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雪の晴れ間に

土曜のお昼ご飯に、きつねうどんを作って妻と食べていると外が明るくなってきた。青空が広がって太陽が顔を出している。昨日の晩に積もった10センチほどの雪の上に太陽の光が反射して、世界が明るい。今のうちに外に出て日光を浴びておかないともったいない。早々に昼ごはんを切り上げ散歩に出かける。

2時間ほど歩くつもりで、まずは東山方面へ。東山の交差点で、テレビのロケをやっていた。お笑いのコンビがおしゃべりしている姿を2台のテレビカメラが撮影している。私は、芸人さんの背後からカメラに向かって歩くことになってしまう。歩く方向を変えてやり過ごそうかとも思ったが、用事があって普通に道を歩いている自分が引き返すのもどうかと思いそのまま歩く。もしかしたら映り込んでいるかもしれない。

東山は雪にもかかわらず観光客で賑わっていた。着物姿で散策する人多数。雪があるので足元がブーツなのは仕方ないか。

兼六園下から広坂に。21世紀美術館も賑わっている。美術館周りの広場で雪遊びする家族連れが多数。真っ白な雪原に、真っ白な美術館の建物、青い空。普段がどんよりとした曇天ばかりなので、青空が出ると雪原からの日光の反射もあって明るい。気分が高揚する。

幸町から菊川あたりの住宅街を抜けて下菊橋、下菊橋を渡って、長良坂を寺町台地へ登る。見上げると、坂を登り切った先に青空が見える。金沢は小立野と寺町のふたつの高台を、浅野川と犀川が刻んだ地形になっているので、坂がたくさんある。徒歩でしか登れない坂もたくさんある。そんな坂は、江戸時代から変わらない道で趣深い。坂の上から街を見下ろしたり、坂の下から見上げたりどの坂も景色がいい。

下菊橋から見た犀川
下菊橋から寺町を望む
長良坂

寺町通を歩く。和菓子の戸水屋さんの前を通りかかる。ここの六方焼きというお菓子が好きで、年に何回か買いに来る。六方焼きというのは、直方体に形作った餡子の表面に、小麦粉の皮をつけて焼いたお菓子だ。水分の少なめの、こっくりとした餡が香ばしく焼けた皮と合う。正月のお餅が家にまだたくさんあるので今回は買わずに帰ろうと、お店の前を通り過ぎて20メートル歩いたが、どうしても六方焼きが食べたくなって引き返した。

店先には近所の人と思われる女性が一人待っている。お店の人はいない。ここは、店頭のケースにはサンプル用にお菓子を一つだけ置いてあって、注文の都度、奥から持ってくるのだ。おはぎは注文を受けてから奥で作り出来立てを包んでくれる。どのお菓子も基本は150円。今日は六方焼きと桜餅を二つずつ包んでもらった。

戸水屋さん


六方焼き


おやつにお茶でも飲みながら食べるつもりで、戸水屋さんからは寄り道しないで真っ直ぐに家に帰る。家に到着すると、出かけていた妻も車でちょうど帰ってきた。息子へ洋服やら食料を宅急便で送ってきたとのこと。

「戸水屋のお菓子買ってきたよ。」と告げると、妻も「あら偶然、私もお菓子買ってきた。」と言う。帰りにパン屋さんに立ち寄って、朝食用のクロワッサンと、ベニエというクリームの入ったドーナツを買ってきたのだ。

さっそく焙じ茶を淹れて、二人の成果品を並べる。まずは桜餅。餡を桜色の道明寺で包んで、塩漬けの桜の葉で巻いてあるタイプ。道明寺の部分が分厚くて食べ応えあり。桜の香りが鮮烈でいい。次は妻が買ってきたベニエを食べる。カスタードクリームがたっぷり。カロリー高そうなので、晩御飯は控えめにしようと、食べ過ぎの言い逃れを妻が提案する。合意。

お茶を飲み終わった頃から、再び空が雲で覆われて雪が降り始めた。陽の光を浴びがら2時間歩いて心地よい疲労感が襲ってきた。いい散歩だった。

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