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作品紹介#1 牛のいる風景に集う(卒業制作)

今回は私が2019年3月に京都造形芸術大のランドスケープデザインコースを卒業した際の、卒業制作について紹介したいと思います。
私がランドスケープデザインを通じて実現したいことが、少しでも伝われば嬉しく思います。

タイトル:牛のいる風景に集う 
〜 コロニヘーヴによる新しいコミュニティの実現 〜
〜 牛の放牧による地域内サステナビリティの実現 〜

対象地は私が住む千葉県千葉市にある「千葉市農政センター」という、千葉市の農業をサポートする施設です。広さは約24ha。対象地のある場所の周辺は、千葉市により自然共生ゾーンに区分されています。
施設内には、気持ちの良い雑木林が広がり、市民農園等も併設されています。

農政センター

一方で、千葉市が目指すこの地での観光促進や自然共生ゾーンとしての価値は、市民にはなかなか浸透していないものと思われます。
また、地区の高齢化により、地域コミュニティは消滅危機にあり、今まで地域住民がになっていた草刈りや里山の手入れはだんだんと行われなくなってきています。

そこで、この作品で私が目指したのが、以下のようなことです。

ゴール

これを達成するために、2つの仕掛けを考えました。
仕掛け① コロニヘーブによる、新しいコミュニティの実現
仕掛け② 牛の放牧による、地域内サステナビリティの実現

まず、仕掛け①の「コロニヘーブによる、新しいコミュニティの実現」について。
コロニヘーブとは、デンマーク後で庭(ヘーブ)の集合体(コロニ)という意味で、デンマークの人々が休みの日に楽しんでいる、小屋付きの庭のことです。
都会に近い千葉の里山にコロニヘーブを設けて、都市住民が週末に里山暮らしをしながら、住民同士でコミュニティを創造する仕掛けです。

コロニヘーブ

次に、仕掛け②の「牛の放牧による、地域内サステナビリティの実現」について。
実は、千葉は酪農の発祥地でもあります。今でも、この地区では酪農業を営んでいる農家さんがあります(政令指定都市なのに!ちょっとびっくりしました)。
そこで、地域の産業である酪農を生かし、育成牛(最初に妊娠を迎えるまでの牛)を放牧します。
その過程で出る牛糞を堆肥化し野菜や果樹を育てることで、地域資源を生かしたサステナブルなシステムを実現したいと考えました。

放牧

ゾーニング計画及び、全体平面図です。

ゾーニング


敷地の中央部は放牧エリアとなっていて、放牧風景を眺められる位置にマルシェやシェアリビングのある建物を配置します。
放牧エリアの周辺の雑木林の中には、コロニヘーブを点在させます。そのコロニヘーブの集落をつなぐよう、道を通します。


それぞれのエリアの詳細図です。

コロニヘーブ詳細_ページ_09

コロニヘーブ詳細_ページ_10

コロニヘーブ詳細_ページ_11

私がこの卒業制作を通じて伝えたかったのは、新しいコミュニティのあり方と、大量消費・大量生産のシステムから抜け出す新しいようで昔からあるようなサステナブルなシステムです。
地域社会のつながりが薄れている現在、都市住民はどこかしらでそんな懐かしいコミュニティを求めてもいると思います。それが実現できるのが、今回の提案であるコロニヘーブのような仕組みです。
そして、コミュニティができると、その中での物質循環が起きて、わざわざ遠くからやってきた野菜などを買う必要がなくなってきます。

サステビリティ

今、私はこの仕組みを、益子の住み処で少しずつですが実現できているような気がしています。
よそ者である私も、少しずつですがご近所さんから声をかけてもらえるようになりました。野菜をもらったり、使わなくなった廃材をもらったり、エステサロンを近所でやっている方とも仲良くなれて、リーズナブルな値段でエステにも通えるようになりました(笑)

新しくて、でも懐かしいようなこんな仕組みを、自分を実験台にしてもう少し深堀りしていきたいと思っています。

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