見出し画像

セリエA 第24節 ユベントス vs ヴェローナ 〜ユベントス流トランジションゲーム

冬の移籍で獲得したブラホビッチとザカリアのデビュー戦となったヴェローナとの一戦は、2-0でユベントスが勝利しました。しかも得点者はブラホビッチとザカリア。新加入の選手に早速結果が出て、チームの勢いも上向きになりそうです。この試合について考えたことをまとめておきます。

ユベントスのねらい

ユベントスのスタメンは、シュチェスニー、ダニーロ、デリフト、キエッリーニ、デシーリオ、アルトゥール、ザカリア、ラビオ、ディバラ、ブラホビッチ、モラタ。ブラホビッチを最前線の真ん中に置いた4-3-2-1とでも言うべき配置で試合に臨んだ。ブラホビッチとザカリアを起用してくることは予想できていたが、ディバラ、モラタと同時起用してくるとは、正直思っていなった。代表戦に呼ばれたクアドラードは先発起用が難しく、さらに出場停止のロカテッリとベルナルデスキがいたこともあるだろう。しかし、流石に守備のリスクが高すぎると考えていた。だが、アッレグリは選択してきた。当然、勝算はあったはずだ。

それが、トランジションゲームに挑むというプランだった。この試合のユベントスは、ネガティブトランジションがこれまでよりも断然速かった。特にディバラとモラタはボールロストと同時にヴェローナのボールホルダーに襲いかかり、激しいプレスをかけていた。ヴェローナの選手も必死にボールキープしたのでボールを奪うシーンはそれほど多くはなかったが、少なくともボールの前進を妨げることはできていた。その間に後ろの選手も高い位置まで上がってきてハイプレスをかける。今季ここまでユベントスの試合に比べて、ネガティブトランジションから守備のフェーズににおいてボールの位置が高い位置に留まっていた。つまり、ネガティブトランジションでボールにプレスがかかっており、さらに守備フェーズにおいてもラインを高く設定してチーム全体を押し上げて高い位置からプレスをかけていたということになる。ヴェローナは4バックでビルドアップを行なっていた。ユベントスの3トップに対して4対3の数的優位を保っていたため、前線でボールを奪うことは難しかった。しかし、ザカリアの長いストライドを生かした素早いスライドとサイドバックの突撃守備を組み合わせてサイドからの前進をストップしてボールを中盤に留め置くことに成功した。その位置であればディバラやモラタもプレスバックに戻ってきてボールを奪回することができていた。

しかし、ボールが中盤から先に運ばれてしまうと、ディバラ、ブラホビッチは前残りして、4-3のブロック+たまに戻ってくるモラタによる守備でヴェローナの攻撃を受け切らなければならなかった。2CBと3CHで中を固めてサイドの守備はSBに任せる。SBはドリブルで突破されないことに注力しており、クロスを上げられるシーンは多かった。しかし、中で対応するのはデリフト、キエッリーニの高さ・強さを兼ね備えたCBであり、3CHもペナルティエリアに下がってくる。クロスは跳ね返せるという計算だったのだろう。ただ、実際にはこぼれ球を拾われてフリーでミドルシュートを撃たれる場面もあり、決して盤石の守備ができたわけではなかった。まあ、モラタ、ディバラ、ブラホビッチを同時に起用した時点で、相手を引き込む守備は難しくなるのはわかっていたことだ。素早いネガティブトランジションとハイプレスでボールを中盤より高い位置で留めて、出来る限り引いて守る時間を減らしたかった。これがアッレグリの本音ではないだろうか。試合後のコメントでは、「クオリティのある選手は全員使いたい。だが誰もが献身的にチームのためにプレーする必要がある。」とアッレグリは発言していた。次節のアタランタ戦やCLのビジャレアル戦を見据えて、90分の試合の中で押し込まれる時間帯があれば、ディバラ、モラタ、ブラホビッチも守備に戻るように求めているように思う。これら重要な試合に勝ち切るためには、得点が必要で、前線にはクオリティがある選手を揃えたい。同時に、得点をとっても失点をしていては勝ちきれない。失点を減らす努力も必要だ。攻撃のクオリティを維持しつつ、守備の強度も下げない。実現できれば、さらにチームの完成度は増していくだろう。

ブラホビッチとザカリア

早速結果を出したブラホビッチとザカリア。後半戦のユベントスに大きなインパクトを与えてくれそうだ。

ブラホビッチ

ブラホビッチ獲得によって相手の守備ラインを押し下げることができるだろうと考えていた。ヴェローナ戦でもブラホビッチは積極的にディフェンスラインの裏へと走り出していた。得点力のあるブラホビッチを放置するわけにもいかず、ヴェローナのディフェンスはブラホビッチについて下がっていった。そのことで、中盤とディフェンスラインの間にスペースが生まれていた。この試合ではモラタやラビオがこのスペースを活用していた。もしくは、ブラホビッチ自身が下がってきてボールを受けることもあった。マッケニーやディバラをブラホビッチが広げた中盤とディフェンスラインの間に送り込むことができれば、ディフェンスラインの前でマッケニーやディバラがフリーで前を向くというさらに危険な攻撃を展開できるだろう。

また、ヴェローナ戦ではブラホビッチの裏への走り込みが得点に繋がっている。1点目はディバラのパスから裏へ走り抜けたブラホビッチがループシュートを決めた。2点目もモラタが中央をドリブルで駆け抜けている間にブラホビッチが中央から左へと斜めに走ってディフェンスを引っ張ったことによってディフェンスラインに段差が生じた。その段差に走り込んだザカリアにモラタからのラストパスが通った。いずれの得点もブラホビッチの裏を狙ったフリーランが呼び水となっている。積極的に得点を狙ってゴールを目指して走り込むブラホビッチのプレーはユベントスの攻撃を一段上に上げている。

さらに、ブラホビッチのポストプレーは脅威だ。ロングボールを収めてボールをキープして味方が駆け上がってくる時間を稼ぐことができる。モラタやディバラなら潰されていただろうと思われる厳しいプレスも強靭なフィジカルで跳ね返してキープしてしまう。もちろん、ボールを奪われるケースもあったが、前半戦の試合と比べると、前線にボールが収まってチームの押し上げを待つことができていた場面は明らかに増えている。アッレグリのコメントにもあったように、ファーストタッチが決まらないことでのボールロストが多かったのだろう。その点が改善されるとしたら、ブラホビッチにボールを届けることができれば、高い確率でボールをキープしてチーム全体が攻撃に移ることができる。ユベントスの攻撃はさらに強力になるだろう。

ザカリア

ザカリアを見て思ったことは、移動スピードが速い。ストライドが長く、一歩で進む距離が他の選手とは違う。守備のポジションのスライドにも活かされていて、とにかく守備範囲が広い。ヴェローナ戦では、ディバラが戻ってこない中盤右サイドをほぼ1人でカバーしていた。この守備範囲の広さは、今季ユベントスが苦しんできていた攻守のバランスを無理矢理にでも整えてしまう可能性を秘めている。マテュイディクラスの守備力を垣間見た気がする。

さらに、得点したシーンやその後のディバラの決定機をアシストしたシーンでも見られたように、前線まで走り込んでチャンスに絡むことができる。移動スピードの速さは前線への走り込みにも生かされるだろう。また、フィジカルの強さも兼ね備えており、ドリブル中にバランスを崩されてもラストパスをディバラに届けている。ダイナミックに攻め上がって、ユベントスの攻撃に意外性と厚みを加えるプレーを期待したい。少なくとも、今回支払った移籍金以上の働きは見込める超優良株であることは間違いない。

アタランタ戦に向けて

ヴェローナ戦の勝利で、アタランタが1試合少ない状況下だが、ついにアタランタを上回って4位に浮上した。そして、次節はアタランタとのアウェーゲーム。ここで勝てれば勝ち点差を広げて試合数に関係なく4位をキープできる重要な試合となる。そんな試合で、ブラホビッチ、モラタ、ディバラを同時に使ってくるだろうか?おそらく、ディバラを下げてクアドラードを使ってくるだろうと予想する。そうすれば守備時に少なくとも4-4の守備ブロックを敷くことはできる。一定程度の守備の強度を保つことはできるだろう。また、アルトゥールではなくロカテッリを起用してくるだろう。アルトゥールも、ヴェローナ戦では守備時にSBとCBの間に下がってスペースを埋めるなど守備の戦術理解が高まっていることは見てとれた。それでも、ロカテッリの守備の方が信頼度は高いように思う。その上でヴェローナ戦で見せた素早いネガティブトランジションが上乗せされれば、アタランタ相手でも試合を支配できるのではないだろうか。

ブラホビッチというゴールハンターを手にしたユベントス。その上で守備の強度を維持できれば、アタランタの攻撃を抑え込んだ上で得点をとって勝ち切ることも十分可能だろう。好試合を期待したい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?