見出し画像

クロスを得点に結びつけるには…

ジェノアとユベントスの試合は1-1の引き分けでした。試合内容を見ても、妥当な結果だと思います。前半であと2点は入れておきたかったところですが、ロングボールのこぼれ球を拾われ、守備が混乱した中で同点弾を叩き込まれました。フィニッシュまでの流れは素晴らしく、ジェノアを褒めるしかありませんが、ブレーメルまでサイドに出て行ってしまう状況を作ってしまったことは反省すべきですし、ロカテッリが前に出てマリノフスキーにプレッシャーをかけたかったところです。守備の一瞬の乱れを見事に突かれてしまいました。それにしても、ジェノアのサイド攻撃は明らかにデザインされていました。一方でユベントスの攻撃はチグハグで周りと合わない場面が目立ってしまいます。ジェノア戦を見ていて思ったことを書いておきます。

ペナルティエリアに入り込むタイミング

ジェノアの狙い

ジェノアの狙いは明確でした。フィジカルで押す。これに尽きます。そして、サイドからのクロスは確実にデザインされていました。具体的には、徹底してファーサイドの深い位置を狙い、ユベントスのWBと競り合って中へボールを返す。ユベントスのCBとの競り合いを避け、コスティッチとカンビアーゾを狙ってフィジカル勝負に持ち込み、競り勝つ。なおかつユベントスのCBの目線を揺さぶってマークを混乱させて後方からペナルティエリアに飛び込んでくる中盤の選手が仕留める。ジェノアは前半、この形で決定機を作ることに成功していました。ファーサイドを狙ったクロスに活路を見出していました。

ディフェンスの選手からすると、一度クロスがファーサイド深い位置に流れると、ボールの位置を確認するためにゴール方向を向いてボールを見ます。この時、自分の背後を確認することはできません。つまり、ペナルティエリア内の状況から一度目を切らなくてはならなくなります。その状況下でクロスをペナルティエリア内に折り返されれば、CBの選手が正確にマークにつくことはほぼ不可能です。一度マークする選手から目を切っているのですから。加えて中盤の選手がペナルティエリア内に飛び込んでくれば、CBの選手は困難な対応を強いられます。ボールが近くに来ればクリアするか、シュートコースに入ってブロックを狙うか。後は味方の中盤の選手がマークを離さずに戻ってきて先にボールに触ることを祈るしかありません。ジェノアは徹底してこの形を狙い、ユベントス守備陣を苦しめていました。

ユベントスの改善点

一方のユベントスですが、ブラホビッチにも裏を狙う意識も見え始め、攻撃の際の選手の動きも多彩になってきています。ただ、パスが合わなかったり、ズレたりして上手くいっているとは言えません。ボールを敵陣深くまで運んでもなかなか決定機には繋がらず、守備力で1-0の勝利をもぎ取っています。この結果、内容自体はそこまで悪いわけではありません。ユベントスらしくなってきた、アッレグリのチームらしくなってきたと言えます。ただ、やはり点を取れる時に取り切れるようにならなければ、この試合のように一瞬の隙を突かれて失点し、結果として勝ち点を手放すことにも繋がってしまいます。ライバルのインテルは、複数得点の試合が多く、守備のミスを突かれたとしても勝ち切っています。得点力の向上は、今後のユベントスの大きな課題です。(なんなら昨季からずっと言っていると思いますが…)

しかし、ユベントスにはこの男がいます。

20-21シーズンEL MVP, 今季キーパス数チームNo.1の男

アシストの鬼、コスティッチです。左サイドを駆け上がり、クロスやセットプレーのキックでアシストを量産。その左足でチームに勝ち点をもたらしてきました。昨季から、コスティッチは左サイドを駆け上がった時、意図的にハイクロスではなくグラウンダーのショートクロスを選択していました。しかし、ほとんどクロスが合うことはなく、相手にクリアされてしまっています。ただ、昨季インテル戦のラビオとファジョーリのゴール、ミレッティのファーストゴールはコスティッチによるショートクロスから。コスティッチ本人にその意図を聞いてみたいところですが、推測するに、ユベントスの攻撃陣には高さが足りません。キエーザにはヘディングで競り合うイメージはありませんし、ブラホビッチもヘディングでの競り合いは苦手です。昨季得点を量産したラビオも今季はペナルティエリアへの飛び込みの頻度は少なくなっています。マッケニーはヘディングのゴールもマークしていますが、高さがある方ではありません。カンビアーゾもフィジカルが強い方ではありませんし…。一方、ブレーメル、ガッティ、ダニーロが上がってくるセットプレーでは躊躇なくハイクロスを蹴っています。ショートコーナーやトリックプレーを使うことはありません。CB陣の高さ、強さに信頼を置いているのでしょう。しかし、コスティッチが左サイドを駆け上がってクロスを上げるタイミングではCB陣はゴール前にいません。高さ勝負ではなく、グラウンダーのクロスを送る方がいいと判断しているように思います。

では、コスティッチが消極的かもしれない理由ではありますが、意図して狙っているグラウンダーのクロスが合わないのはなぜか。原因は2つあり、それこそがユベントスの得点力UPのヒントになると思います。

①ニアに走り込む選手がほとんどいないこと。

②遅れてペナルティエリアに入ってくる選手がいないこと

①については、ミレッティの初ゴールがヒントになります。ニアサイドに走り込んでDFよりも先に触れる位置にいれば、コスティッチはその選手をピンポイントで狙えます。見事にミレッティにニアサイドを抜かせました。しかし、ミレッティのゴール以外にニアサイドに走り込んでくる選手はいません。クロスのターゲットとなる選手との間にDFがいればカットされるのが関の山。コスティッチのクロスに対してニアサイドを狙う選手を必ず1人揃えることがチャンス拡大の第一歩です。

そして②。ニアサイドに人がいなくても、グラウンダーのクロスを狙うポイントがもう一つあります。味方が走り込むことで下がったディフェンスライン手前のスペースです。コスティッチはむしろ、こちらの方を意図的に狙っているフシがあります。ハイクロスは味方に分が悪い。ニアサイドには走り込んで来ない。そもそもコスティッチの左足は相手から最大級の警戒を受けています。相手DFはまず左足からのクロスをブロックしに来ます。左足のクロスを囮に、相手に足を出させてマイナス気味に足の下もしくは股を狙ってグラウンダーのクロスを通す。そうすると、味方が走り込んだ後ろのスペースにボールを送り込むことができます。あとは、最初にペナルティエリアに飛び込んだFWの後ろから少し遅れて誰かが飛び込んでくれれば決定機です。が、現在のユベントスはペナルティエリアに飛び込む人数は確保できているものの、飛び込むタイミングはほぼ一緒。コスティッチのマイナスのクロスに合わせられる、少し遅れたタイミングで入ってくる選手はいません。例えば、ブラホビッチとマッケニーが最初に飛び込むなら、カンビアーゾが遅れてダイアゴナルに走り込んでくるとか、ミレッティやラビオが後ろから走り込んでくるとか、最低一枚は遅れてペナルティアーク付近を目がけて走り込んでほしいところです。リスクをとるなら、ガッティという手もあります。セットプレーでもないのにCBがペナルティエリアに飛び込んでくるというのは相手からしても予想外のプレーとなるでしょう。モンツァ戦のガッティのゴールは、ラビオからのボールでしたが、少し遅れてマイナスで待ち構えていたガッティへのマークが難しいことの証左です。

なお、ジェノアが狙ったファーサイドからの折り返しは、高さ・強さが足りないユベントスでは難しいでしょう。

チームとして狙いを定めて動くことができれば、サイドからのクロスも相手にとって脅威になります。ユベントスの場合は、ニアサイドに走り込む選手を用意するか、遅れてペナルティエリアに飛び込むか。出来ることなら両方とも実践したいところです。コスティッチに選択肢を用意することができれば、得点のチャンスが大きい方をコスティッチが選択することができます。キエーザの出場によってコスティッチが低い位置でプレーする時間が長くなっていることは気がかりですが、コスティッチの左足をフル活用することが得点力UPにつながると思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?