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乗換ダッシュおばさんの謎

コンビニの店員さんが仲間内で、常連のお客さんをその特徴から名づけたニックネームで呼ぶ、というのをネット上でたまに見かける。いつも同じものを買うというようなその人のユニークな点や、また名づける側のネーミングセンスが笑いを誘い、たびたび話題になっているようだ。

コンビニなどの接客業でなくとも、日頃生活していて決まった時間に特定の人物と居合わせることはよくある。わたしの場合は今年から初めて電車通勤というものをしていて、そこで同じ電車に乗り合わせる人たちがそれだ。

わたしが乗り換える駅は2本の路線が丁字型に交わっており、通勤ルートは丁字のしっぽ部分を突き当たりまで行き、南北に伸びる一の字部分を南下する。南北方向共に大きな町に通じているので、朝はそれなりに混雑する。北方向へ向かう人は線路を挟み向かいのホームを目指し階段を下り、南方向へ向かう人は降りて向かいのホームの列へ並ぶ。

その波をかいくぐり、向かいのホームの黄色い点字ブロックの向こう側をダッシュで走り目的の列車を待つ列へ滑り込む女性、それがわたしが「乗り換えダッシュおばさん」と密かに呼んでいる人物だ。

ここまで読むと、「そりゃあ朝の通勤ラッシュ、座りたいしダッシュする気持ちわかるわ」と思うかもしれないし、わたしもそれだったらわざわざ記事を書いたりしない。記事にしたのも、またそのタイトルを謎としたのにも理由がある。

まず、目的の列車が来るまでだいたい3分ほどあり、また乗り換えは特急列車で、先に乗っている乗客で席は埋まっているため、早く乗っても座れるわけでもないこと。その駅や、丁の字のしっぽ方向はどちらかというと住宅地が多く、朝から働きに出たり、学校へ行ったりするために向かう人は少ないので、ごっそりと電車の中の人が入れ替わるようなこともない。
したがって、乗り込んだ後は一応空いてる席がないか見回した後、他の乗り換え客同様立つことになる。

そしてもう一つの理由、こちらの方がより謎だ。その人は特急で一駅行き、そこで準急へ乗り換えるのだ。
しかも、その時は少しも慌てる様子もなく、ゆっくりと歩いて目的の電車へ向かう。今までの落ち着きのなさはどこへ行ったのか。どうしても特急で座りたい特別な理由があるのだろうか。疑問がいくつも湧いては消えたいく。わからない。

もう少し観察を続けることにしよう。そして、その理由がわかった時、また違うあだ名で呼ぶことになるかもしれない。



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