タイミングのしくじり

安倍首相が辞任を表明した。まあ周囲の読みどおりであった。

ところが「辞位固まる」と午後の2時頃に速報が出た。こりゃまずい。理由は相場の変動である。

当初会見は午後5時頃となっていた。それは証券取引所が閉まるからである。地球が2回転すれば辞任による相場の影響はおさまると思った。ところが終了2時間前のスクープだったため証券市場は急落したり、反動で大量に買ったりと乱高下をした。このうねりが香港・シンガポールに影響すれば、ロンドン・ニューヨークでは日本切りのための戦闘準備に入る。そして月曜日になると悲惨な状況で市場は開かれる。

午後5時というのは日本だけではない。少なくともサミット参加国には事前に安倍首相の降板は知らせてあったはずだ。それは安定した市場経済のためである。それがフライングしたわけだからヨーロッパ各国は驚きと激怒をもったはずだ。そしてその矛先はインテリジェンス部門。日本ならば内閣情報調査室あたりにぶつけられたかもしれない。「お宅(日本)は身内に甘いのか!」「日本の報道管制はどうなっているの?」霞が関は火消しにまわったのではないだろうか。永田町が未来を見据えているとき、霞が関の特に外国と密な部署は恨めしやだったとしたら、次の総理は霞が関を手なづけられる人間でなければならない。

これが策謀だったらどうだろう。もし自分がフライングをしたら、その目的は残り1年数ヶ月で一気にコロナや中国問題等を片付けるための暫定政権に仕立てるであろう。そして次の総裁選で出馬してのんびりと官邸から外の景色を見るようにするだろう(?)しかしそんな策謀によるものなら、恐ろしいほど愚かな人間がやったとしか思えない。

次の内閣は、いわゆる導火線のようなものを持つ。なぜならアメリカとの関係である。アメリカが今大統領選挙で外にかまっている暇がない。新大統領が決まるまでの2ヶ月を、日本は日本人が納得いく防衛外交を展開しなければならない。しかも新大統領が「よくやった。また仲良くやりましょう。」と言わせねばならない。極めてナーバスな舵取りになる。

次期総理が俺は俺だ!と言って勝手に外交や防衛指針を決めるとなると、アメリカが気に入らなければ、ダイレクトに被害を被るのは沖縄だ。「お前(日本)が勝手に決めたなら、うち(アメリカ)も勝手にさせてもらうから」と言われ、全ての沖縄問題を「何それ?」とシラを切られる確率が高い。幸か不幸か、今現在中国は三峡ダムのことで頭がいっぱいなので尖閣に船を出す余裕がない。しかしこの問題は(私は住民の方の幸せを願っている)クリアできるだろう。その後中国が煽りをかけてきたとき、どう向き合うかが問題になる。アメリカを頼らずにアメリカに気に入られ、なおかつ中国も仕方ないかと諦めさせることが、果たしてできるのだろうか?

夢見るような話だが東西冷戦ではすかさずここにCIAが入ってきた。香港が中国に取り込まれてしまった状況からすれば、中国は対国向かうところ敵なしと思っているだろう。それゆえ総裁選には防共となるべく人物を登用させるため、アメリカが干渉せざるを得ないからだ。だが首相の会見はそれを踏みとどまらせることを念頭に置いたようなものだった。

それまでの安倍首相は自身の記者会見では自分のやってきたことを堂々と述べていた。おそらく今回も言いたかっただろう。総裁選も熟慮した上で候補を立てさせたかっただろう。しかしフライング速報で、日本から放たれた経済のベクトルはとんでもないことになり、一刻も早く総裁を決めることになってしまった。他国の干渉も許される状況で、彼は役どころを変えた。今までのことや未来のことを述べないことで、自身の求心力の低下をアピールしてしまったという惨めな中年オジさんをアピールした。フライングはそのために起こってしまったのだから勘弁してください。それを滲ませることで次期総裁の魅力を高めさせた。ここに下手に外国が干渉すれば「あいつが決めたから」と(明言はさすがに避けるが)さっさと政権が交代し、回し手形のような短期政権となって日本の政治が混迷する。これは安倍首相もサミットの参加国も望まない。

内閣史に残る長期政権にしては、可哀想な幕引き宣言に見えた。しかし安倍は最後まで私心を捨てた総理にこだわった。安倍のマスクで酷評を受けたのなら、残りの在職中にやりたいことをやってもらいたい。案外それで支持率が高くなることもあるから。

安倍さん本当におつかれさまでした。あとちょっとです。来年の東京五輪にはスペシャルゲストとして出てほしいなぁ。

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