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私の旅行記 北海道・白老・ウポポイでアイヌ民族の歴史と文化にふれる夏 

 昨年(2023年)8月上旬、白老町にあるウポポイに行ってきました。
 ウポポイ(民族共生象徴空間)は、2020年にできたアイヌ民族の歴史と文化に触れることができる施設です。北海道に行くのならぜひ訪れたいと思っていました。ウポポイは、国立アイヌ民族博物館が中心ですが、その周辺に関連施設がいくつもあり、立地している場所の自然も含めて、全体がまさに民族共生象徴空間になっています。
 ウポポイは、2007年国連「先住民族の権利に関する国連提言」を受けて、国が「アイヌ政策のあり方有識者懇談会」を開き、国の提言(2009年)を受けて、地元も協力し建設整備されました。国立の施設としてアイヌ文化の復興・創造などの拠点として位置づけられています。
 札幌駅や空港からも近いので、北海道旅行で是非おすすめしたい旅行地です。

札幌から特急「ずずらん」で1時間

 ウポポイには鉄道を使いました。えきねっと「トクだ値」で特急「すずらん」の切符をとり、割引料金で1日余裕をもって行くことにしました。札幌駅から乗車。途中、千歳空港を過ぎると、乗客も少なくなり車窓から北海道特有の牧場が見え、約1時間の快適な電車の旅でした。


札幌駅に入線する特急すずらん


 白老駅で降りる人はわずか数名でした。車の観光客の方が多いのでしょうか。駅から整備された歩道を10分程度歩きます。札幌に比べるとあまり暑くはありませんでした。白老はアイヌ語で「アブの多いところ」を意味する「シラウオイ」からきているそうですが、アブにはこの後も出会いませんでした。
 ウポポイで出迎えてくれたのが、「トゥレッポん」。ウポポイのPRキャラクターです。カブかと思いましたが、オオユバユリなのだそうです。重要な食物であることは見学してわかりました。入館料は1200円です。

PRキャラクター トゥレッポん


国立アイヌ民族博物館

 ウポポイはポロト湖畔に広がっていて、その中心に国立アイヌ民族博物館があります。先住民族アイヌをテーマにした日本初の国立博物館です。正面は木質を思わせ、側面は黒っぽく重厚な感じのする建物です。2階建ての建物で高くなく周囲にマッチしています。1階にはミニシアター、ライブラリと土産物店があり、2階が展示室です。2階に上がるとすぐにポロト湖とウポポイ全体を見渡せます。展示は壁がなく開放的で、「私たちのことば」「私たちの世界」「私たちのくらし」「私たちの歴史」「私たちのしごと」「私たちの交流」の6つのテーマで展開されています。
 身近に展示が見れ、アニメなどの映像や音声などが駆使されていて、大変わかりやすくなっています。最近の博物館の特長ですね。

博物館2階から見える景色 ポロト湖に面し、左の建物は体験交流ホール
国立アイヌ民族博物館2階の展示 アイヌ語の表記が新鮮に感じた

アイヌ時代とは

 展示の中で興味を深かったのはアイヌの歴史です。歴史について学んだことがなったこともあり、いくつも新鮮な発見がありました。次のように日本列島には三つの異なる文化系統があります。今まで学んだ日本史は本土日本についてでした。北海道は気候の影響もあり稲作文化が入ってこなかったため、独自の文化が形成されていました。特に800年前から明治以前はアイヌ時代といいます。

篠田謙一著『人類の起源』第6章日本列島集団の起源 より

特に興味を深かった「シャクシャインの戦い」 

 江戸時代(北海道はアイヌ時代)、北海道全土のアイヌが立ち上がって、江戸幕府に戦いを挑んだことがあったのです。
 この時代に、和人がアイヌと交易する際、管理を一切、松前藩が取り仕切ることになりました。その結果、今までの自由な交易が認められなくなりました。干しサケと交換するコメを3分の一に減らされるなど、アイヌの人々に不利になることが多く、次第に生活が困窮するようになり、自由な交易を求めて北海道全土のアイヌが蜂起しました。アイヌ軍のリーダーが、日高地方沿岸部の首長シャクシャインです。そのためシャクシャインの戦い(1699年)といいます。アイヌ軍は最初は善戦しましたが、幕府側は東北の藩からの応援も得て、多くの鉄砲など使い、徐々にアイヌを圧倒していきます。そんな中、松前藩の和睦の誘いにのったシャクシャインが、酒宴の席で殺されてしまいます。リーダーを失ってアイヌ軍は一気に崩壊してしまいます。これ以降、松前藩に服従を誓わされ、不遇の時代を迎えることになります。これ以外にも展示では各時代のアイヌの歴史が学べます。

チセを再現した伝統的コタン

 博物館を出ると、ポロト湖が目の前に広がります。コタンは集落のことで、川沿いに多かったようです。湖畔を歩いていくと復元されたチセが5棟並んで、コタン(集落)のようすがわかります。チセ(家屋)は地面を掘り下げた平地住居で中に炉がありました。炉には火のカムイが宿るそうです。サケは主食としてだけなく、皮で靴などもを作りました。チセには、アイヌの衣装や食の展示があり、文化や暮らし方の解説も聞けます。自然と共生していたことがよくわかります。

博物館2階からの景色 ポロト湖に面して伝統的コタンが見える  コタンは、
チセ(家屋)  
チセの内部の炉 

外では弓矢の体験

 チセの外では弓矢を体験できます、家族連れがぶら下がった貝殻をめがけて矢を射っていました。

弓矢体験

野外ステージでは、数々の踊りが展開

 野外ステージは、夏など暖かい時期だけのようです。手拍子しかけ声をかけながら円形になって踊っていました。夕方には歌や楽器演奏などがありました。

野外ステージでのアイヌ古式舞踏

野外ステージでの歌 日が傾いてきた

お昼はアイヌの郷土料理

 ランチは郷土料理を食べました。チェプオハウは、サケを使用した煮物で、寒冷地なので濃い出汁かと思いましたが、意外にあっさりとしていました。隣はぺネイモ、ジャガイモを用いた保存食です。少し柔らかく干し芋のようでした。
 マスコットのトウレプ(オオウバユリ)は山菜でもっとも重要な植物で、6月ごろその鱗茎を掘り、でんぷんを乾燥させ、残ったカスも保存食にしました。

お昼は、郷土料理チェプオハウとぺネイモ 

ウポポイ全体でアイヌ文化を再現している

 ウポポイは民族共生象徴空間とあります。チセの周りにアイヌの作物が植えられていたり、川には水生植物が見られ森に囲まれて、アイヌの生活環境の復元がなされていました。体験交流ホールで古式舞踊やムックリなどの演奏やアニメーションを見学したり、体験学習館では、アイヌの伝統的な楽器体験や料理体験などができます。
 予約していなかったので、体験をすることがなかったのですが、もっと下調べをしていけば1日もっと楽しめたと思います。今回アイヌ文化を知るきっけかになりました。

水生植物 コウホネの仲間 トンボも飛んでいました。 これはビオトープだ!

 篠田謙一著『人類の起源 古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」』を読んでいたので、アイヌの文化に対する興味に加えて、自然人類学的にも興味があり訪問しました。
 夏の北海道の旅、1日1日、新鮮な発見の連続です。今日も帰りの生ビールが楽しみです。

参考にした本
 時空旅人ベストシリーズ18 『もうひとつの視点で読み解く日本の多様性 今こそ知りたいアイヌ~北の縄文、人々の歴史と文化、ウポポイの誕生~』三栄2021年 kindle unlimited で読めます。


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