【童話読み聞かせ】小さな池のカエル
ちょっとおちゃめな魔法のようなことば「ペケロンパ」。童話の読み聞かせを「聞かせよう」。そして、みんなで読み聞かせを「してみよう」。
このペケロンパ・プロジェクトは読み聞かせによって子どもとの暮らしを応援しています。詳細はこちらの記事でご紹介していますので、良かったらご覧ください。
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▼まずは動画で聞いてみよう!
▼読み聞かせをしてみよう!
このお話の目当て
幼いときのともだちは、いつまでたっても、仲良く助けあえるようになってほしい。そんな願いを込めて童話にしました。
読み聞かせのポイント
オタマジャクシがかえるになってからの、メダカとの対話には、かえるの威張っている態度を誇張してください。それから、からすにおそわれようとしたときの、かえるの恐怖、それをかばっている亀が、からすに語りかけるときの、とぼけた様子など、工夫して語っていただきたいと思います。
おはなし:出村孝雄 / え:やすだゆみ / こえ:かじたにみゆき
/ 作:出村孝雄 / 制作:Bit Beans
▼おはなし
小さな、小さな池が、ありました。その池には、小さなメダカと、小さなオタマジャクシが、仲よく住んでいました。
ある日のことです。この小さなメダカが、オタマジャクシを見て、びっくりしました。
「オタマジャクシさん。まあ、あなたは……」
「メダカさん。なにをそんなに、おどろいているの」
「オタマジャクシさん。あなたのからだに、足がはえてきましたね。もうすぐ、カエルになるのね……。カエルになっても、仲よしで、いましょうね」
「メダカさん。だいじょうぶ。メダカさんとは、いつまでも、仲よしだよ」
メダカとオタマジャクシは、それは、それは、仲のよい友だちでした。
やがて、オタマジャクシのしっぽがとれて、「ゲロ、ゲロ、ゲロ」。とうとうカエルになりました。小さな、小さな、それは小さなカエルになりました。
ある日のことです。この小さなカエルは、池の中の、蓮の葉っぱの上に乗って、いばり出しました。
「ゲロ、ゲロ、ゲロ。こらっ、メダカ」
メダカは、びっくりしました。
「おや、オタマジャクシさん。いや、いや。オタマ、オタマ、オタマジャクシではない、カエルさん」
「ゲロ、ゲロ、ゲロ。こらっ、メダカ」
「カエルさん。オタマジャクシのときは、言葉もやさしかったのに、カエルさんになったら、乱暴な言葉になりましたね」
「ゲロ、ゲロ、ゲロ。こらっ、メダカ。このカエルは、えらいのだぞ。池の中を、泳ぐこともできるし、おかの上を歩くこともできるんだ」
「でもカエルさん。わたしと、いつまでも、お友だちでいましょうね」
「ゲロ、ゲロ、ゲロ。メダカと、池の中だけで遊ぶのは、いやだよう」
小さなカエルは、大きな蓮の葉っぱの上を、歩いたり、飛んだりして、みせました。
その時です。池のそばの松の木に、「カーォ、カーォ、カーォ」カラスが一羽、飛んできて、枝にとまりました。
カラスは、蓮の葉っぱの上にいるカエルを見つけました。
「おや、蓮の葉に、カエルが乗っている。よし、つかまえてやろう」
カラスはカエルに、飛びかかって来ました。
カエルは、びっくりして、池の中へ、飛びこんでしまいました。
カエルは、池の中の、蓮の葉っぱのかげから、頭だけ出しました。
「ゲロ、ゲロ、ゲロ。ああ、おどろいた。ああ、あれはカラスだな……。やぁい、カァラス、カラス。カラスなんかにゃ、つかまらないよ。くやしかったら、ここまでおいで。ゲロ、ゲロ、ゲロ」
「よし、あのカエルのやつ。いつかは、つかまえてやるぞ」
カラスは、松の木の枝にもどると、この小さなカエルを、どうしてつかまえようかと、考えました。そのうち、カラスは、よいことを思いつきました。
「カーォ、カーォ、カーォ。カエルくん。カエルくん。きみは、ほんとにえらいねえ。水の中を泳ぐことができるし、おかの上で、飛んだり歩いたり、できるものね。そんなにえらいカエルくんが、こんな小さな池にいては、気のどくだよ。もっと大きな池へ、いきなさい」
「ゲロ、ゲロ、ゲロ。なにっ、これより大きな池が、あるのかい」
「あるとも、あるとも。ずっとむこうにねえ。この池より、もっと、もっと大きな池があってねえ。そこには亀もいるんだよ」
「ゲロ、ゲロ、ゲロ。亀、亀がいるってえ。カラス。亀って、なんだい」
「カエルくん。カエルくん。亀はねえ、大きなこうらというものを、せなかにしょってるけれど、それでも平気で、水の中を泳ぐことができるし、おかの上だって、歩くことが、できるんだぜ」
「ゲロ、ゲロ、ゲロ。へえ、そんな亀、一度、見たいなあ」
「カエルくん、見てきたらいいよ。そら、ずっとむこうの、大きな池だよ。では、さよなら。カーォ」
カラスは、どこかへ、飛んでいってしまいました。
ずっとむこうのほうに、大きな池があることや、亀がいることを聞いて、びっくりした小さなカエルは、そのことをメダカに話しました。
「ゲロ、ゲロ、ゲロ。こらっ、メダカ。えらくなったこのカエルが、こんな小さな池で、こんな小さなメダカと、いっしょにいるのは、つまらないからな。亀のいる大きな池へ、いくことにするよ」
メダカは、目をまんまるくして、いいました。
「と、とんでもない。カエルさん、とちゅうで、カラスにつかまったら、たいへんですよ」
「ゲロ、ゲロ、ゲロ。だいじょうぶだよ。カラスは、どこかへ飛んでいって、しまったからな」
「でも、カエルさん。その大きな池には、恐ろしいものが、いるかも知れませんよ」
「ゲロ、ゲロ、ゲロ。だいじょうぶ。ぼくは、もうりっぱなカエルになったんだ。おまえのような、小さなメダカのいる、こんな小さな池は、つまらなくなったんだ。さあ、大きな池へ、でかけることにしよう」
小さなカエルは、ノソリ、ノソリ、おかの上に上がると、ピョン、ピョン、ピョン、はねだしました。
小さなカエルは、とうとう、大きな池のそばへ来ました。
「ゲロ、ゲロ、ゲロ。わあ、大きな池だ。よし、これから、この池に、飛びこんでやろう……。そうら、そらっ……」
ジャボーン、小さなカエルは、池の中へ飛びこみました。そして、池の中を泳ぎながら、亀をさがしました。
「亀、亀、どこにいるんだ。早く出てこい。ゲロ、ゲロ、ゲロ」
そこへ、大きなさかなが、泳いできました。
「ゲロ、ゲロ、ゲロ。うわあ、大きなさかなだ。こらっ。おまえは、なんというさかなだ」
「なあんだ、小さなカエルが、いばってらあ……。ぼくは、鯉だ、鯉だ、力のつよい鯉だぞ」
「ゲロ、ゲロ、ゲロ。へえ、鯉って大きいんだなあ……。でも、鯉、鯉は、いくら大きくても、おかの上を歩くことが、できないだろう。ぼくは水の中も泳ぐことができるし、おかの上だって、飛んだり歩いたりすることが、できるんだぞ……。どうだ。おどろいたか」
「おや、小さなカエルのくせに、いばってらあ。では、こうしてやる」
鯉は、カエルのおなかを、口で、コツン、コツン、と、つつきました。
「わあっ、痛い」
小さなカエルは、びっくりして、そばの蓮の葉っぱに、飛び上がりました。
「おお、痛い、痛い……。大きな池には、大きなさかながいる。こんな池にいたら、どんなに恐ろしいめに、あうかわからない。さあ、もとの小さな池に、帰ることにしよう。でも、困った。鯉につつかれたおなかが痛くて、むこうの岸まで、飛ぶことが、できないよう……」
小さなカエルは、水の中に飛びこめば、恐ろしい鯉がいるし、むこうの岸へは、おなかが痛くて、飛ぶことができません。とうとう蓮の葉っぱの上で、泣きだしてしまいました。
そのときです。池の中から、声が聞こえました。
「カエルくん、カエルくん……」
「あっ、だれか、ぼくを呼んでいる。だれだ」
「カエルくん。ぼくは亀だよ、亀ですよ」
池の中から、ポッカリ浮かんだのは、大きな亀でした。
「ゲロ、ゲロ、ゲロ。わあっ、これが亀かい。大きな亀だあ……。せなかに、しょっているのが、こうらだな……。亀さん。ぼくねえ、亀さんを見たくて、むこうの小さな池から、来たんだよ。だけど、鯉におなかを、つつかれて、痛くて、痛くて、歩くことも、飛ぶことも、できないんだよ」
「カエルくん。それはかわいそうに。では、ぼくのせなかーーこのこうらの上に、乗ったらいいよ」
小さなカエルは、亀のこうらの上に、乗せてもらいました。
小さなカエルを、せなかに乗せた亀は、池を泳いで、むこうの岸に渡りました。
それから、ヨッチラ、ヨッチラ、小さな池の方へ向かって、歩いていきました。
ちょうどそのときです。むこうの空から、いつかのカラスが、飛んで来ました。これを見て、小さなカエルは、びっくりしました。
「ゲロ、ゲロ、ゲロ。亀さん、亀さん。むこうの空から、カラスが、飛んで来ましたよ」
「それはたいへんだ。見つかったら、カラスに、つかまってしまうよ」
「ゲロ、ゲロ、ゲロ。ああ、ぼく、どうしよう……」
小さなカエルは、こわくなって、ガタ、ガタ、ふるえてきました。
亀は、四本の足をこうらの外へ、ぐっとのばして、立ちました。
「さあ、カエルくん。ぼくのからだの下に、かくれなさい。早く、早く」
小さなカエルは、亀の下にかくれました。そこへ、カラスが飛んで来ました。
「カーォ、カーォ。亀くん。亀くん。きみのところへ、小さなカエルが、いかなかったかねえ」
「小さなカエルですって。知りませんねえ」
「カーォ、カーォ。亀くん、亀くん。今ね、むこうの小さな池に、いってみたけれど、小さなカエルが、いなくなったのだよ。だから、きっと、亀くんのところへ、来たと思うんだけどねえ。小さなカエルは、来なかったのかねえ」
「カラスさん。そんな小さなカエルは、知りませんねえ。ぼくのところへは、来ませんでしたよ」
「カーォ、カーォ。どうしたんだろうなあ。あの小さなカエル、あまりいばっていたから、つかまえて、つれていこうと、思ったんだけどなあ。どこへいったんだろう……。じゃあ、亀くん。さようなら」
カラスは、どこかへ、飛んでいってしまいました。
小さなカエルは、亀のせなかに乗せてもらって、ようやく小さな池に、帰ることができました。
小さなメダカは、小さなカエルを、よろこんで、むかえてやりました。
小さなカエルは、小さな池で、小さなメダカと、また楽しく、遊ぶようになりました。
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