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悪夢

うなされて
起きる
真っ暗な部屋で
震える手で
財布をあさり
スマホの薄明かりをたよりに
免許証を確認する

ホッとする。









十数年前
私は車の運転免許が
失効になってしまった。




原因は
免許の更新を
忘れてしまったからだ。




なぜ、忘れたのか?




引っ越しのバタバタにかまけて
住所変更を
しなかったからだ。




つまり、
更新のハガキが届かなかったのだ。




失効してから
半年以内に
気づくことができれば、

簡単な手続きで復活できた。




失効から1年以内であれば
仮免許は残せたらしい。




私の場合は
1年以上経過していたため
完全に失うこととなった。




気づいたきっかけは?




金利が下がったので
家のローンを
安い金利で借り換えようと
身分証として見せたら、

「これ、切れてますよ」
と言われ気がついた。




色々調べたうえで、
どうにもならないことを知り
フリーズした。




ただただ
ニヤケ顔で固まっていた。




では失効に気が付かなかった期間、
どうしていたのか?




決して
決して
決して、

運転などしておりません。




それが不幸中の幸いでした。




私はこういうときの運が強いのです。




普通のときの運が
強くなりたいです…。




無免許になっていいことと言えば、
休日は朝からビールが飲めること。




家族でお出かけのときも
妻が運転する車内でビールを煽る。




そんな特典がなければやってられない。




ショックすぎて、

「免許ないから朝から飲めるんだぜ〜」
ということ、

つまり
良いことを探すことで
紛らわそうという、

子供じみた発想…。




もちろん
そんな空気の読めないことは
できません。




私の免許が失効になったせいで、

お出かけの際の運転は
すべて妻。




その横で飲酒など、
できるわけがないのです。




後部座席で
子どもたちと遊んでいる感を
演出して、

ただただ
小さくなっているしかありませんでした。




当時3歳だった長女は
「パパの免許がバクハツ(〝剥奪〟と言いたかったのか、どこで覚えたんだそんな言葉)なんだよ〜」
と、

わけのわからない言葉で
親戚中に
言いふらしまくった。




そのつど
説明をした。




恥ずかしい。




さて
あらためて免許を
取得しなければならない。




どうするか?




といっても選択肢はない。




教習所に通うには、
時間とお金が
かかりすぎてしまう。




ということで
運転免許試験場にて
直接受験することに。




それが最短とはいえ
流れは、

  1. 仮免許筆記試験に合格する

  2. 仮免許実技試験に合格する

  3. 仮免許取得

  4. 路上練習(経験者に同乗してもらい数日間かけて数時間にわたり練習する)

  5. 免許筆記試験に合格する

  6. 最終実技試験に合格する

  7. 教習所にて取得時講習(応急救護や高速道路運転を学ぶ)を受ける

  8. 申請し免許証を交付される

である。




次に
自動二輪の免許をとる…、

そう…
免許を失うとは…
すべての免許を
失うということなのだ…。




気が遠くなってくる。




ちなみに
教習所の場合は
実技試験を終えてから
筆記試験だが、

直接受験の場合は
筆記試験が先に行われ
実技試験である。




まぁ、
そんなことはどっちでも良いですね。




仮免許を取得してからは
バカでっかい、

仮免許練習中
のプレートを貼り付け、

私が運転した。




もちろん、
助手席には
経験者に同乗
してもらわなければいけないため、
妻に乗っていただく。




それでも運転できることが
嬉しかったのを
覚えている。




取得後
若葉マークは

子どもなどの練習に
付き合っているんだなぁ
ではなく、

私が若葉マークなのだと
おもってもらえただろうか…。




私の仕事においては
運転免許をもっていることは
必須なのである。




クビにならなかったことに
感謝の気持ちを抱きつつ、

「じゃあ、いってきま〜す」と出発する同僚たちを見送る、
かなり気まずい日々を
過ごしていた。




「で?今どんな状況?いつ免許とれんの?」
の質問に対して、

当時流行っていた
狩野英孝さんの
ネタをつかわせていただいて、

「ラーメン・つけめん・
ぼくカリメン(ほんとはイケメンという)お〜け〜」

と言ってしまった。




し~んとなり
クールに仕事をこなす
私のキャラは崩壊した。




イタすぎる二十代後半の男となった。




これも私にとっては、大切な想い出です。









冒頭にもどります。

このような経験から10年以上経った今でも夜中にガバっと起きて、免許の期限が切れていないかを確認してしまうのです。

そういえば、取得時講習のとき、私と同じように更新忘れで失効になってしまったという女性と一緒でした。きっと悪夢にうなされているのではないでしょうか。

みなさま、余計なお世話ですが、免許の更新をお忘れにならないよう、住所変更はしっかりおこなうことをオススメさせていただきたいとおもいます。

もし私のエッセーをサポートくださるなら近所の自販機に売られている110円の大容量コーラを子どもたちに買ってあげたいとおもいます