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リハビリ散歩

明日からの仕事への準備運動として、散歩に出かけた。

実は、妻とふたりそろってコロナにかかってしまい、火曜日から二人で家に閉じこもっていた。買い物に行くのも憚られ、今まで使うのを躊躇してきたUberで回転寿司を取り寄せてみたり、オイシックスのお試しセットを使ったりしながら、この1週間を過ごしてきた。

誰とも会うことなく、二人っきりでこんな長い時間を過ごしたのは、30年前に、新婚旅行で南の島のリゾートホテルに滞在した時以来ではないか。

この5日間はずっと家に閉じこもりっぱなしだったので、すっかり体がなまってしまった。熱もおさまって体調も戻っているはずなのに、体を動かすと息があがる。頭がぼっとしている。地面から5センチほど浮遊しているような、ふわふわした感覚が抜けない。

体を動かしてスッキリさせようと散歩に出かけた。浅野川の堤防にでて、下流に向かって歩いた。浅野川の下流辺りは野鳥の楽園。カルガモや白鷺、鵜が集団で佇んでいる。川の流れが穏やかで、人もあまり歩いていないので安心して暮らせるのだろう。岸辺の砂の上では20羽ほど鴨が体をボールのように丸めて佇んでいる。日光浴でもしているんだろうか。橋の欄干に鵜が2羽とまって、交互にうなずいている。なにか相談しているようだ。

もう10月も終わりだというのに、長袖のTシャツ一枚でも汗ばむくらいの陽気だ。私が歩いているの対岸の堤防の上を、金沢マラソンのランナーが疾走する。

北寺橋まで歩いてから、引き返すことにした。帰りは問屋団地を抜けて、国道8号を越えて諸江あたりを歩く。この辺りは金沢マラソンのコースに近いので交通規制がかかっているためか、いつもより車がすくない。

11時を過ぎていたので昼飯がてら喫茶店に入った。いつもなら満席のお店なのに今日はやはりお客さんが少ない。

カツサンドとアイスコーヒーを注文して、メルヴィルの「書記バートルビー」を読む。法律事務所が雇った書記バートルビーは、上司から何か頼まれると、「それはしない方がよいと思います。」と穏やかにいって断り続ける。最初は書記として法律文書の書写の仕事はやっていたが、そのうちに唯一の書写の仕事も「それは私がしない方がよいと思います。」と言っていっさいの仕事を拒否するようになる。雇い主はそんな社員はすぐに首にすればいいようなものを、バートルビーが、柔らかい物腰で断固として断ると何故か解雇する気がうせてしまう。そんな不思議な話だ。何かの本で紹介されていたので、読んでみなくてはと思い、キンドルで買ったのだが、何の本で知ったのか、どういう理由で紹介されていたのかも忘れてしまった。

カツサンドは量が多くて、病み上がりの年寄りにはきつかったが全部食べた。1時間ほど滞在して帰宅した。相変わらず頭はぼーっとしているが、体はずっきりしたような気がする。


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