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帝国神霊学院 第四章 八咫烏、散る

その瞬間、虚空を再び閃光が駆け巡った。
闇に包まれた柳ケ瀬商店街が昼間のようになった。
「ぐぐぐっ」
異形の群れを指示していた土蜘蛛の動きが止まった。
一世攻撃に身構えていた星天学、瀧少年、植芝盛平の三者は思わず息をのんだ。
すると、天空の彼方から五月雨のように光が降り注いできた。
「ギョエー、ギョエー」
悲鳴を上げる異形たち。光の雨は容赦なく異形たちの上に降り注いでおり、彼らの肉体を溶かしていく。
「先生!いったいあれは何でしょう」
瀧少年が大声で叫んだ。激闘によって怪我を負ってしまった植芝盛平は唸るのみである。
「瀧君、安心したまえ。どうやら我らの敵ではないようだよ」
そう星天学が答える間にも、光の雨は絶え間なく降り注いでいる。
「ウゲゲギャー、ウゲゲギャー」
「これはたまらん」
一斉に飛びかかろうとしていた異形の者たちは光の雨に身悶えしながら徐々に後退していった。
その時、静かに虚空を見上げていた星天学がつぶやいた。
「どうやらずいぶんと後の時代から私たちを掩護射撃してくれた良き念が光の矢となって魔物を撃退してくれたのかもしれんな」
苦しみもだえる土蜘蛛とその部下たちは、捨て台詞を残して去っていった。
「おのれ、うぬらはここで死ぬ予定だったにのう。計算外の事が起こったわ。この借りは必ず返してやるからな」
たちまち闇の眷属たちは夜陰の彼方に消えていった。
「ひゅー、助かった」
思わずへたり込む瀧少年。深手を負って歩く事ができない植芝盛平に肩をかして星天学が歩き始める。
「星さん、今夜は僕らがとっている宿がそこにありますので、しばし休戦と言うことにしましょう」
するとにやりと笑って植芝盛平がこういった。
「何ともすさまじい奴らじゃのう」
三人の影が柳ケ瀬商店街に消えていく。

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