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M-1グランプリ2023総評

12月24日に行われたM-1グランプリ。
毎年楽しみにしてる賞レース、今年もまたドラマがありました。
自分なりになにがおもしろかったのかを言語化しておきたいので自己満足で点数等ここに記します。
今年は準決勝を観ていたので、それを踏まえて
出番順に1組ずつ思ったことを書きます。(記してる点数は審査員の点数開示前にちゃんとつけてます!!信じてください!)

そして今回は全体のバランスを見ながら点数を少し細分化してみました。

基本80点

そこに加点
ウケ量(最大5点)
※どれくらいウケていたか

設定(最大3点)
※設定に無理がないか、ありきたりではないか

ワードセンス(最大3点)
※ワードが面白いか、大喜利力が問われる

ボケツッコミ(最大3点)
※ボケ、ツッコミで笑いを取れているか

自然さ(最大3点)
※作り込まれている感じがないか

感動(最大3点)
※基本は0、4分間をどれだけ有効に使えたか

80点をベースに加点最大20点。
100点はよほどじゃないとつけれないので、その余白として感動点として3点浮かせてます。
ここはミルクボーイや、オズワルドのような圧巻な4分が使われたなと感じたら1点つけるかなというポイントで、基本的には97ベースです。
書き殴りですが、何卒よろしくお願いします🥺


0,全体の総括

まず最初に。
今年は異様に拍手笑いが少ないと感じる年だった。
所謂会場が重いというやつ。
準決勝では爆発していたコンビも決勝ではことごとく苦戦。
これには色々と理由が考えられる。
一つずつ挙げていきたい。

①ネタ順
振り返ると今年は最悪なネタ順だったと思う。
M-1を観ている時は何も思わなかったが、振り返って整理したらこんな事実が発覚した。

1.令和ロマン(しゃべくり)
2.シシガシラ(しゃべくり)
3.さや香(しゃべくり)
4.カベポスター(しゃべくり)
5.マユリカ(コント漫才)
6.ヤーレンズ(コント漫才)
7.真空ジェシカ(コント漫才)
8.ダンビラムーチョ(歌しゃべり)
9.くじら(しゃべくり)
10.モグライダー(歌しゃべり)

なんと同じタイプの漫才がここまで続いている。
挙句、コント漫才の形を取っているコンビは今回3組いたがそれが全部固まってしまった。
そうなるとなかなか厳しい。
多少タイプは違うとはいえ、ここまで同じ系統の漫才が続くと客も見慣れてしまい、飽きがくる恐れもある。なにより構成等前のコンビとの比較が容易になってしまうため点数もどうしたって伸びにくい。
野球に例えるなら球速幅が5キロくらいのストレートが続いたあと、スライダーが続いて、その次にフォークが続く。
それだとこちらも目は慣れるし、面白みも欠ける。

②令和ロマン
レジェンドが放った言葉である
「お笑いは遠近感」
まさにその通りで、トップバッターの令和ロマン。
これは後の本人らによる話だ。

「トップバッターになったので、ツカミをしっかりして、お客さんにも話しかけて、しゃべくり漫才にして大会をいい空気にしようと思った。もし順番が違えば、前のコンビがしゃべくりならコント漫才に、コント漫才ならしゃべくりに、といろいろ考えてた」

そのしゃべくりが圧巻だった。前座のような気持ちで臨んだのだろう、題材である「恋愛漫画あるある、曲がり角でぶつかってるけど学校はどこ?」
これを相方と考える、ではなく客と皆で考える、そういう目線にしたことで客との距離を詰め、笑いやすい空気を作り、爆笑を掻っ攫った。
しかし、その詰めた客との距離が、後ろのコンビには不利に働いてしまったように思う。
相方との会話で広げる漫才は「ネタ」という色を強め、客と芸人の距離を遠く「感じさせてしまった」のではないか?
そんな可能性があるように感じる。
また、①と重複するが令和ロマンの後にしゃべくりが続いてしまったことにより、よりその色は濃くなったと思う。
コント漫才であれば、設定があるため客もそこに入り込めることができるが、しゃべくりだと巻き込むには相当技量がいる。
今回、令和ロマンに技量やネタで客に寄ることができず、またしゃべくりネタが続いてしまったことにより笑いの遠近感がかなり遠くなってしまったのではないか?
そのように考える。

③客の疲労・見方
今年はまたM-1のリニューアルをし、敗者復活戦の後に休憩を挟まずそのまま決勝戦と、ぶっ続けで漫才をやり続ける。そんな大会だった。
さすがにそこまで長時間漫才を見続けたらさすがに疲れ、笑いにくくなって客のコンディションも悪くなってしまったのではなかろうか。

1,令和ロマン

点数:94

まさかのしゃべくり漫才。
令和ロマンはコント漫才しか見たことがなかったのでとても驚いた。
ちなみに令和ロマンの準決勝ネタは「猫ノ島」というコント漫才だった。
基本的には準決勝で受かったネタをやるもんだが、それをこの芸歴で、しかも初出場でやらないという選択ができる幅広さに感服した。恐れ入った。
せりあがりのところから、掴みでしっかり客を巻き込みながら笑いをしっかり誘いに行って掴んだのが圧巻。ボケのくるまが最大限にボケとしてのキャラクターを演じ切り、会場の客の心を鷲掴みにした。

ウケ量4
設定2
ワードセンス2
ボケツッコミ2
自然さ3
感動1

文句なしにウケていたし、面白かったので4。
設定、ワードセンス、ボケツッコミの掛け合いも斬新で、
何より掴み、そして「同じ学校なのに曲がり角でぶつかる」という確かに言われてみればそうじゃん!て思わせる共感を得られるテーマ。漫才にするための不自然さ(所謂サイコなネタ)が一切なかったのでここはMAXに加点。
そしてトップであんなにウケているのは見たことがなく、史上最高のトップバッターだと感じ、感動点を、1点。
強いて言えば後半の天国に向かってやる女将さんとすしざんまいがハマらなかったかな。あそこでズバッと斬り込めるツッコミワード、展開があったらもっと上の点数がいけた。

2,シシガシラ

点数:86

準決勝で敗退したネタと同じネタであった。この後の本人談だと、「歌ネタに寄ってるから、モグライダーやダンビラムーチョと被るためにこのネタにした」とのこと。敗者復活でのあのネタはとても面白かったのでそれを待ってた客もいたからちょっと噛み合わなかったかなぁ。
このタイプのハゲネタは2018のギャロップと同じで、ハゲに対してハゲって直球で言ってしまうからボケがワンパターンで見飽きるリスクがある。もちろんツッコミの脇田さんの返し方が面白いし、良い形の漫才。
ただその前の令和ロマンがしゃべくりとしてあまりに良く、
舞台、身振り手振りを交え大きなボケをしてきたのもあり、シシガシラは落ち着いたしゃべくりっていう見え方になってしまって跳ねなかったかな。
しゃべくり漫才という同じフォーマットが続いてしまっただけに比較が単純明快になり、ウケも点数もはっきりと伸び悩んでしまった。

ウケ量2
設定0
ワードセンス2
ボケツッコミ1
自然さ1
感動0

脇田さんのワードセンスはさすがだが、令和ロマンが良かったのもあり加点するところがあまり無かった。

3,さや香

点数:96

去年の「免許返納」と似た形のフォーマットの漫才。
それをまた今年も作ってくるのは本当に流石であった。
ただ前半、なんだか客のウケが付いてきてない違和感は少しあったかな。
最初のボケ、掴みである「黙って引っ越そうかと思ってる」の部分は本来もうちょっとウケても良かった。
令和ロマンが巻き込むしゃべくりなら、さや香は2人の言い合いを魅せる漫才
そこの形の違いで客ウケが別れた感じがあった。
また、この時点で明確になったのが
今年のしゃべくりは客を巻き込まないとウケにくいという事。
タイプが少し違うしゃべくりが3組連続で続いてしまったことで今日はどういう笑いが求められてるのかというのがはっきりわかった。
ただそんな中でも後半にしっかり爆発させてたのはさすが。
M-1の4分の筋肉が鍛え上げられてる、素晴らしい漫才。

ウケ量4
設定3
ワードセンス3
ボケツッコミ3
自然さ3
感動0

漫才としては間違いなく完璧なやり取り、しゃべくりの完成形をみたが、ウケ量がついてきてなく、会場を畝るような爆発が足りてない印象で感動まではいかなかったかな。準決勝では文句なしのイチウケだったのもあり、完璧な漫才だったけど残念という印象も持ってしまった。

4,カベポスター

点数:91

ずっゼリなど、面白いワードを展開・設定と絡めていくカベポスターならではの漫才。
しかしここも令和ロマンの動きが多いしゃべくり、さや香の熱の入った言い合いのしゃべくりの後の落ち着いたトーンでのセンス系しゃべくりっていう順番の関係で、映えないように映ってしまった印象。

ウケ量3
設定2
ワードセンス2
ボケツッコミ2
自然さ2
感動0

ボケツッコミの掛け合い、展開の仕方等さすがの面白い切り口だけども爆発しきらず、突き抜ける部分もなく大人しく収まった印象。
しかしこうもしゃべくり漫才がずっと続いてしまうとウケ量、展開も比較されやすくなかなか伸び悩んでしまうよなと。苦しい出順。ここも準決勝と同じネタであった。

5,マユリカ

点数:95


コント漫才。5組目でようやくといったところ。しゃべくりを見続けた反動もあってか、ここでのコント漫才は結構跳ねた印象。展開も見やすかった。コント漫才なのに、マユリカ2人じゃないとできない絶妙な気味の悪さも良かったし、ツッコミ中谷はなんであんなに女性役が似合うんだろうか。
2人だからできるコント漫才。とても良かった。

ウケ量4
設定2
ワードセンス3
ボケツッコミ3
自然さ2
感動1

途中の「浴槽でおでん作る」などのフレーズのセンス、ボケとツッコミそれぞれの強さが非常に光ったためMAXに加点。4分の使い方、終盤に向けて上手くピークを作った部分も芸術点が高く、感動点をプラス。
準決勝とは違うネタだったが、非常によく出来たネタだった。

6,ヤーレンズ

点数:93

手数が多く、そんなに畳み掛けたらそりゃ笑ってしまうという形の漫才。こんなことを言うのも申し訳ないが、インディアンスの上位互換だなぁという印象。
畳み掛けつつもいろんな種類のボケ、押すだけじゃなくポイントポイントで引いて笑いを増長させる作りは圧巻であった。

ウケ量4
設定2
ワードセンス3
ボケツッコミ3
自然さ1
感動0

ワードセンスだったりはとても良かったが、完全にこれは自分の好みで、あそこまで綺麗に畳み掛けが続くと、自然さが足りないと感じてしまう。要は裏での稽古量を感じてしまう。
マイク1本で2人が面白い立ち話をする、それを自然にやるっていうのが俺の漫才の好みなのでその部分で加点は少なめ。
93点になった。

7,真空ジェシカ

点数:95

ずっと好きな漫才だが、なんだか審査員に刺さらない。得点が伸びないもどかしい悲しいコンビ。
このコンビは大喜利がとても強く、1ボケ1ツッコミの威力が凄まじいがそれ故に1つ1つのやり合いが孤立している印象があった。
しかし今回は映画館(B画館)で、
周りの雰囲気→作品紹介→映画上映と、ネタとしての連なりがしっかりあり、4分ネタとしての意義が見受けられとても好印象であった。

ウケ量4
設定2
ワードセンス3
ボケツッコミ3
自然さ2
感動1

毎年面白いが、その中でもしっかりブラッシュアップしてネタに磨きをかけている。
凄みを増す彼らの漫才はどこまでいけるか。

8,ダンビラムーチョ

点数:91

しゃべくりが続いて、コント漫才が続いて、そしてこの変化球漫才。
去年の彼らのスタイルを知ってる者なら、最初の歌部分こそが、絶妙な完成度やBメロやサビへの伴奏の転換が面白い「大ボケ」と理解しながら笑って観られるが、、、、。
前の組が真空ジェシカで、川北がよくわからないボケをガクが一言で斬る「大喜利漫才」をしてしまったことで、大原の歌部分が「振り」として観られてしまったのが残念。
準決勝はめちゃくちゃ面白かったんだけどな。
去年の敗者復活で認知度を上げての今回決勝だから、こういう展開も十分あり得たし、想像はできた。
ハマった時の爆発力がえぐいだけに、とにかく残念。

ウケ量3
設定2
ワードセンス2
ボケツッコミ2
自然さ2
感動0

まぁ点数でつけるとしたらどうしてもこうなってしまう。漫才コンテストである以上、歌でどよめきを起こす漫才スタイルはウケ量で圧倒しないと点数は伸びてこない。

9,くらげ

点数:86


坊主のおっさんがサンリオや、サーティワンアイスなどキラキラしたものをたくさん言うっていうネタ。
面白いは面白いけど、正直このネタを準決勝で見たときは決勝に残るとは思わなかった。展開が同じなため、先が見えてしまい跳ねるイメージが沸かない。
案の定跳ねず。

ウケ量3
設定2
ワードセンス1
ボケツッコミ0
自然さ0
感動0

まだまだ芸歴の浅い彼ら。もっともっと磨きをかけて頑張ってもらいたい。

10,モグライダー

点数:93

準決勝で観た時に衝撃を受けたネタ
2年前のM-1の形をブラッシュアップして、よりともしげがミスりやすい構造に進化させていた。
決勝間違いなし、おそらく優勝もあるだろうなとまで思ったがこういう形になるとは。
まず、2組前に礼二が歌ネタを酷評したことで笑いにくい空気が出来上がってしまった。2020年のおいでやすこがに95点つけた人間がこんなこと言うんだから、人間ってわからないものだ。
思ったのが、10組目ということもあり待ち疲れしたのかな。芝のテンポがめちゃくちゃ悪かった気がする。
本来はもっとともしげがミスをして、それを笑いにしていくハプニング系漫才。
それを見越してネタ時間もある程度ハプニングを盛り込んでの4分と計算しているものだと思う。
しかしそのハプニングが起こらなかった、起こらなかったのにネタは4分を超えていた。
途中のテンポや、同じフレーズのツッコミを2回言っていたりと、笑いが起こらない部分での時間が異様に長くなってしまった。
松本人志のコメントにあった「練習不足」は芝に対してだろう。
モグライダーの漫才は練習をしてしまうとネタが死ぬ。ともしげが完璧にできたらなにも笑いが起こらないという形の漫才のため、そこの塩梅がとても難しいところだろう。。。

ウケ量3
設定3
ワードセンス1
ボケツッコミ3
自然さ3
感動0

ボケとツッコミの強さ、自然体でやる彼らの漫才スタイル、そして今回編み出した完璧なネタのフォーマット。しかしそこに良いボケ、良いツッコミがついてこなかった。
モグライダーの真骨頂はこんなものではない、ラストイヤーとなる来年。自然体の彼らの底力を見せて欲しい。

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