統計学入門(基礎統計学I) モーメント母関数・期待値・分散の導出③ポアソン分布

はじめに

モーメント母関数がすべての次数のモーメントを生成することから確率分布を一意に決定できることを学んだ。より具体的に理解するためここでポアソン分布を例にモーメント母関数から期待値および分散の定理を導出することをこの記事のゴールとする

おさらい:ポアソン分布

二項分布においてnが大きく、pが小さい場合両方の傾向が釣り合ってある程度のxが現実に観察される。例えば、不動産契約の成立確率は極めて小さく、仮にp=0.002とする。この時の申す込み数n=1000件に対して成約件数が3件となる確率はいくらか。これを二項分布の式で直接求めるのは現実的ではないが、E(X)=np=1000・0.002=2であるから、X=0, 1, 2, 3くらいまでの確率は小さくないはずである。
ここで、

$${np→λ}$$となるように$${n→\infin、p→0}$$となる極限にて各xについて$${{_n}C_xp^x(1-p)^{n-x} }$$ →$${e^{-λ}λ^x/x!}$$が成り立つ。これをポアソンの少数の法則という。

$$
λ>0としてf(x)=e^{-λ}λ^x/x!,  x = 0, 1, 2, …
$$

とおくと、これが確率分布であることは指数関数の展開$${\sum_xe^xλ^x /x!=e^{-λ}\sum_xλ^x/x! = e^{-λ}e^λ=1}$$から確かめられる。

この確率分布をポアソン分布といい、$${Po(λ)}$$で表す。二項分布に対してポアソンの少数の法則によるポアソン分布への移行により成り立つことイメージすれば理解しやすいことが分かった。

ポアソン分布の現実での現象例は無数にあり、交通事故件数、大量生産の不良品数、破産件数、火災件数、遺伝子の突然変異などがよくあてはまる。

ポアソンのモーメント母関数

$$
\begin{array}{}Mx(t) &=& E(e^{tk}) \\&=& \sum_{k=0}^{\infin}e^{tk}\frac{λ^ke^{-λ}}{k!}\\&=&e^{-λ}\sum_{k=0}^{\infin}\frac{(λe^t)^k}{k!} \end{array}
$$

$$
ここでe^x = \sum_{k=0}^{\infin}\frac{x^k}{k!}, x=λe^tとおくとe^{λe^t}=\sum_{k=0}^{\infin}\frac{λe^{tk}}{k!} =e^{-λ}・e^{λe^t}=e^{λ(e^t-1)}
$$

ポアソン分布の期待値

$$
\begin{array}{}E(X)&=&\frac{dMx(t)}{dt}|_{t=0}\\&=&(λ(e^t-1))e^{λ(e^t-1)}|_{t=0}\\&=&λ・e^{0+λ(1-1)}\\&=&λ\end{array}
$$

ポアソン分布の分散

$$
\begin{array}{}E(X^2)&=&\frac{d^2Mx(t)}{dt^2}|_{t=0}\\&=&(λe^{t+λ(e^t-1)})'e^{t+λ(e^t-1)}|_{t=0} \\&=&λ(1+λe^t)・e^{λ(e^0-1)}\\&=&λ+λ^2\end{array}
$$

$$
V(X) = (λ^2 +λ) -λ^2 = λ
$$

参考文献

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