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セリエA 第25節 ローマ vs ユベントス 〜ディマリア・ロールのその先へ

ローマとの一戦は0-1で敗戦。上位との差をさらに詰めるチャンスだったのですが、逆に水を開けられることになってしまいました。しかし、まだ13試合残している上、上位陣との直接対決も残しています。自分たちから崩れてしまってはシーズンは終わってしまいます。これからも着実にポイントを積み重ね、チャンスが来ることを信じて待ちたいところです。

アッレグリとモウリーニョ

ユベントスは5-3-2、ローマは5-2-3で試合に臨んだ。互いの監督が守備を重視する監督なだけに、その守備は堅かった。

ローマは5-2-3でミドルプレスがメイン。最初のうちはハイプレスもかけていたが、中盤は2対3で数的不利だ。ロカテッリが浮く上にディマリアまで下がってくるためハイプレスは機能せずに引くしかなかった。その後は5バックからアグレッシブに人を前に出す守備でユベントスの攻撃をストップ。ペナルティエリア寸前で人を捕まえ、チャンスを作らせない。ボール保持は譲りながらも、ペナルティエリアでの決定的な場面はほとんど作らせなかった。

ユベントスは5-3-2で真ん中に人を集め、ミドルプレスをメインに守備を行っていた。徹底して中を閉めてローマの攻撃を外へ外へと誘導。ブロックの中を使わせないことを最優先して守っていた。エイブラハムが先発落ちしたこともあり、ローマの攻撃はクロスがメインにはならなかった。ブロックの中を使わせない意識はかなり強く、コンビネーションで崩しを狙うローマに対してスペースを埋めつつボールホルダーにはタイトにマークにつく。ローマに対して決定的なシーンをほとんど作らせなかった。

互いに見事な組織的な守備を見せてくれた。

ミドルシュートは敢えて撃たせてコースを切る、もしくはプレッシャーをかけてGKと連携して止める。そういう守備の設計をしている以上、スーパーミドルを叩き込まれるリスクはある。ラビオは間に合っていたのでブロックしたかったとは思うが、失点は仕方がないところだ。また、前半はサンドロがかなりアグレッシブに前に出て人を捕まえに行ってローマの攻撃を牽制していた。5バックを揃えて守備をしていたところだったので、ダニーロが前に出てラビオを押し出してマンチーニに強く当たらせてももよかったかもしれない。

ディマリア・ロール

攻撃のフェーズにおけるユベントスは、3バックとロカテッリが後方でボールを保持。コスティッチとクアドラードが幅をとって、ブラホビッチが中央に鎮座。ラビオとファジョーリが運動量を活かしてハーフスペースと中央レーンを動き回る。特に最近のラビオはペナルティエリアに突撃する回数が増えており、危険な存在になりつつある。前半ラストのヘディングは決まっていてもおかしくなかった。ブラホビッチがいるだけにラビオのペナルティエリアへの飛び込みは競り合う相手も屈強なCBを避けられる可能性も高まる上、ラビオは助走をつけて飛び込める。相手にとって大きな脅威となるだろう。

そして、ディマリアだ。コスティッチ、クアドラード、ラビオ、ファジョーリが前に出るのに対して、ディマリアは降りてくる。ポイントは下がってくるというところだ。守備側からすると上がってくる相手をマークしないわけにはいかないため、ディマリアを捕まえるのは難しい。ラビオやファジョーリが上がって守備を引きつけているところでディマリアがロカテッリの横に降りてくる。このポジショニングでディマリアがフリーとなってボールを動かすことができる。加えて、ディマリアにはかなりの自由が与えられており、右サイド、左サイドにも顔を出す。神出鬼没の動きでフリーでボールを受けて局面を進める役割を任されている。

このディマリアのポジショニングによってユベントスはボールを保持できる。ポイントはディマリアを前に置いておくことだ。5-3-2でも、5-2-3でも、おそらく4-3-3でも応用は効くだろう。あとは守備の堅さを維持することができれば、今季のユベントスの完成形が見られるだろう。ディマリアを前線で使いつつ、攻守のバランスを見出すこと。アッレグリが目指すべき到達点がそこにある。ただ、この未来は昨季、ディバラと共に描いていた形だった。結局、ディバラの度重なる怪我によって棚上げになってしまった。今後、ディマリアに怪我などがないことを祈るばかりだ。

ただ、ディマリアが下がってくるメカニズムでボールを保持できたとしても、何度か決定機は作ったものの得点には結び付かなかった。ヒントになるのは87分のポグバのプレーだ。ローマのディフェンスは積極的に前に出ていた。ビルドアップの段階では、ラビオやファジョーリが「前に出る」とは言っても、スタートポジションから前に出てライン間をとるということになる。それでもディフェンスを引きつけてディマリアをフリーにすることはできる。しかし、ディマリアやビルドアップ隊からボールが出た時、ラビオやファジョーリはディフェンスの前にいるため前に出る守備に捕まりやすい。ボールを保持しながらユベントスの攻撃が停滞してしまったのはここに原因がある。87分のポグバは、ローマのディフェンスが前に出て人を捕まえに来ることを逆手にさらにその裏に潜り込むように移動してボールを受けた。その後少し時間がかかってしまってシュートまで行けなかったが、惜しいシーンだった。

ディマリアが下がってフリーとなりボール保持が安定したとしても、前線に上がった選手たちが厳しくマークにつかれてしまったらその先の攻撃に繋げるのは難しくなる。ローマはそのディフェンスで対抗してきた。その時にはポグバが見せたように厳しくマークにつくために移動した守備者が開けるスペースを突くポジショニングがカギになる。もちろん、相手が前に出てこなければ、ラビオやファジョーリがターンして前を向けばいい。ディマリア・ロールのその先へ。攻撃のメカニズムをさらに一段レベルアップさせていきたい。

余談

アッレグリはロカテッリの交替について、「先制された後、(ロカテッリは)前に出過ぎていた」とコメントしたようだ。バランスを重視した、なんともアッレグリらしいコメントだ。確かにロカテッリがボヌッチからの高速縦パスを受けきれずに危険なカウンターを喰らったシーンがあった。しかし、ロカテッリはディマリアが下がってくる分、自分が前に出てもバランスは取れると判断したように思う。その後もボヌッチからの縦パスを受けられるポジションをとり、攻撃を加速させていた。昨季からロカテッリの攻撃性能はユベントスの中でも異質だった。足元の技術の高さはもちろんのこと、ボールの動きや開いてくるスペースを読み取る力が抜きん出ている。アンカーという攻守の要のポジションを任され、特に守備面でディフェンスラインをプロテクトするタスクがある以上、普段は攻撃参加を自重しているように見える。ただ、一度リミッターを外して攻撃参加をすれば、ライン間でボールを受けてパスを捌く、近くの味方と連携してスペースを攻略するなどのプレーで局面を打開してしまう。ナポリ戦唯一の得点は、ロカテッリがペナルティエリアまで上がってディマリアとの連携プレーで生まれている。

アッレグリの言い分はわかる。ロカテッリまで前に出たら、3バックとディマリアでカウンターに対応しなければならない。バランスが悪いのは確かだ。ただ、下がってきたディマリアがまた前線まで上がるには時間がかかる。創出したチャンスにディマリアは間に合わないかもしれない。実際、ボール保持からの攻撃においてディマリアがペナルティエリア内でボールに触る機会は少ない。得点するためには相応のリスクを取ることも必要だ。時間帯や状況によってはロカテッリの攻撃参加を積極的に解放してもいいのではないだろうか。

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