いじめの指導について

いじめのサイン
いじめにはいろんなサインがある。 グループを作るために机をくっつけた時、その子だけ1 CM くらい隙間があったり、掃除の時間にその子の机だけ誰も運ばなかったり、消しゴムがちぎれていたり、物が頻繁になくなったり…
私の経験だがこんなこともあった。被害児童が授業中に手を上げて発表すると 加害児童の仲間の誰かが鉛筆を落とすのだ。1回目に落とした時、落とした子の表情や仲間の目つきなどから違和感を感じた 。
被害児童が2回目発表した時もやはり別の子が鉛筆を落とした。これはわざとやっているなと確信したので、休み時間に2人を呼んで話を聞いた。案の定「鉛筆を落としたのは偶然です 」と言う。でも、被害児童が発表した時だけ偶然2回も鉛筆が落ちる確率なんてすごく低いよと話し、こういうのもいじめになることをていねいに伝えた 。加害児童たちは最後まで故意であることは認めなかったが、 それ以降は、そのような行為はなくなった。

いじめのサインと思ったら、すぐに先生は「それがいじめである、いじめと見られてしまうよ」と宣言しなければならない。

次に、いじめかな?と思った時の声かけについて

例えば教室の後ろで3人でじゃれあっている子供がいたとする。

仲良くじゃれあっているのか、それとも2対1のいじめなのかはわからない。
しかし、わからないからといってスルーしてはいけない。だって見たんだから。すぐ3人に近づいて声をかけたい。さて、どう声をかけるか。

じゃれあいをやめさせるために「チャイムが鳴ったから席に座りなさい」とか「密になってるよ。離れて。」とかいじめには触れずに違う理由で声をかけるのは、スルーするのと変わらない良くない声かけである。
「私は、今の行為をいじめだと認知しませんでした」という意味になるからだ。加害者から見れば「先生から見てもこれくらいは遊びに見えたんだ」だから大丈夫だと誤学習する。被害児童は「先生は見たのに、注意してくれなかった」と思うだろう。

だから、こう言う。「そのじゃれあいは、いじめじゃないのか。先生にはそう見えるよ」
すると「遊びです」というだろう。 経験から言えば、被害児童の方が自ら「遊びです」と言うこともある。それは想定内。
だから返す。「わかりました。遊びなんですね。でも、先生から見ればそれはいじめに見えるんだ。これからはその遊びはしないように」と言う。

先生が、明確にその行為を否定する。いじめになるよと警告して、もうしないことを約束させる。

このように、男子に多いじゃれあいは注意して見ておく必要がある。 特にやられている子が無理に楽しそうに振る舞っていたり、じゃれあいだけ参加させられていたり、少し注意して見れば違和感に気づくはず。
 
最後に、いじめが起こった時の聞き取りのしかたについて書く。

いじめを解決するには、加害児童にいじめを認めさせなければならない。

まず、被害児童の話を細かく聞き取る。これは時間をかけてやりたい。 すでに不登校になっている時は、家に行って聞き取る。登校していて校内で聞き取りをするなら、 加害児童にバレないようにする。

被害児童が素直にいじめられていることを認めない時もある。プライドもあるし、迷惑をかけたくないという思いもある。そこは、秘密は守ることを固く約束し、それを本気で守りきらねばならない。また反対に加害者憎しで話を盛ることもあるが、被害児童は、ほぼ事実を話すと思ってよい。全くないことを「やられた」とでっち上げることはない。

聞き取りは時系列にそって、5w1hで具体的に メモしながら聞いていく 。

被害児童にとっては、つらい経験を想起して言語化するわけだから、ひたすら励まし共感する姿勢が大事である。

間違っても、「なぜ、その時に先生に言わなかったんだ?」とか「そんなふうにヘラヘラしてるから、いやだということが伝わらないんだ」とか余計なお説教はいらない。そんなことができるならやっている。
「それはさすがに怖くて言い返せないよね」とその時の被害児童の行動を肯定して受け止め共感してほしい。聞き取りで大事なのは先生が事実を知ることだが、それ以上に大事なのは、「悔しかった気持ちを先生にわかってもらえた」という少しの安心感を持ってもらうためなのだ。

後で、加害児童にこのメモをもとに自分のしたことを認めさせていく。そのために、このメモは曖昧ではいけない。例えば…

悪口言われた →AとBに死ねと2〜3回言われた
たたかれた、けられた→ Aにグーで5〜6回顔と腹を殴られ、 次にBが 足で 足の甲を1回踏まれた

のようにとにかく具体的に記録していく。

その場にいた人の名前も聞き出して、事実確認の時の証人になってもらう準備も忘れずに。

慣れてくると加害児童が嘘をつきそうな場面が予想できるようになる。

さて、いよいよその記録を元に加害児童の聞き取りをする。主犯格A、仲間のBCの3人で1人をいじめたと仮定して話を進める。

3人で口裏を合わせて事実を認めなかったら指導ができないので、そうならないようにする。小学校のいじめの場合、証拠や目撃者がいない場合が多く、指導は本人が事実を認めないと始まらない。

そこで3人の先生で ABC 3人を同時に別々の部屋で聞き取るのが王道だ。口裏を合わせて嘘をつかれるのを防ぐために。そして、他の先生が他の2人を聞き取っているよとまず伝える。

どうしても担任1人で聞き取らなければならない時は、C→B→最後に主犯格Aを聞き取る。CやBの段階で事実をほぼ固めておくとAが嘘をついても孤立無援になる。

聞き取りで正直に事実を認めたら、すぐに指導したくなりますが、まだやりません。聞き取りは事実確認だけです。指導するのは事実がわかってからです。

それから、なかなか事実を認めない時も私は誘導尋問はしません。うまく誘導して口を滑らせ「しまった」と思わせてしまうと、帰宅してから「やっぱりやってない」となることもあるので。

やはり、聞き取りをした時の被害児童の悲しみや悔しさをしっかり伝えて「悪かった」という思いを引き出してやりたい。ここは、聞き取りをした先生が被害児童の気持ちをしっかり代弁して、加害児童に自分のした事の重さを理解させるようていねいに話していきたい。

3人の聞き取りが 終わったらそれぞれの聞き取りメモを照合します。被害児童も含めて4つのストーリーがぴったり一致するわけはありません。細かいところは違ってても仕方がないと考えて。

次に、被害児童に加害児童の聞き取りの内容を伝え、なぐった事実は認めても回数が違うとか、死ねとは言ってなくて、あっちいけと言ったとか 話が合わないところを確認していきます。

細かいところの不一致よりも、加害児童が反省できているか(できそうか)でその後の指導を考えていく。

続く







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