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国宝茶室「如庵」特別見学会

犬山城の麓にある織田有楽斎の茶室、如庵の特別見学会に参加しました。如庵を所有している名古屋鉄道では毎月参加者を募集しています。

如庵内部特別見学会

20名の定員でしたが応募多数だったため、今回は28名の見学会になったそうです。最初に如庵を見学するグループと最初に呈茶に行くグループに分かれ、私と夫は先に如庵を見学するチームになりました。如庵は重要文化財である旧正伝院書院に隣接しています。ここでも二手に分かれ先に如庵に入るチームと先に書院の説明を受けるチームに分かれました。(建物内部は撮影NGだったので興味のある方は是非実物をご覧になってみてください)

旧正伝院書院

旧正伝院書院はもともとは京都の建仁寺にあったものを財閥の三井家が如庵とともに買い取り、東京に移しました。戦火を免れるため大磯に移ったのち、1972年より今の犬山に至るそうです。もとは如庵と同じく国宝でしたが、現在は重要文化財になっているとのこと。
控えの間は実際に織田有楽斎が隠居生活を送っていたとされています。中の間に続く杉の木の欄間はすっきりとしたモダンなデザインながら、時間とともに少しずつたわんでしまうそうです。やがてたわみがひどくなると上下を逆にして使ったそうです。この部屋には掛け軸を掛ける釘や花釘も打ってありました。
中の間には長谷川等伯の襖絵があるそうで、こちらは今月末からサントリー美術館で始まる「四百年遠忌記念特別展大名茶人織田有楽斎」展で展示されるそうです。(もちろん観に行くつもりです!)

書院にて 向かって右手が如庵



国宝茶室「如庵」

書院の説明を受けた後はいよいよメインテーマの如庵に入ります。
如庵は向切りの二畳半台目で、点前座には道具を収納できる洞庫が付けられています。これは当時隠居生活を送っていた高齢の有楽斎が、いちいち立たなくてもいいように備え付けたという説明がありました。壁面を斜めにカットして人が一人通れる空間を確保し、有楽斎がいちいち身体を動かさずともお運びさんが通りやすいような設計にしているのもご老体に優しい茶室という印象を受けましたが、老人臭さは全くなく、むしろ洗練されたお洒落な印象を受けました。
二畳半ですが6~7人で座っても全く狭さを感じなかったのは、窓がたくさん設けられていて室内が明るかったことと、天井の高さ、そして斜めにカットされた三角の空間や風炉先にある壁が重たい印象の土壁でなく、杉板をアーチ形にくり抜いて作られた軽やかなものであることが起因しているように思います。
5つある窓はそれぞれに工夫を凝らしてありました。中でも細い竹を並べて作られた有楽窓は虹窓とも呼ばれ、日の光が何色にもなって茶室に降り注ぐ仕掛けになっているそうです。昨日は曇っていてあいにく虹のようには見えませんでしたが、室内は十分明るかったです。
古い暦を張っている腰張も特徴的でした。当時の農作業の記録などが書かれているそうです。
全体がなんとなくお洒落な雰囲気ながらも1か所ごつい印象を抱いたのは床柱でした。使用されている木材の名前は忘れてしまいましたが、近年の研究で高野山の木が用いられているのがわかったそう。床柱でよく見かけるような表面がつるすべな質感ではなく、わざわざ面取りして無骨に仕上げているところに武家の心意気を感じました。
床の間は通常見られるような躙口正面でなく、入って左手に位置しています。そうなると正客の座る位置は床の間に近い場所なのかなと、その場にいた参加者の方と思わず顔を見合わせてしまいました。おそらく流派によって座る位置が違ってくるのかもしれませんね。

国宝如庵

苑内散策と呈茶席

最後は有楽苑内部の説明を受け、呈茶を頂きました。国宝の三茶室で一般人が内部に入れるのは如庵だけなのでおススメです。写真では何度も見たことがありましたが、実際に茶室に座ってみると、有楽斎は晩年ここでどんなお客さんを呼んでどんな話をしたんだろうと想像が広がり、愉しかったです。

以上が、昨日の如庵特別見学会の概要です。所要時間は約1時間半で参加費はひとり3,500円でした。特に如庵の独自な設計やデザインに感銘を受けました。興味深い歴史的背景や建築の特徴を学ぶことができ、また苑内散策での呈茶も楽しいひとときでした。
来月は待庵に行ってみようと思っています。



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