統計学入門(基礎統計学I) モーメント母関数・期待値・分散の導出② 二項分布

はじめに

前回、モーメント母関数がすべての次数のモーメントを生成することから確率分布を一意に決定できることを学んだ。より具体的に理解するためここで二項分布を例にモーメント母関数から期待値および分散の定理を導出することをこの記事のゴールとする。

おさらい:二項分布とベルヌーイ分布

2値(陽性T or 陰性N)の観測結果とその確率をぞれぞれ$${p, 1-p}$$とする。これを同じ条件かつ独立にn回繰り返すことを考える。これをベルヌーイ試行という。ここでTがx回、Fがn-x回生じる場合その確率は以下で与えられる。

$${f(x) = {_n}C_xp^x(1-p)^{n-x}}$$

この確率分布を二項分布$${B(n, p)}$$といい、$${Bi(1, p)}$$をベルヌーイ分布という。

二項分布のモーメント母関数

$$
\begin{array}{}Mx(t)&=&\sum_{k=0}^ne^{tx}f(x)dx\\&=&\sum_{k=0}^{n} e^{tx}{_n}C_kp^x(1-p)^{n-k}\\&=&\sum_{k=0}^n{_n}C_k(e^tp)^k(1-p)^{n-k}\\&=&(e^tp+1-p)^n\end{array}
$$

上式では二項定理の式を用いて式変形している。

二項定理の公式$${(a+b)^2 =\sum_{k=0}^n {_n}C_ka^kb^{n-k} }$$

二項分布の期待値

$$
\begin{array}{}E(x) &=& \frac{dMx(t)}{dt}_{t=0} \\&=& n(e^tp+1-p)^{n-1}pe^t_{t=0}\\&=&n(p+1-p^{n-1})p・1\\&=&np\end{array}
$$

二項分布の分散

$$
\begin{array}{}E(X^2) &=& \frac{dMx(t)}{dt^2}_{t=0}\\&=&(n(e^tp+1-p)^{n-1}pe^t)_{t=0}'\\&=&n(n-1)p(e^tp+1-p)^{n-2}pe^t+np(e^tp+1-p)^{n-1}e^t\\&=&n(n-1)p^2+np\\\end{array}
$$

$$
\begin{array}{}V(X) &=& n(n-1)p^2+np - n^2p^2\\&=&np(1-p)\end{array}
$$

参考文献

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