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海に潜り、ついでに、社会性を捨てる

かいです。
石垣島第2弾。今回も童貞をキッチリ捨てて参ります。(前回の続きです)

原付大コケ童貞、卒業。

2023年11月5日。
一通の道を逆走してしまったことに気づき、慌てて原付を降りてUターンする。その時誤ってアクセルを回し、原付が勢いよく加速する。私の握力は15。ハンドルは私の手から即離れて目の前の花壇に激突、ごろんと転がり、私は投げ出されて膝からこけて流血。軽に乗った通りすがりのおばちゃんが車から降りて原付を起こしてくれる。「すいません」と向き直りたいのだが、昨日首をやった私は不細工に起き上がり、わざわざ正対したためラグが起こり、「家に帰ったほうがいいよ」と心配された。

幸い原付はなんともなかったのだが、歩道と車道を分ける花壇の一部が抉れてしまったので謝罪しながら均した。長ズボンなので膝はよくわかんないや、いいや、息を整えてまた走り出す。おばちゃん、ごめんけどまだ私は家に帰れません。私絶対にドンキに行きたいの。

石垣ドンキ着。入り口にドンペンちゃんの顔面ベンチが鎮座していたので、一旦座る。恐る恐るズボンをめくると怪我をしていたのは膝ではなく脛だった。
石垣ドンキの内部は広大だった。ドンキといえば道が狭くすれ違うのに一苦労、所狭しと雑多に物が並んでいるのが常だったが、石垣ドンキの間取りはんか、地元のヨドバシみたいだ。
私が買いに来たのは他でもない、ペンギン食堂の「石垣島ラー油」だ。旅行好きの事務のおばちゃんからお薦めされていたのだ。4つ買う。これは本当に美味しかったので買うべしです。お豆腐に乗せるだけでおつまみが出来あがる。本島で見たことあるちんすこうなどのお土産もたくさん見た。普通の食品もたくさん。そして、肉が安い。私のような観光客も、島の人も大歓迎だ。さすが激安の殿堂ドンキ。石垣の台所だ。「警備員が巡回しています」という万引き防止のアナウンスがひっきりなしに流れていて、この点、新宿も石垣も変わらなかった。

水牛ドンペンに座った

帰りは石垣滞在最初で最後のスコールに見舞われた。原付をレンタルした店でカッパを借りていたので、活用できて少し嬉しい。上下のカッパを身につけて颯爽と宿に戻る。私より2時間遅く起きる予定のようたさんが、そろそろ起きる頃だ。

フーチバー童貞、卒業。

宿で集合し、ようたさんが前、私が後ろのフォーメーションで2台の原付が走り出す。最初に向かうのはヤギ汁が美味しいと噂の「一休食堂」。ようたさんに置いていかれては大変なので、一生懸命にアクセルをふかす。雨は止んでいた。

ハーレーダビッドソン

20分ほどで一休食堂に到着する。昨日の夜、今日の昼、二食連続ヤギ汁だ。昨晩とは趣が異なるヤギ汁と対面する。
よもぎの葉がたくさん入っていて、にんにくは別添え。島でよもぎは「フーチバー」と呼ぶらしい。ようたさんはフーチバーが食べられないので、全部私の器に移管させる。大盛りの米がついている。
スープがフーチバーのおかげでスッキリとしてめちゃくちゃ美味しい。いくらでも乗せて欲しい、フーチバー。東北生まれは暑さと雨で全然やられてたので、胃が「有難い」と叫んでいた。有難菜。

元気モリモリ

お会計を済ませ、また原付にまたがる。今日はここから島の北に位置する船越漁港を経由して北西に位置する尖閣神社まで、原付大暴走だ。

タビビトノキ童貞、卒業。

「プレイバックpart2」を熱唱しながら国道を爆走中、途中でようたさんが道端に原付を停車させた。防風林(と言っても、南国特有のめちゃくちゃ葉がでっかくて全体的に緑のやつ)を指さして、「タビビトノキだ」という。
タビビトノキの種子はコバルトブルーでとても鮮やかなのだそうだ。南国の花木が鮮やかに色づくのは不思議である。中でもタビビトノキの種子はその美しさから、内地では高値で売買される。

あとから調べたらタビビトノキの花言葉は「何ものも恐れぬ精神」「緑いっぱいのトロピカル気分」だそうです。恐れ知らずのトロピカルスピリット、めっちゃギャルじゃん、最高。

緑いっぱいのトロピカル気分

その先も、景色の良いところでちょくちょく停まりながら尖閣神社へ向かう。
今日はようたさんお気に入りのビーチでシュノーケルをやるのだという。ようたさんは「水着はいらん、長袖とパンツでシュノーケルとフィン付けて泳ぐ」と言っていたので、その言葉を信じて私もシュノーケルらしい装備は持たずに来た。
ゴツゴツの道を下る。原付のタイヤくらいでかい石がゴロゴロある。ようたさんの軌道を見逃さないように瞬き少なめでゆっくり進む。何度も横転の予兆を感じる。半泣きだった。

シュノーケル童貞、卒業。

適当な場所で原付を止めて、山道をくぐるとこぢんまりとしたビーチが現れた。海水は透きとおり、地元の海とはまるで違った。めちゃくちゃ綺麗。浜辺には小さい蟹が歩いていて、踏まないように気をつける。そこらじゅうに珊瑚だらけで、これを踏まないのは無理。
普段から裸足で歩くことなどない私の足の裏は軟弱で、小さい貝殻で速攻を怪我する。ようたさんはついた!と大はしゃぎでシュノーケルセットをさっと装備し海に身を投げようとしていた。私はシュノーケルのやり方を聞かなきゃなるまい!と急いで追いかける。聞いても結局よくわからなかったけど、ええいままよ、海に身を投げる。
ちなみに、東京の感覚で11月はもうキッチリ寒いが石垣では30度、まだ夏で、半袖で余裕である。海も暖かいのでシュノーケルも余裕でできる。

尖閣ビーチの底力

10秒ほど水中にいただろうか。浅瀬で速攻溺れかける。勘違いしないでいただきたいのだが、私はカナヅチではない。シュノーケルの管に水が入ると息ができないし、フィンがついてるから立ち上がれない、普段の泳ぎ方、息の仕方が通用しないから溺れたのだ。私は断じて、カナヅチではない。
あわあわとシュノーケルを外して上体を起こして座ってみたら普通に顔が出るくらいの水深で笑った。鼻に水が入って痛い。ようたさんは遥か向こうにいた。

原理はわかっても何度もこのように溺れかけるので、岸壁に沿って泳いだ。いざ溺れても岩壁があれば多分足がつけるという作戦だ。この作戦によってまためちゃくちゃ足を怪我したが、溺死せずに済んだ。
「シュノーケル」で脳内検索して出てくるような魚群、きれいな珊瑚は視界に入って来ず、岩壁でフジツボ、フジツボ、フジツボを見た。途中、視界の端にでっかい木の根っこのようなものが映る。相当でかいではないか、このサイズの木の根ということは本体はどこまで大きいのだろう、なぜ海水の中で育つことができるんだろうと考えていたらめちゃくちゃ怖くなって、急ぎUターン、尻尾巻いて逃げ出した。私のようないちアジア女が立ち向かってはいけない深淵のように思えた。

浜辺に上がって蟹を追いかけていたらようたさんも上がってきた。すかさず「なんかクソでかい木の根っこみたいなのありませんでした?」と聞くと、「あれは網だよ、めちゃくちゃ魚いたでしょ〜」と教えてくれる。情けない。
まだ私はフジツボと網しか見れていなかったのか。このままじゃ帰れない、私もお魚が見たい。

お魚を求めまた海へ潜る。怯むな。小学校の頃お母さんがスイミングを習わせてくれたではないか(1年で辞めたが)、へっぴり腰で岸壁にへばりついているようでは田舎の母が泣く。
勇気を出して大海原へ向かう。もうおそらく足がつかない水深だろう。海底の色が濃くなっている。目を凝らせど、お魚はいない。
ここで、ゴーグルに海水が侵入してくる。全然見えないし目が痛い。たまらず踵を返し浜に向かう。足がつけるくらいのところまで戻り、ゴーグルを再装着し、また潜る。少しすると、またあの網に行き着いた。やはりめちゃデカくて怖い。周りを漂って目を凝らすと、確かにお魚がいるではないか、小さなお魚であった。なんと可愛らしいことか。あなや。実績解除だ、満足して浜に戻る。嬉しい。帰りしな、ボツボツのキモい珊瑚を見つけたので引っ掴んで陸に引き上げる。

シュノーケルをしていたのは正味1時間ほどであったが、ヘロヘロに疲弊していた。もう17時を回っており、日没も近い。急いで帰路に着かなきゃならない。

全裸の森童貞、卒業。

私たちがお邪魔したこのビーチは人の手が加わっていないので、トイレもなければシャワーもない。ということで、ようたさんが2Lペットボトルに水を汲んできてくれていた。原付を停めた木陰で、ようたさんがペットボトルを手渡してくれる。
「ここで服を脱いで海水をすすいでね。」
「?」
「ここで」

私は今年29になる決して小さくない女だ。公然で服を脱げば、捕まる。
でもここは石垣。誰もいない森の木陰。郷に入っては郷に従えじゃないか、誰も見やしない、大丈夫、安全。安全な全裸。

意を決して服に手をかけたその時、後ろから車が近づく音がする。
もう腹が出ていた。社会性を失う5秒前。
車は私たちの手前で止まった。中からおじさんが気まずそうに出てきて、いそいそと浜辺に降りて行った。

いやここ人が通るじゃん捕まる!!!

焦って隣を見るとようたさんは、ふう、もう大丈夫だ、といった表情でもうすでに上を脱いでいた。
手が止まる、だが、ここで遅れを取ってはいけない、ええいままよ、私も急いでまとわりついた服を脱ぎ、頭から水を引っ被る。
鳥の鳴き声や風の音にいちいちビビりながら体を擦る。誰も来ないでくれ、誰も来ないでくれ。

ようたさんの身体を見た。(ごめん)
おっぱいはない。脚に大きな刺青がある。私と背格好は似ているんだけどバランスが少し違う。動物っぽくもあり、機械っぽくもある。不思議で美しいフォルム。夕陽に照らされてキラキラ水滴が光っていた。その姿を見てようたさんが神様っぽく見えた理屈が少しわかった気がした。

ようたさんに少し遅れて着替えを終了し、帰路に着く。日が落ちた。海でしこたま腹を冷やし、フサキリゾート(高級リゾートホテル)でお手洗いを借りる。ごめんね。

日没に間に合うように帰るつもりだった
唐人の墓で星を見た

市街地に戻ってきたのは19時過ぎだった。
18番街の居酒屋に入り唐揚げを噛んでいたら、外から「ドーン」と発砲音がする。ようたさんと一緒に外に出ると、花火が上がっていた。「たーまやー」と酔っ払いが手をたたく。近くで飲んでいたらしき人が、「ここがよく見えるよ!」とベストポジションを教えてくれる。
謎のメンバーで花火を見た。石垣はまだ夏。

一体感があった

ようたさんは聴覚過敏。喧騒が苦手だ。
うるさい18番街から少し移動して、ようたさん御用達の静かなバー「うるべ」へ。お通しに落花生が出てくる。ようたさんが落花生の殻を床にポイポイ捨てるのを見て驚き床を見ると、先人が落として行ったらしい落花生の殻が無数に落ちていた。落花生の殻までインテリアにしてしまう精神、どこまでもおしゃれだ。

ようたさんの絵が見切れている


気づいたらまた調子にに乗って5つもの童貞を捨ててしまった。もう4,000文字だ。撮影の話を全然しないじゃないか、とお叱りの声が聞こえてきそうだ。ごめんね、でも安心してください、次回ようやく撮影の話です。乞うご期待。



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