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ガラスの靴にあこがれて

90年代前後に生まれた女の子ならみんな欲しがったこぞって履いたガラスの靴。

機能性なんてミリもないし、とにかくかったいのでかかとは靴擦れする。しかし!それでもみんな絆創膏を我慢をし履いて保育園に登園したものだ。


カチカチのプラスチックの靴。

これを履けばみんなお姫様。
登園が優雅になったもの。これを履いていく時だけはみんなワンピースだったりオシャレしてとにかく可愛いのだった。

あこがれは私も。
ほとんどの女子がガラスの靴を履き始めて ばあちゃんにただを捏ねてUNOの靴屋で買ってもらった。

ラメ入りでフルーツビーズがオシャレなピンクのガラスの靴だった。

このガラスの靴は可愛いのだけど……かならず誰しも靴擦れをする。

かかとに小指の付け根。

みんなそれでも頑張って履いていた。オシャレは我慢も必要だ。この頃からの英才教育。のちに冬でもミニスカや生地のない服にいくわけであるがそれまた。(笑)

そんなわたしのあんよもボロボロになった。

それでもボロボロになりながらも我慢してお姫様を貫き通し、保育園という名のお城へ。

ばぁやと別れて先生にスカートの端を持ち上げ会釈し【ごきげんよう】と挨拶。

 素足で履くガラスの靴はとってもフィットするので脱ぐのが大変だけど、靴擦れからの痛みから逃れられるのです。脱ぎ捨てるように脱いだ。この辺は バットプリンセス。しかしそれだけ。
内履きのゴム靴に変わっても
その日はお遊戯も舞踏会に感じるんだもの。
優雅に舞ってみるし、カチカチ山のたぬきさんも仕草ひとつ意識したわ。

なぜなら私はお姫様だから。

給食もちまちま食べるのよ。
お姫様は大きな口をあけないの。
おちょぼ口で食べるのが粋なのよ。

そんなことを言いながらガラスの靴チームは最後まで役になりきるのだ。立ち振る舞いが本当に変わるのだった。

……保育園の先生は見ていておもしろかっただろうなと思う。(笑)

わたしにとってガラスの靴は魔法のアイテム。
お姫様になれるのだ。それはそれは毎日履き続けたのだった。

そうなるとカチカチだったガラスの靴も私の足の形にしっくりくるようになる。そうなると靴擦れもなくなり本物の私だけの靴になるのだ。


どんな時も履く。相棒のようなものであった。

しかし。


事件が起こる。
それは ばあちゃんちでのことだった……。


その日もプリンセスビヨン酢はミニミニのスカート履いてガラスの靴を履いてばぁちゃんちの畑を……いやお庭をお散歩していた。

緑に溢れたお庭の傍には用水が小川が流れている。
モンシロチョウ?がヒラヒラ飛んでいた。

ふと、用水の小川の側へ。

朝顔の木がわっさりしているそばで 野焼き 焚き火をしていた。

わたしはクッキング魂が溢れ 傍にあった捨て大根に木の枝を刺し その火で焼き始めた


火はぱちぱちしながら私の大根を炙っていく。

私はバームクーヘンを作るかのようにくるくる回した。

 うんこ座り?  子供のしゃがむ姿のあれになり真剣に大根を焼いていた。

大根を取り出して塩コショウのつもりで砂をかけてまた焼く。

私は熱中した。


もうそろそろ塩コショウまた掛けなきゃと取り出した瞬間……


パーンっ!!!!!


なにかがはじけ飛んだ。
その瞬間 左の内太ももと足首に鋭い痛みとじわじわと広がる熱さに私は思わず 足を振り上げ叫んだ!


「あつーーーいっ!!!!!!!!」


その場で地団駄をふんで熱さから逃れようとしたのだが広がる熱さに暴れていると ばあちゃんが走ってきた。

「なんしとるんや!!!!」

そういって 火から私を離して全身を見る。

すると

内ももと足首に真っ黒ななにかが ぺっとりついていた。

わたしは号泣しながら痛い痛いと泣いた

ばあちゃんは慌てて私を外に置いてある2層式の洗濯機にぶち込んで水をかけた。

内ももにもかかるようにホースを私に持たせて病院に電話をしに行った。

私は痛いと思いながらふと、足元を見るとガラスの靴を片っぽしか履いてないのだ。

その焦りと痛みとパニックになりながらも洗濯機に入っていた。

歩けないと判断したばあちゃんは、私を台車にのせて最寄りの病院まで運んだ。

人を乗せて運んではいけませんよ!


検査の結果、焚き火の中にプラスチックがあって膨張して破裂、ドロドロに解けたものが直撃したのであろうと。

足首はぷくーっと水膨れ。しかしこれは次第に小さくなるので大丈夫であろうと。

内ももはしつこく付いてしまったので痕が残る可能性があるとの事だった。

 ジリジリする痛みを抑える薬と包帯を巻いてもらいまた台車にのって帰る。

私はばあちゃんに聞いた
「私のガラスの靴片方しかないげん……落ちてない?」

ばあちゃんは焚き火のまわりやその周辺を見てくれたけど見当たらなかった……。


じつは……もう分かっていた。

私が熱いと叫んで足を蹴り上げた瞬間

 すぽーんとガラスの靴が宙に舞って 地面に落ちたと思ったらころりころりと転がって用水におちたこと。

それを冷静にみた自分がいたのだった。

わかってた。わかってたけど、こんなのあんまりじゃないか。

そう思ってまた泣いた。

ばぁちゃんは痛いんか?大丈夫か?と聞いてくれた。

私は頷いてばあちゃんのその優しさに甘えた。痛い痛いの飛んでけを沢山してもらった。

母には火遊びしていたことと、靴をたかっぽにしたことを怒られたがわたしはそれ以降ガラスの靴を欲しがらなくなった。


なぜなら


片方しか無くなったガラスの靴は本当にシンデレラ。いつかきっと王子様が迎えに来ると思っていた。


ちなみに。
いまも太ももには火傷のあとがのこっている。
太って伸びて見えずらいが残っている。

私の中では王子様のキスマークと呼んでいる。
私の頭は今も花畑なのである。

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