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2019-20 チャンピオンズリーグ ラウンド16 2ndleg RBライプツィヒvsトッテナム マッチレビュー~ナイモノバカリ~

 久々となるスパーズのマッチレビュー。そして、筆者がチャンピオンズリーグの試合を取り上げるのは初である。
 現在、怪我人が続出したり、チームが波に乗れなかったりと不安材料が募るトッテナムだが、そんな状況下でも日程は待ったをかけてくれない。今週はミッドウィークにRBライプツィヒとの2ndレグに臨んだ。
 1stレグはPKから失点を許し0-1で敗戦。アウェイゴールを献上した中でのゲームとなるが、昨シーズンのアヤックス戦同様に奇跡を起こせたのだろうか。

両チームのスタメン

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 ライプツィヒは3-4-3のフォーメーション。対するトッテナムも同じような布陣で臨んだ。DFはタンガンガ、ダイアー、アルデルヴァイレルトの3枚。両WBにはオーリエとセセニョン。CHにロ・チェルソとウィンクス。先日のバーンリー戦で怪我をしたベルフワインに代わりラメラが先発出場となった。


ミラーゲームの弊害

 両チームのフォーメーションを見て分かる通り、ミラーゲームとなったこの試合。相手選手と対面する機会が増える中で、トッテナムの立ち上がりは左右非対称の形+アリのフリーロルで組み立てを行なった。

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 まず注目だったのは両WBの立ち位置だ。右のオーリエは比較的に高い位置を保つが、左サイドのセセニョンは低い位置でボールを受けるような位置取りをしていた。
 この狙いの意図を読み解こうとしたが、正直よく分からなかった。ここからは筆者の考察になるが、右から攻めるならサイドチェンジで逆に振ってオーリエのスピードとフィジカルを活かした攻撃を目指す動きをしたかったのだと思う。逆に左サイドなら、細かく繋いで、ルーカスを仕掛けさせるような局面を周りが用意してあげるといったところだろうか。左右どちらでも、それぞれの武器を活かした形を用いろうとしていたように思える。
 だが、忘れてはならないのは、この試合は常に対面で対峙する選手がいるということだ。

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 トッテナムが左右のバランスを変えて攻めようとしても、ライプツィヒの対面する選手ったいは必死に食い付いて行くオールコートマンツーマンで守っていた。基本的にはショートパスを使って足元に繋いで行くことが多いトッテナムの形を理解しながら、掴んだ選手に前を向かせないことを徹底。特にスリーセンタの中央に位置するウパメカノは、序盤から自由に動くアリに対してはしっかりと着いて行き一切仕事をさせていなかった。

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 そして、ライプツィヒの前線3枚は激しく奪いに行くのでは無く中央へのパスコースの寸断。仮に通ったとしても、ライマーとザービッツァが人への強さを見せて潰しにかかっていた。ロ・チェルソは持ち前の技術でザービッツァを翻弄させるシーンはあったものの、ウィンクスに関してはライマーに完敗。中盤を経由できずにリズムが出来ないとなると、サイドを経由して攻めるのがセオリーなのだが、そうなると上記に書いたような局面に陥ってしまう。トッテナムが攻撃のリズムを生み出せなかった理由がここにあるのはではないだろうか。


同条件なら人を増やせば良い

 上記の解説を読んで「ミラーならば、ライプツィヒもトッテナムと同じ条件じゃないのか?」と疑問に思った人がいるはずだ。実際、ライプツィヒが攻撃になった際、トッテナムはライプツィヒと同じくオールコートマンツーマンに加えハイプレスを採用していた。だが、攻撃を組み立てる際で決定的な違いがあるとするならば、GKを用いたビルドアップの部分だろう。

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 トッテナムのフィールドプレーヤーに対しライプツィヒはGKを用いたことによって、10vs11の構図が生まれてしまった。本来なら、GKに下げた際、そのままボールを持たせてパスコースを探すのが良いのかもしれないが、トッテナムはそんな流暢なことをしている場合では無かった。1stレグをホームで0-1というスコアで敗れているため、いち早く同点に追いつくことが必要だったのだ。そう考えれば、この試合をハイプレスでスタートしたことが容易に想像できる。高い位置で奪えればチャンスになるし、ライプツィヒの繋ぎには粗が有る。しかしGKにプレスをかけることによって、空く選手が生まれてしまう。そう考えると、この試合のトッテナムはかなり難しい状況に立たされていたと言えるだろう。
 ちなみに先制点のシーンはGKであるグラーチのロングボールから始まっていた。GKとスリーバックで菱形を形勢し、展開力のあるライマーが落ちて受けに来る。それを止めるべくロ・チェルソが着いて行くのだが、着いて行くことにより生まれてしまったスペースにボールを放り込まれたのだ。結果、セカンドボールを回収され、左サイドを突破されたところから失点に繋がり、開始早々に手痛い1点を喰らった。

 また、2失点目のGKのグラーチから始まっている。

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(GIF画像:4秒で変化)

 ①バックパスからGKを経由してやり直す。グラーチは大外で浮いたムキエレを使う。
 ②ムキエレがドリブルで運ぶ際、ヴェルナーがサイドに流れて来る。これにより、セセニョンがピン留めされムキエレに寄せることが出来なかった。そのため、ウィンクスがムキエレに対し寄せに行くのだが、今度はライマーが中央で浮く。
 ③ライマーはボールを受けてから蹴るまで時間があったため、逆サイドのアンヘリーノに展開。そこでオーリエがまさかのクリアミス。フリーになったアンヘリーノのクロスにザービッツァが二アサイドで合わされ2失点目を許した。

 といった風に、「同数なら攻撃の人数を増やそう」という戦い方にスパーズは終始苦しめられてしまった。先にネタバレをしてしまうが、3失点もGKグラーチから始まっておりピッチを縦に目一杯使われた後に押し込まれてしまった。
 3失点ともGK絡みとなったこの結果を見てみると、攻撃の差はそこにあったように感じてしまう。もちろんロリスもボールに触っていたが、どちらが効果的であったかと言えば明白だろう。
 さぁアウェイの地でもしてやられたりのトッテナムは2点ビハインドの状態で前半を折り返す。


二兎を追う者は一兎をも得ず

 後半に入り、何か秘策を用意するかと思ったが特に何かあったわけでは無かった。食い付いてくる相手をどうにかして剥がそうとはしていたが、全て空振りに終わった印象を受けた。もちろん、ハイプレスからカオスな局面を作っていたが、チャンスらしいチャンスは生まれなかった。
 また、セセニョンが高い位置でボールを受ける回数が増えたこともあったが、後は変化は感じられず時間だけが過ぎていく。後は、フリーロールをしているアリにボールを預け「さぁ攻撃だ」となってもフォローが少なく潰されてしまう。まさに孤軍奮闘といった感じである。
 そして後半42分に入ったばかりのフォルスベルグにファーストタッチでネットを揺らされ万事休す。昨シーズンのファイナリストはラウンド16で姿を消した。


総評

 前半に2点リードをされたところまでは、昨シーズンのアヤックス戦と同じ展開だった。しかし、あのような奇跡が起きる気配は一切無かった。筆者が、結果を知った上でディレイ視聴をしていたこともあるだろうが、それでも他の試合ならもう少し「おっ!」となるシーンがある。そういう期待の感情すら湧かず、ただ為す術無く散るチームを前にすると胸が苦しかった。
 ただ、仮にこの試合を勝ち進んだとしても、今のスカッドを考えればプレミアとの両立はかなり難しい。ベスト8に進んでも、そこで力尽きるのがオチだろう。もし、来シーズンもこの舞台に戻ってきたいならば、CLはここで諦らめるのが無難な考えのように感じる。そのぐらい今の選手層は危機的な状況だ。
 ケイン、ソニー、ベルフワインが居れば、まだライプツィヒとは対等に渡り合えていたかもしれない。しかし純粋なゴールゲッターがピッチ上にいないのはやはり致命的である。
 CL圏内と念願のタイトル。二兎を追う者は一兎をも得ずと言うように、このままではどちらも掴めずに2019ー20シーズンを終えてしまう。そうなる前に、CLを敗退した選択肢は間違いでは無かったと信じたい。

ミラーを組む理由はどこに?

 筆者的には、ミラーを組んで良い思いをした試合がほとんど無い。直近の試合で言えば、アウェイのチェルシー戦や、ホームでのウルヴス戦がまさにそうであった。今回もスリーバック擁するライプツィヒに同じ形を選んで敗戦してしまっている。ミラーにする理由はどこにあるのだろうか。
 そもそも、筆者はモウリーニョ体制になった際、対スリーバック相手に手を焼く可能性が高いと記事で語っている。

 対スリーバック最初がこの試合だった。ちなみに、この後のチェルシー戦では、ランパードがこれまで4バックを捨てスリーバックを採用。結果トッテナムは0-2で敗れている。


 モウリーニョ体制になり、各レーンに1人立つという点は徹底されていたが、全てのレーンを相手に埋められると何も出来なくなってしまうところは、この頃と何も変わっていない。
 それでも対スリーバックにミラーを組む理由としては、「4バックで守るよりかは5バックで守りたい」という意図があるのだろうが、ただでさえ点が取れない状態なのに、このままでは後ろが重たくなる一方だ。
 もちろんモウリーニョが全て悪い訳では無い。本人も何処かで、攻撃の引き出しを作り出したいと思っているに違いないし、チームを自分の思う方に誘導したいはずだ。だが、「シーズンの途中に就任」、「前線の怪我人が続出」というダブルパンチが相まって、マネジメントすら難しいのが現実。流石のスペシャルワンもこの状況に頭を悩ましているだろう。昨シーズンと比べると失っているものが多すぎるのだ。
 そんな、ナイモノバカリであるクラブはどこを目指すのか。変革期となるこれからの方針を見守っていきたいところである。

COYS!!!

RBライプツィヒ3-0トッテナム

得点者
前半10分 7ザービッツァ
前半21分 7ザービッツァ
後半42分 10フォルスベルグ

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