言語にあわせて使い分けたい「コンポーザー」のお話
タテ組なのに変なことに!?
ずいぶん前のことになりますが、生徒さんから「タテ組の文章が変なことになってるんです!」という質問をいただいたことがあります。
実際の画面とは違いますが、データを見ると下図のような状態になっていました。
タテ組なのに文字が横倒しになっていて、確かに変な状態です。原因は文章に適用されていた「コンポーザー」の設定にありました。
今回は文章組にかかわる大事な設定のひとつ「コンポーザー」について、ちょっと気をつけておきたい点を動画にしてみました。
よろしければ、以下の動画からご覧ください。
言語に適した「コンポーザー」を選ぼう!
動画で述べたように、テキストに「言語に適したコンポーザー」が適用されていないと、その言語固有の組版機能が使えなくなります。
冒頭で述べた生徒さんのデータが「変なタテ組」だったのは、日本語のテキストに「欧文コンポーザー」が適用されていたことが原因だったんですね。
その方も海外のファイルをそのまま転用していたのかなと思います。
動画では分かりやすい例として、組み方向やルビ機能で解説していますが、この他にも、日本語と欧文では行送りの基準位置が異なったり、日本語の禁則処理や文字組空き量設定が機能しなくなるといった弊害があります。
むしろこっちの方が問題ですね…。
例えば海外の書籍や、海外本社の商品カタログ・製品の仕様書等、海外からのInDesignデータを流用して日本版を制作する場合、作業を始める段階でコンポーザーや文字パネルの「言語設定」を確認しておく方が良さそうです。
(海外のクリエイターが配布しているInDesignテンプレートも確認してから使う方が良いのかも?)
ちなみに日本語の場合「日本語単数行コンポーザー」がおすすめです。
逆に日本版から海外版にローカライズする場合も、日本語の設定では欧文合字や適切なハイフネーション処理が行われないでしょう。
現地の言葉にあわせて、コンポーザーや言語設定も確認しながら、その言語にあわせた違和感の少ない組版を目指していただくと良いのかな思います。
いやしかし、「現地の言葉にあわせて違和感なく組む」には、その国の言葉に慣れ親しんでいないと、なかなか実現するのは難しいですよね……。私も悩ましく思います。
もし身近に、その言語に詳しい方がいらっしゃったら、その方に意見をいただきながら、現地の方にとって読みやすい形にできるよう、進めていただくと良いかもしれませんね。
というわけで、ちょっと変則的なご案内になりましたが、今回は「コンポーザー」についてのお話でした。
近ごろ、海外のInDesignデータをローカライズする……というお問い合わせが増えてきたこともあって取り上げてみました。
なにかしらご参考になれば幸いです。
(「教室のお知らせ」2022年5月より一部編集して掲載)
参考資料
InDesign入門ガイド「テキスト2」
InDesignには日本語組版用に様々な設定があって、今回のコンポーザー設定も様々な組版機能に影響します。
ちょっと込み入った設定も多いのですが、Adobe ヘルプ の入門ガイドに分かりやすくまとめられているようです。下記URLよりご覧ください。
https://helpx.adobe.com/jp/indesign/how-to/introduction-guide-text-space.htmlMORISAWA PASSPORT 英中韓組版ルールブック
フォントメーカーのモリサワが、多言語組版に関するPDF資料を配付しています。言語ごとの基本がまとめられていて、私も勉強させてもらっています。よろしければ下記よりご覧ください。
https://www.morisawa.co.jp/fonts/multilingual/typesetting/Illustratorのコンポーザー
Illustratorも、段落パネルのメニューなどからコンポーザーを設定できます。「あれ、おかしいな?」と思った時は、コンポーザーの設定を見てみると良いかもしれません。段落スタイル、文字スタイルを活用しよう
動画では段落パネルからコンポーザーの設定を見ていきましたが、実務では「段落スタイル」「文字スタイル」から設定を行う方が効率的かもしれませんね。スタイル機能はとっても便利なので、上手に活用していきたいですね。
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