ダブルファンタジー
大学時代のサークルの後輩(と呼ぶには全面的に頼りにしすぎて申し訳ない人)に薦めてもらって貸してもらって、読みました。
「絶対“ああ〜”ってなると思う」
という予言と、youtubeで観たドラマの予告という前情報を持って、上下巻、それぞれ一晩ずつで読みきりました。
以下、ネタバレも含むちょっとした感想文。
上巻で心臓が締め付けられて思わず泣いてしまったのは、
散々主人公を支配して押さえつけて思い通りにコントロールしていた旦那さんが、いざ主人公が家を飛び出そうとしたときに、
通帳と幾らかの現金を手渡してくれた場面。あと、その後立ち尽くして見送る姿が車のサイドミラーに写っている描写。
どんなに嫌で嫌で散々逃げたいと思っても、その一瞬の優しさでぐらついてしまう心情がわたしにもあって泣いた。
そのあと、冷静な女友達の意見ひとつでそうだったわと思い直してしまうところも、情と正論の間でふらふらしてしまうところも。
下巻は恋の始まりと終わりがいくつも登場してきて、
恋の始まりでいつも
“わたしはこういう人を求めていた気がする”
って勘違いしてしまうところも、
恋愛の中盤で慣れてきて、男性の気持ちが冷めてきてしまうのを、どうしようもないとわかっていながらやきもきしてもがいてしまうところも、
あれほど欲しかった言葉や行動や行為をもらっても、タイミングが遅すぎるだけで小さな嫌悪感と面倒くささを覚えて冷め切ってしまう恋の終わりも、
どこかで一度は経験していたような気がした。
それは小説を読んでいるから疑似体験しているのか、それともわたしが本当に現実で通ってきたものが思い出されているのか、
ずっと不思議な感覚で読んでいました。
どエロいシーンがたくさんあったけれども、
そこに対する主人公の考え方と、
なんだかわたしも同じな気がしてどきりとしたり。
さみしさに本当に勝てなそうな夜ってある。一人暮らしって本当に楽しくて自由だけど寂しくて、不自由だけど守られている実家が時折懐かしくなることもある。かといって絶対戻りたくはない。さみしいなあさみしいなあって、抱えて受け入れて進んでいくしかない。朝はやって来るし。
誰でもいいってわけじゃない。
だけど誰かには好かれたい。
他人の手の温かさとか、男の人特有の腕の感じとか、そういうのに触れたいときもある。
とはいえ自分の心の琴線のどこかに触れない限り、どうしても好きにはなれないものなんだよなあ。
それはかかった時間とは全く関係がなかったり。そのきっかけは言葉だったり、あるいは体の一部だったり。
一番好きなのは主人公の女友達でした。
あんな風にズバズバ言いながらも、なんでも聞いてくれてなんでも受け入れてくれるって、女の友情独特のもんじゃないかなあ、と。
読みながら何人かの顔が浮かびました。なんだかありがたい。
薦めてもらってまんまとハマってちょっと恥ずかしいくらい。
文学っぽいキザで気取った表現の仕方にうっすら涼しくなってしまうところももちろんあったけれども、
それもまた、“ダブルファンタジー”(現実と虚構)ってことで。
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