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BIRTHERs' INTERVIEW Vol.10 /株式会社shaft 橋本 誠一さん

今回は、BIRTHER'sプランをご利用いただいている、㈱shaftの橋本さんにお話をお伺いしました。

いつも週2回、社員の深沢さんとともにBIRTHに来てくださっていますが、そのおしゃれな印象と、フリーワークスペースにマイチェアを持ち込まれるこだわりが気になっていた比嘉。ちょっとどきどきしながらお声掛けさせていただきました。

比嘉「橋本さんは普段デザインのお仕事をされているとお聞きしましたが、具体的にどのようなことをされているんですか」

橋本さん「㈱shaftでは、広告制作全般を行っていますが、得意な分野は自動車関連のカタログ、ウェブサイト、動画コンテンツなどの制作です。その他には最近、元カーグラフィック編集長の田中誠司氏とともに”モノ”にフォーカスを当てたウェブメディア、『パルクフェルメ』を立ち上げました。ここではムービー制作や執筆を手がけています。」

比嘉「すごく洗練されていてかっこいいですね!shaft社の設立が2000年だとお伺いしましたが、その以前から車業界の広告のお仕事をされてきたんですか?」

橋本さん「車業界に携わっていた時間が長いですね。専門学校を卒業し新卒で入社した会社がたまたま自動車のクリエイティブに強いところでした。その時期はバブルの全盛期で、企業も広告にお金をかけていたので海外ロケなども多かったし、様々な作品に携わらせてもらいました。ここでは3年ほどデザイナーとしての基礎を学びました。

2社目はお付き合いしていた自動車メーカーの方の紹介を受けて、クリエイティブ力の高いデザインプロダクションに転職しました。そこで、アートディレクターに昇格し4年間の経験を積みました。

その時期に、自動車関連以外のクリエイティブへの関心も強くなり、著名クリエイターの門を叩いたりしながら自身の作品制作をしていたところ、知人から自動車関のディレクターを探していると相談を受けて転職。その会社を8年間勤めた後、自分の年齢を考えると時期が来たと思い、退職して独立をしました。」

橋本さんが感じるクリエイティブ業界の変化

比嘉「長くクリエイティブ業界の先端にいらっしゃると、世の中の変化を感じるかと思いますが、始めたころと比較して今をどのようなことを感じていらっしゃいますか?」

橋本さん「業界的に、寂しいですがクリエイティブの意識が下がっていると感じています。広告にかける予算や時間が減ってきている影響もあり十分なコミュニケーションを取ることができないまま、完成させてしまう事が増えてしまつている。事なかれ主義、良いものや正しいクリエイティブを生み出すことよりも、安全に先に進んでくれれば良いと思っている人が多くなってきているように感じますね。」

比嘉「そう感じていらっしゃると、仕事の中でストレスも多くありそうですね」

橋本さん「そうですね。会社員時代は上司にとってもお客さんにとっても、扱いづらいデザイナーだったと思います。社長にモノ申したり、お客さんにまでクレーム入れたり、今考えると危険で生意気な社員だったと思いますね。(笑)

でもそれは一緒に働くスタッフが気持ちよく働けていることや、成果物が良いものになって欲しい気持ちからでした。」

橋本さんの過去のお写真

目の前のモノと真摯に向き合い、目に見えない感動を追及する

比嘉「橋本さんがクリエイティブのお仕事の中で、とくに大事にしていらっしゃることは何ですか?」

橋本さんリアリティと、そのモノらしさを正しく伝えること、生み出したモノが様々な側面においてプラスに影響を及ぼす事を目指しています

クリエイティブに携わる人間として、本当に感動したり、ポジティブに効果するものを作りたい。それは一枚の写真かもしれないし、一行のコピーかもしれないけど、本当に感動するものって、ずっと記憶に残り続ける。今の時代ネットでプレビュー数とかすぐに出てくるけど、人の感動って測ることができないじゃないですか。でも、そういう価値を信じるべきだと思っています。

そして、リアリティのあるものを作ることができるのは、本物を見て触れてこそ。夜の街の空気感も山頂から見る日の出も、実際に見て感動して観察しているからこそ細かいニュアンスまで表現できる。匂いや湿度まで五感に感じて経験したからこそ再現できる。そういう体験は最も大事だし自分の価値になります。

あとは、嘘をつかずそのモノのらしさを正しく伝えることを意識しています。嘘をついて良く見せて、買ってもらう事に成功しても、後に必ずボロが出る。そうなるとお互い不幸ですよね。人間関係も一緒だと思います。

広告ではネガティブな事は隠そうとすることも多いですが、そのウィークポイントがチャームポイントにならないか?と発想したりもします。先入観や経験値に惑わされてはいけないですね。

私の仕事は自分の作品を売ることではなく、その商品の魅力を伝えること。商品とブランドの未来が一番大事なんですよね。メーカー担当の方や、もっと言えば自分よりも大事。だからけんかしちゃう(笑)」

比嘉「そうやって意識してモノを見ていると、普通の人とは違う視点で見えているのかなと思ったのですが、どうでしょうか?」

橋本さん「ずっといろんなものをたくさん観察し、あれこれ考える習性ですかね。人よりも五感のセンサーをたくさん動かしていると思います。

街を歩いていて、例えば建築物の色や素材を見れば大体そのビルが立った年代がわかります。時代で流行りの色とか素材などがありますからね。道路のコンクリートのつぶつぶの質感が変わったことにも気づくし、自分には関係ない若い人たちのファッションにも自然に目が行きます。」

比嘉「コンクリートのつぶつぶの変化にも気づくってすごいですね!」

橋本さん「それって、やれと言われてもやれない人はやれない。苦じゃなく自然とできるからやっぱり好きなんだなと思いますね。」

彫刻家の曽祖父の影響を受けた幼少期と、これから

比嘉「そうやってモノを観察するようになったのは、デザインのお仕事を目指すようになってからですか?」

橋本さん「もっと昔ですね。曽祖父が彫刻家だった事もあり、最初は純粋に画家やアーティストになりたかった。子どもの頃から絵を描く事や工作などは人よりも上手かったし、立体造形にも興味があったのでモノをよく観ていたと思います。」

比嘉「今のお仕事はそういう小さな頃からの積み重ねによって、できているんですね。今後やりたいと考えていることはありますか?」

橋本さん「来年から3Dプリンティングの仕事を始めようと思っています。モデリングデータをもらっての出力はもちろんですが、スキャナーも導入しますから、色々な造形物を3Dプリンティング出来ます。自動車やフィギュア、アート、様々な業種の方にアプローチしていきたいですね。

3Dプリンターはモノを作ることが好きな自分にとっては夢のような機械で、頭でイメージしたものをそのまま形にすることができるから本当に面白い。朝起きて家を出るまでの間に作ったり、寝る前深夜の1時からふいにモデリングを初めてしまったり…自分のPCにはまだ形になっていない完成途中のアイディアも本当にたくさんあります。」

比嘉「本当に創ることが好きなんですね。新しい視点からの発見があり、楽しくお話を聞かせていただきました。ありがとうございます!」

橋本さんが手がけた3Dプリンタの図面
3Dプリンタの作品

自然界の生き物こそが、究極に理論的で納得できるデザインだという考えや、ピクサーの映画ではスタッフ全員が映画の舞台となっている土地に訪れて生活するというエピソードなど、橋本さんの視点や経験から学ぶことが多く、引き込まれるような時間でした。

そんなモノへのこだわりを持った橋本さんのウェブメディア『PARCCFERME(パルクフェルメ)』クルマ好きの方や、モノへのこだわりが強い方はぜひご覧になってみてください。


橋本さん、ありがとうございました。

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