若年富裕層を引き込む外商戦略
はじめに
結論から言うと、若年富裕層をターゲットにした外商戦略は、百貨店の売上を大きく押し上げる可能性があります。特に、LINEなどのチャットツールを活用した迅速な対応や、オンライン入会の導入が成功の鍵となっています。この記事では、具体的な成功ポイントや他の企業でも再現可能な戦略について詳しく解説します。
百貨店の外商とは
百貨店が提供する特別なサービスで、主に富裕層の顧客を対象としています。以下に外商の主な特徴をまとめます:
定義:
外商とは、百貨店の場以外で顧客に商品を紹介し、販売交渉を行う行為です。優良顧客の自宅や指定の場所に外商担当者が出向いて商品を紹介したり、百貨店内で顧客に付き添って買い物をサポートしたりします。対象顧客:
外商サービスの対象となるのは、年間購入額が高い「お得意様」です。具体的には、年間100万円以上の買い物をする顧客が目安とされています。また、財界や芸能界の有名人なども対象となることがあります。外商カード:
各百貨店が発行する「お得意様カード」や「外商カード」の所有者が外商サービスを利用できます。このカードの取得方法は百貨店によって異なり、既存の外商顧客からの紹介や、百貨店からの招待などがあります。主なサービス内容:
専任の担当者がつき、顧客の好みやサイズを把握
新商品の案内や自宅への商品持参
百貨店内での買い物付き添い
特別なイベントや催事への招待
商品の割引
自宅への配送サービス
外商の重要性
百貨店業界が厳しい状況にある中、外商は重要な収益源となっています。外商売上は百貨店の売上高の2割程度を占め、店舗によっては半分にもなるとされています。
若年富裕層の重要性
百貨店が注目する若年富裕層は、売上高の約2割を占める重要な顧客層です。特に20~40代の起業家や高収入の夫婦「パワーカップル」がターゲットとなっています。この層は購買単価が高く、ブランド品や高級時計などの高額商品を積極的に購入する傾向があります。
LINEを活用した迅速な対応
松坂屋名古屋店の外商担当者、武田翔太郎さんは、LINEを活用して顧客からの問い合わせに瞬時に対応しています。従来の訪問型商談スタイルからオンライン対応にシフトすることで、若い顧客が時間を有効活用できるようになりました。これにより、顧客満足度が向上し、リピート率も高まっています。
チーム体制の導入
松屋銀座では、外商顧客との連絡手段に「LINE WORKS」を導入し、複数の外商員で1人の顧客を担当するチーム体制を本格的に始めました。この体制により、顧客の即買い需要に迅速に対応できるようになり、売上の増加に寄与しています。
オンライン入会の導入
大丸松坂屋は、2021年に外商カードのオンライン入会を業界でいち早く解禁しました。これにより、外商会員の約7割がオンライン経由で入会するようになり、若年層との新たな接点が拡大しました。オンライン入会の導入は、若年層の購買力を引き出すための重要な施策となっています。
外商員の若返り
そごう・西武は、2024年度の新入社員全員を外商に配属しました。若手外商員の導入により、組織の活性化や良い緊張感が生まれ、顧客との関係構築がスムーズに進むようになりました。若手外商員は、医者や外国人、インフルエンサーなどの若い外商客を担当し、顧客満足度を高めています。
成功ポイントのまとめ
LINEなどのチャットツールを活用: 顧客からの問い合わせに迅速に対応し、時間を有効活用できるようにする。
チーム体制の導入: 複数の外商員で1人の顧客を担当し、即買い需要に対応する。
オンライン入会の導入: オンラインでの入会手続きを導入し、若年層との接点を拡大する。
外商員の若返り: 若手外商員を積極的に導入し、組織の活性化を図る。
結論
若年富裕層をターゲットにした外商戦略は、百貨店の売上を大きく押し上げる可能性があります。LINEなどのチャットツールを活用した迅速な対応や、オンライン入会の導入、外商員の若返りなどの施策が成功の鍵となります。他の企業でもこれらの戦略を取り入れることで、同様の成功を収めることができるでしょう。
引用:2024/06/25 日本経済新聞 朝刊 14ページ
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