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TPP11の図解

TPP11(環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定)を図解してみました。

この図解は「政策図解」という形式で書かれています。政策図解は、1枚で政策の基本的な情報をモデル化するものです。 

追記:
ついに「政策図解」が本になりました。これまでnoteで書いた記事を大幅加筆して生まれました。社会のしくみがみえてくる、50の政策を図解した本です。よければぜひご覧ください!


経済がグローバル化し、国家間で経済連携をしながら企業が国境を越えて活動をすることが当たり前になっています。

その代表的な例として、TPP11を紹介します。

それではどうぞ。

TPP11

アジア太平洋地域の経済連携を高度化するための協定

TPP11の正式名称は、「環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)」という。太平洋やその周辺に位置する国・地域の間の経済連携協定だ。この協定は、モノの関税だけでなくサービスや投資の自由化を進め、さらには知的財産・金融サービス・電子商取引・国有企業の規律など、幅広い分野で新たなルールの構築を目指している。(※1

経済分野での連携というと、「仲の良い国同士で貿易を促進するために、その二国間での貿易にかかる関税を削減すること」を思い浮かべる人もいるのではないだろうか。
かつてはそのような二国間での自由貿易を目的とした協定も多く締結されてきたが、TPP11は異なる。
協定を構成している国の違い・協定の内容の違い、の2点について解説しよう。

まず、TPP11は二国ではなく、複数の国によって構成されている。

【CPTPP11 署名国】(2022年4月時点)
日本、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム
※うち、ブルネイ、チリ、マレーシアは、国内の手続きが完了していない「未締結国」

現在の署名国は上記の11か国だが、当初はTPP12としてアメリカを加えた12か国で交渉がされていた。

ちなみに正式名称は、アメリカを含む当初の協定が「TPP(環太平洋パートナーシップ)」、アメリカ脱退後が「CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定)」だが、日本国内では両者の違いがわかりやすいよう、国の数を用いて「TPP12」「TPP11」の略称を用いられることが多い。今後TPP11からさらに署名国が増えた場合には名称も変わりうるため要注意だ。

次は、協定の内容について紹介する。冒頭の定義で触れた通り、TPP協定は貿易の自由化のみならず、知的財産・金融サービス・電子商取引・国有企業の規律など、幅広い分野で新たなルールの構築を目指している。具体的にどんなルールの構築が目指されているのか?について、知的財産と電子商取引を例に挙げる。

知的財産(商標・特許・著作権など)の保護については、WTOなどの国際ルールを上回る水準を定め、知的財産の保護と利用の推進を目指している。例えば、著作権の保護期間は原則著作者の死後50年であるが、TPPでは70年まで延長された。

また、電子商取引(EC)については、WTOによる国際ルールはないが、国家間同士で締結されているルールよりも包括的で高いレベルの内容が規定されている。例えば、締結国間での電子商取引に関税をかけないことや、ビジネスをするためにその国内にコンピューター関連設備の設置を要求しないこと、消費者保護に関するルールなどが含まれている。

では、TPP11はどの程度の経済効果があるものなのか?

11か国合計のGDPは10兆ドル超で、世界全体の13%を占めている。
日本政府は当初、TPP協定の発効により、日本の実質GDPが7兆8000億円(約1.5%)押し上げられ、労働供給は約0.7%(約46万人)増加すると試算していた。(※2
また、大企業のみならず中小企業も締約国でのビジネスがしやすくなり、かつ、関税の削減により、消費者は海外の牛肉や乳製品などを手軽な価格で購入できるようになることが期待されていた。

しかし、新型コロナウイルス感染症が世界的に流行し、経済に打撃を与えた影響もあり、現時点での経済効果の評価は難しい状況だ。

こうした難しさがあるとはいえ、今後はイギリスの加入に向けた動きや、その他の国・地域からの加入関心の高まり、アメリカ復帰の可能性も考慮すれば、TPP11拡大に伴い、経済効果が大きくなる可能性がある。

今回取り上げたTPP11を見ると分かるとおり、国家間の連携や対立によって経済やビジネスは大きな影響を受けている。いま自分の携わっているビジネスが世界とどのように繋がっているだろうか?ということを考えながら、国際政治経済の動向を追ってみてほしい。

▼参照記事
※1  https://www.cas.go.jp/jp/tpp/tppinfo/kyotei/tpp11/index.html 
(内閣官房HPより)
※2  https://www.cas.go.jp/jp/tpp/tppinfo/kyotei/tpp11/pdf/20171221_eutpp_bunseki.pdf
『日EU・EPA等の経済効果分析』
(内閣官房TPP等政府対策本部、2017年12月)注:アメリカも含んだ試算

説明は以上です。

今回の記事以外にも、様々な事例を図解で紹介しています。「政策図解シリーズ」というマガジンでこれまでの政策図解の記事がまとめられているので、よければ見てみてください。フォローもしていただけると嬉しいです。

https://note.com/bizgram/m/mb0dcc005d7c0
以下、今回の記事のクレジットです。


図解&原稿:光武佳寿美
レビュー:沖山誠、近藤哲朗
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