クリエイター投稿52回目 芋づる式に本を読む

コロナが終息するまでには読んでしまおうと考えていた「カンタベリー物語」と「次郎物語」を終息前に読み終えた。コロナのことを毎年流行するインフルエンザくらいに思っていたが、そんなに簡単に終わるものではなかったのだ。「次郎物語」を読んでいる中で「歎異抄」を読みたくなり、kindleにダウンロードしてあるから、次はこれを読むことになる。以前持っていた紙の文庫本の「歎異抄」は神田へ追いやってしまったので今度は電子書籍だ。本を読んでいて面白いのは、こんなふうに次から次へと読みたい本が現れることだ。芋掘りのとき、芋づるをたぐり寄せると芋が次々でてくるのと似ている。

何がきっかけで河合隼雄先生の著作を読み始めたのかは、全然覚えていない。カウンセリングに興味を持つほど思い悩んでいた記憶もないし、誰かに勧められたわけでもなさそうだし。新聞に掲載されていたコラムにあった「ウソつきクラブ会長」という肩書きをおもしろがったからだろうか。気がついたら、先生の一連の本は時々取り出しては読んでみる身近な存在になっていた。精神分析とかユングについて知ろうというのではなく、先生の本にはクスリと笑えるところがあるので、そこを読むのが楽しいのだ。このところ私はサンドウィッチマンのコントや漫才をYouTubeでよく見ているのだが、それも同じものを何度も、よく考えたらお笑い指向ということでは河合先生の本を読むのも同じ事だった。私にはお笑い嗜好があるので笑いの要素を持ったものを指向するということで。(学校の教科書になじめなかったのは、笑いがほとんどなかったからかもしれない。)

河合先生は対談本も出されているので、それを読むと対談の相手の方にも興味がわくことがあり、その人の本を読むことになる。名前は知っていても読んだことがなかった作家の本を、いわば河合先生の紹介のような形で読むのだ。そうやって、新しい作家や新しい分野を知ることになる。そしてそれがまた別の作家の本を読むきっかけになったりする。この芋づるには終わりがないのだ。

河合先生の芋づるで佐藤文隆氏を知ったが、さらにはこのお二人の共同編集という本でもって山根一真著「メタルカラーの時代」を見つけたのがごく最近のことで、一番新しく収穫したお芋ということになる。新しいと言っても私が手にしたのが新しいということで、初版は1993年だから、30年も昔の本ではある。noteを知ったのも最近というガラパゴス人間の古希女子であってみれば、30年前の本を今頃になって知るのもごく普通のことなのだ。とにかく、メタルカラーという概念、そしてメタルカラー集団の方たちの仕事の内容は何もかも知らなかったことばかりで、まさに目うろこの本だ。

念のため「メタルカラー」の定義を書いておこう。           

「金属製の襟。日本の工業力を世界のトップ水準に引き上げた産業界の主役。創造的技術開発者の総称。ホワイトカラーとブルーカラーという従来の就労者分布からこぼれていた集団に対して「金属の輝く襟を持つ者」として、1993年に命名された新しい概念。」

この本を読み始めて何より驚いたのは、私たちの便利な生活を維持するために大勢の人たちが工夫をし、苦労を重ねている事実だ。17年もかけて首都圏のガス器具の部品交換プロジェクトに携わった人達、40°もの傾斜地に送電鉄塔を建てる人達、そこに100万ボルトの送電線を架設する人達、高層ビルの高速エレベーター、駅の自動改札機、新幹線のパンタグラフなどの設計製作に関わってきた人達に山根氏がインタビュウする体裁で「メタルカラーの時代」はつくられているのだが、こういう仕事をしている人達がいるということを考えもしていなかった自分自身にも驚きあきれた。

この本は図書館から借りて読んでいる。まだ一巻目を読んでいるところ。600ページ以上もある分厚いもので、6巻くらいあるようなので、今年の夏はこれを集中的に読んで、働く人達の話を聞こうと考えている。その中からまたまた関心を持つ分野が出てきて、そちらの方に芋づるを伸ばさないとも限らない。


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