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【ものづくり】エンジニアリングプラスチック

はじめに

生活の身近なところで利用されている素材が「プラスチック」です。「プラスチック」といっても色々な種類があります。中でも「エンジニアリングプラスチック」あるいは「エンプラ」と呼ばれる素材は汎用の、よく使われているプラスチック素材を上回る耐久性や、高い温度でも強度があるといった特性を持っています。

そもそも普通の、汎用プラスチックって?

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「エンジニアリングプラスチック(エンプラ)」は「汎用の、よく使われているプラスチック素材を上回る素材」というのあれば、汎用のものやよく知られているプラスチックというのはどんなものがあるのでしょうか。

汎用プラスチックはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)といったものが挙げられます。

ポリエチレンは加工しやすいことからシャンプーやリンスの容器、食器などに使われているので一番身近なプラスチック素材といえるかもしれません。ポリプロピレンは耐熱性や硬質であることから、自動車部品で多く使われています。ポリ塩化ビニルは「塩ビ」とも呼ばれています。建設資材、雨どいやパイプで使われているので、目にする機会が多いでしょう。

汎用の中にはポリエチレンテレフタレートも含まれています。この長い名前で聞くとよくわからない素材ですが、「PET」と呼べばわかるのではないでしょうか。ペットボトルの「PET」です。

エンジニアリングプラスチックにはどんなものがある?

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汎用プラスチックは単純な構造で製造しやすいことから「汎用」と言われるのですが、熱に弱いという弱点があります。およそ100度C前後で溶けだしてしまいます。

この弱点を克服し、強度も高めたものが「エンジニアリングプラスチック(エンプラ)」です。ポリカーボネート(PC)やポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)は5大汎用エンプラとして、幅広い分野で利用されています。

ポリカーボネート(PC)スーツケースの材料で使われているので、聞いたことがある人も少なくないでしょう。ポリブチレンテレフタレート(PBT)はコネクターやスイッチといった部品に利用されていますし、自動車の燃料油キャップにはポリアセタール(POM)が使われているなど、エンジニアリングプラスチック(エンプラ)も身近なところにあるのです。

強度維持しながら軽量化が可能なエンプラ製部品

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エンジニアリングプラスチック(エンプラ)には耐薬品性や耐衝撃性、耐摩耗性のほか、難燃性などにも優れたものもあります。アルミニウムなどの金属製部品をエンプラ製の部品に置き換えれば、強度を維持しながら、軽量化できること、さらにはサビを防止するための防錆処理が省くことができるというメリットがあります。

こうした特製から軽量で高剛性が求められている自動車部品の素材として、エンプラの普及拡大が進んでいます。

ポリアミド(PA)は軽量性、耐熱性、耐油性、機械的強度などに優れていることから、自動車の冷却ファンやインテークマニホールド、エンジンのシリンダーヘッドカバーなどに利用されています。ポリカーボネート(PC)はヘッドライトカバーや樹脂ガラスに、また変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)はエアロパーツやホイールキャップなどの素材になっています。

エンプラの上をゆくスーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)

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また150度C以上というエンプラよりもさらに優れた耐熱性を持つスーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)も過酷な環境下で使用される軽量・高強度部材として普及拡大しています。ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)やポリアリレート(PAR)、ポリエーテルサルホン(PES)などがエンプラよりもさらに高い耐熱性を持つ「スーパーエンプラ」に分類されます。

ポリフェニレンサルファイド(PPS)は耐熱性や耐薬品、寸法安定性にも優れていることからヒューズケース、ヘッドランプのバルブソケット、スロットルボディー、センサーなどで使われています。ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)は300度C以上の高い融点、連続使用温度が200度C以上のような過酷な状況における長期の耐熱性、耐油性、耐薬品性、対放射線性のほか、高い摺動特性もあります。そのため、アンチロックブレーキシステム(ABS)関連の部品やトランスミッションのシールリング、ボールベアリングなどにも採用されています。


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