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セリエA 第29節 サンプドリア vs ユベントス 〜おかえり、ジャンパオロ

サンプドリア相手に3-1で勝利。お互いのいいところを出し合ってぶつかった面白い試合だったと思います。アッレグリ対ジャンパオロのガレオーニ門下の同門対決を簡単に振り返っておきます。

5-3-2vs 4-3-1-2

ユベントス … 復活の可変システム

ユベントスのスタメンは、シュチェスニー、クアドラード、ダニーロ、デリフト、ルガーニ、ペッレグリーニ、ロカテッリ、アルトゥール、ラビオ、モラタ、ケーン。5-3-2と見たが、クアドラードを一列上げた4-4-2と見ることもできる。

攻撃時はクアドラードとペッレグリーニが高い位置をとって幅をとる。ダニーロ、デリフト、ルガーニとアルトゥールが後方でポゼッションを確保。ケーンが最前線に張って、モラタとロカテッリがライン間を使う。5レーンを活用したポジショナルな攻撃を仕掛けていた。クアドラードはもちろん、ペッレグリーニはサイドで幅を取るタスクを任せるとしたら、ユベントスのSBの中では最適な選手だろう。アルトゥールにボール出しを任せられるため、ロカテッリがより高い位置をとってライン間やサイドで起点になるプレーができるようになった。ブラホビッチの加入、この試合ではケーンが相手守備ラインを押し下げてくれるため、モラタもライン間で躍動するようになっている。ラビオは…ロカテッリやアルトゥールの動きに合わせて中盤から左サイドにかけて漂っていた。年末、アッレグリは本来であればラビオやマッケニーの得点が増えてほしいというコメントをしていた。ロカテッリがチャンスメイクで力を発揮し始めた今、ラビオはもっと積極的にペナルティエリアまで侵入して得点をとりに行ってほしいところだ。

守備時には、クアドラードを中盤のラインに残した4-4-2でハイプレスをかける。深い位置へボールを運ばれたら、クアドラードが下がって5-3-2へと変化する。ボールの位置に合わせて守備の人数を調整する。ダニーロの復帰でシーズン前半戦で活用していた可変守備が復活した。

サンプドリア … 復活の4-3-1-2

サンプドリアはジャンパオロが監督に復帰して、以前の4-3-1-2へと回帰した。かつてのサンプドリアは3センターが鬼のような運動量で中盤の横幅をカバーしていた。さらに2トップとトップ下が流動的に動き回る。相手のDFを撹乱して、クアリアレッラが仕留める。クアリアレッラは18-19シーズンには26ゴールで得点王にも輝いた。「トータルゾーン」と呼ばれて当時サッリが率いていたナポリとの激戦は語種となっている。

この試合のサンプドリアからは当時のサンプドリアほどの運動量と迫力、流動性を感じることはなかった。しかし、年始からサンプドリアの指揮を再度取り始めたジャンパオロの哲学が形になり始めているという印象を受けた。4バックの両サイドバックが上がって高い位置をとり、2トップとトップ下が中央を流動的に動いてピッチの奥行きと幅を使った攻撃を仕掛ける。さらにカンドレーヴァも高精度の右足を武器に攻撃に参加してくる。人数をかけた魅力的な攻撃を展開していた。その分予防的な守備に不安が残るが、2CBとリンコンが睨みを効かせる。リスキーだが、ある程度バランスの取れた構造になっているように思えた。このゲームを継続できるなら、残留はまず間違い無いだろう。下手したら上位を食う試合も出てくるかも知れない。吉田麻也もこのチームでレギュラークラスとして試合に出てトレーニングを積んでいけば、さらに洗練されたCBになれる可能性があるだろう。

ユベントスの一点目

ユベントスの2、3点目はロカテッリが卓越した眼でエアポケットに入り込んで出したスルーパスとクロスでゲットしたものだ。実質2アシスト。ビルドアップの段階で2回パスミスがあったが、傑出したプレーを見せている。

1点目は、これからユベントスが意図して狙っていきたい形の得点だった。自陣深くでボールを保持して相手のハイプレスに対抗。最後はルガーニが前線にロングボールを蹴った。そのロングボールをケーンがCBを背負いながらワンタッチで落とし、ケーンの後ろから走り込んだモラタが前向きで受けてドリブル。この時点でカウンター発動が決定的で、クアドラードとロカテッリの追走で決定機創出はほぼ確定的だった。今季のユベントスはハイプレスに苦しむ試合が多い。ロングボールを蹴り、FWがキープできずに奪われてしまうことが多かった。この時のケーンとモラタのように、ワンタッチで落としてサポートに入った選手が前向きでボールを受けられたらハイプレスを一気にひっくり返してカウンターを打てる。ブラホビッチならDFと競り合いながらボールを味方に落とすことはできるはず。チームとして再現性を持ってロングボールを活用していきたい。

ビジャレアル戦に向けて

さて、明日未明、ビジャレアルとのCLラウンド16セカンドレグが行われる。ボヌッチ、サンドロが使えないと前日会見でアッレグリが話していた。先発予想は、シュチェスニー、ダニーロ、デリフト、ルガーニ、デシーリオ、クアドラード、ロカテッリ、アルトゥール、ラビオ、ブラホビッチ、モラタ。
サンプドリア戦と同じように4-4-2と5-3-2の可変システムを駆使してポジショナルな攻撃を仕掛けてくるビジャレアルを守備で受け止めて落ち着いた試合展開に持ち込もうとするだろう。その上でビジャレアルの後方にできるスペースをカウンターで狙っていくはずだ。ブラホビッチ、モラタ、クアドラードのフィジカルとスピードで得点を狙いにいくだろう。

また、ファーストレグでは起用されていなかったアルトゥールが先発する可能性が高い。それに伴ってロカテッリが前に出てくる機会が増える。守備では多少の不安はあるが、攻撃力は格段に上がるだろう。アルトゥールの守備理解もこの半年でかなり進んでいる。クアドラードの列移動で5-3-2と4-4-2を可変させる守備で深い位置まで侵入されたら5バックで5レーンを埋めて数的不利を作らない。ボールが低い位置にあるときはクアドラードを上げてミドルプレスもしくはハイプレスに出る。アルトゥールの守備不安を戦術的にカバーして、なおかつその技術や攻撃力を活用する。さらにアルトゥールの起用はロカテッリがより高い位置でボールを受けてチャンスメイクする力を呼び覚ました。ライン間で、サイドで、ロカテッリがボールを受けて決定的なスルーパスを繰り出す。アルトゥールの存在こそ、セカンドレグのカギになるだろう。守備への不安が出てしまうのか、攻撃力の強化が火を噴くのか。トータルで考えると、守備では何度か決定機を作られるシーンはあるものの、攻撃力が上がって魅力的な試合を展開できるようになっている。

ラビオに変えてベルナルデスキを起用する可能性はあるだろう。ファーストレグでは、右サイドのチュクエゼのドリブル突破がユベントスの脅威となっていた。翻せば、チュクエゼの裏を取って攻撃するチャンスがあるということでもある。チュクエゼが裏を警戒して守備に力を割くのであれば、ユベントスにとっては脅威が減る。ラビオよりもベルナルデスキの方がチュクエゼの裏を狙った攻撃には向いているはずだ。ただ、おそらくは交替カードとしてとっておくだろうと思う。ユベントスが本当に使える交替カードは、ディバラ、ベルナルデスキ、ペッレグリーニくらいだろう。攻撃的な選手しかいない。最小失点で試合を進め、後半途中からベルナルデスキやディバラを投入してスタミナや集中力が落ちたところに畳み掛けるプランではないか。

いずれにせよ、明朝5時が待ち遠しい。

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