取り組んだ。オーガニック基準のベースには米国農務省が既に出しているものを元に、有機農法の民間研究機関であるロデール・インスティチュートの科学者たちと協働し、よりハードルの高い認証制度をつくった。彼らは環境再生型農法を世界中で導入すれば、気候変動を止められる可能性もあると指摘している。

どう進めたのか
きっかけはパタゴニアが新規事業である「パタゴニアプロビジョンズ」(地球を再生するイノベーティブな方法で調達された製品に焦点を当てた食品事業)を通して農業の重要性に気づいたことで、この認証制度に取り組んだ。企業が理念を持ってマルチステークホルダーで共創しながら新たにソーシャルグッドな市場を作っている貴重な一例である。(※パタゴニアの企業理念は2019年にアップデートされ「We’re in business to save our home planet.(私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む)」となっている。)

パタゴニアおよびROAは投資家には長期的思考で持続可能なサプライチェーンへの投資を呼びかけ、オーガニックブランドを持つ企業には認証を勧め、政府には再生型農業を促進する補助金や制度に取り組むようさらなる協働を呼びかけている。

B Corp

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概要
B Corpは、米国の非営利団体「B Lab」が運営する、環境や社会に配慮した「良い会社」に対して与えられる認証制度で、2020年12月現在世界70ヵ国、3500社ほどが認証されている。

背景
これまでもフェアトレード認証やLEED認証など社会や環境に配慮した認証制度はあったが、会社そのもののあり方を認証するものはなかった。2007年、『ビジネスの成功を再定義し、より包括的で持続可能な経済を加速させる』ためB Labが設立された。

B Labのファウンダーの二人は、スタンフォード大の同級生で、元々スポーツ・アパレルのブランド「AND 1」を創立し、B Corpの基準となるような会社経営をしていた。

具体的に何をしたのか
「ガバナンス」「ワーカーズ」「コミュニティ」「環境」という4つの分類で認証基準をつくり、スコアを数値化する。企業は認証を取得するため200点満点中80点以上の厳しい基準をクリアしなければならない。また、売上高に応じた年会費を支払う仕組みも企業規模に関わらず認証を受けられるのがうまい。

さらに企業は特定の条件ではあるが会社の定款に『公益に寄与する』ことを明記する必要まである。また、認証は3年ごとに更新があり、都度チェックを受けなければならないため、認定された企業も一度認証をクリアしたら終わりではなく、常にアップデートしていくことが求められる。

それだけの厳しい基準をクリアすることで、良い会社であることが社会的に認知され、消費者が認証された商品を積極的に購入したり、認証された会社で働きたいという人が増えたりしている。厳しい基準を策定するために、学者、起業家、投資家、思想家などからなる独立した諮問委員会を設置し、第三者的な視点を入れている。

どう進めたのか
最初は19の会社に認証を与えるところから始まったボトムアップの取り組み、だが、株主至上主義に疑問をもつ若い世代の共感を経て現在は世界的なムーブメントに広がっている。B LABは地域ごとに組成され、認証基準もそれぞれの国、地域、業種によってローカライズされ、いまもアップデートされ続けている。

また、弁護士とともに、NPOでも株式会社でもない新たな法人形態である「Benefit Corporation」を制定するよう自治体や国に働きかけるなど、単なる民間の認証ではなく、公的なものにする活動も行っている。

PoliPoli

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概要
PoliPoliは、「社会の意思決定をサポートする」をミッションに掲げ、政治家と有権者をつなぐ政治プラットフォーム。PoilPoliのサイト上で、国会議員が国の課題とそれをどういう政策で解決するかを提示して、それに共感した市民が政策の推進に協力ができる。

背景
これまでの社会では、国の大きな課題がマスコミによって発信され、市民は投票することで政治に意見を届けていた。しかし、インターネットの登場によって、これまで可視化されていなかった多種多様な課題が可視化された。

それらの課題に政治家も対応しようとするが、なかなかその解決がおいつかず、市民も意見が届かないと無力感などを感じてしまう。そうした状況を解決しようとしているのが、PoliPoliだ。

具体的に何をしたのか
PoliPoliでは、政治家が政策を提案し、それを市民が応援できる。政策はインフォグラフィクスで解説されており、なぜその政策が必要なのか、目標は何か、ということが理解しやすくなっている。

市民はそれに共感したら、コメントでその政策を推進する政治家を応援したり、意見を提示したりする。また、直接議員に会って話したい場合もアプローチができる。もし既存の政策で解決されていない問題があったとした場合、政策のリクエストも可能だ。

政策を推進する過程で国会議員から活動報告も行われるため、自分たちの意見が届いている実感を得ることができる。

また、市民の関わり方として「アンバサダー」というものがあり、PoliPoliがよりよいサービスになるように運営を協力することもできる。

どう進めたのか
きっかけは、株式会社PoliPoli代表の伊藤和真さんが19歳の時の衆議院選挙。インターネットが当たり前の時代に、アナログな仕組みで選挙が行われていることに違和感を感じて、アプリを開発したことがはじまり。

2019年12月にアプリからWebに移行し、当初のサービスのコンセプトを刷新するなど、試行錯誤を続けている。テクノロジーの力で新しい政治の仕組みをつくっていく新しいチャレンジに今後も注目していきたい。

Dove Self-Esteem Project

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概要
固定概念に縛られてきた「美」の概念を解放し、自己肯定感を高めるプロジェクト。主に若年層の女性を中心に、その親、そして教員向けの自己肯定感を高める教育プログラムを提供している。

背景
ダヴは2004年から「リアルビューティー」というコンセプトでキャンペーンを実施している。当初の調査の中で、世界中の女性が自分を美しいと思う割合がたったの4%であり、10人に6人もの少女たちが、さまざまな活動を自分の外見が好きでないという理由で諦めてしまっているという結果に衝撃を受け、『美しさが悩みの種ではなく、その人の自信の源となる』ように容姿への自信と自己肯定感を高めるプログラムの提供を始めた。

具体的に何をしたのか
2010年までに500万人の少女にプログラムを提供することをミッションに、キャンペーンを行い、基金をつくって同じ目的のもと協働できるパートナーに資金提供を行った。2020年までに2000万人へのプログラム提供という目標も達成しており、現在もガールスカウト世界連盟(対女性)やユニセフ(対こども)、女性皮膚科学学会(対皮膚科医)などと連携し、自己肯定感を高めるプログラムの受講者を広げている。プログラムの作成には心理学や社会学の専門家も入っている。

どう進めたのか
1つの企業がブランドのパーパスを突き詰めて行った先に、世界中のひとが美しくあるために『自己肯定感のなさ』という社会の課題に向き合い、長期的に、そして資金を投じて、専門家や国際的な活動体と連携しながら価値観のアップデートに取り組んでいる姿がすばらしい。単純に購買促進させる広告ではなく、意識あるメッセージの発信とキャンペーンにとどまらない実際のアクションが結果的にDoveのブランディングに繋がり、ユニリーバ自体の価値にも貢献していると思われる。

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事例の紹介は以上です。

各事例はできるだけ丁寧に情報をさがしましたが、実際に取材しているわけではないこともあり、情報に不備があるかもしれません。もし記載内容にまちがいなどありましたら教えてください。

尚、PoliPoliについては代表の伊藤さんに記事公開前に見ていただき、掲載許可をいただいています。

一枚のモデルをつくるために入念に調べるのですが、誰がどんな役割と目的意識でそのプロジェクトに関わっているか?は基本的な情報のようで、なかなか情報が出てこないことも多く、骨が折れる作業です...。

利害関係以上に目的でつながる関係性が大事だと言われつつも、実際どうしたらいいのか?みんなどうやってるのか?はなかなか情報がない。だから、もっと情報開示して、方法論を構造化して、体系だてていくべきだと思うのです。パーパスモデルが、その助けになれたらと思っています。

パーパスモデルは、図解総研の基礎研究プログラムでイノベーションのための場や共創を研究している吉備友理恵氏との共同で考案したものです(本記事も共同で制作しています)。

その流れもあって、これまで取り上げた事例は、リアルな「場」のあるものでしたが、今回の記事では、概念的な「場」が中心にきている事例でもパーパスモデルを書いてみようという裏テーマがありました。

実際に、今回の記事ではWebサービスだったり、組織だったり、プラットフォームだったりと、リアルな場が中心にあるわけではない事例を取り上げています(もちろんリアルな場も関係しますが)。

↓リアルな「場」のある事例を取り上げた記事

いざ書いてみると、リアルな場のあるなしに関わらず、ステークホルダーを超えて共感される社会的意義のある共通目的があれば、その周囲には多様なステークホルダーが関係してくることが事例を通じてわかってきました。

先日、パーパスモデルで事例をまとめる本の出版が決まったため、いまはこうした事例をあつめながら、できたものから徐々に公開していっています。他にもパーパスモデルでかくとよさそう、という良い事例があれば、ぜひ教えてください。

以上です。


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