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降圧剤の種類(類型)


降圧剤にも様々な種類がありますが、大きく分けると以下のような類型になります。

血管を広げて血圧を下げる薬
  カルシウム拮抗薬
  レニン・アンジオテンシン系抑制薬
     アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)
     アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬
  α遮断薬

血液量や心拍出量の増加を抑えて血圧を下げる薬
  利尿薬
     サイアザイド系利用薬
     カリウム保持性利尿薬
  β遮断薬


血管を広げて血圧を下げる薬


血管の収縮が強くなると血管内は狭くなり血液の流れが悪くなります。
そうなると心臓はより強い力で全身に血液を送り出すようになります。
その結果、血圧は上昇します。
これが高血圧を引き起こす一つの原因です。

しかし、血管を広げることができれば、血液の流れは良くなり、血圧は下がります。
そこで、血管を広げる作用を持つ降圧薬があるのです。

なお、血管の収縮が強まる原因はひとつではありません。
そこで、その原因に応じて様々な降圧薬が開発されています。
それらの降圧薬は大きく分けて以下の3つのグループに分類することができます。

1 カルシウム拮抗薬
2 レニン・アンジオテンシン系抑制薬
3 α遮断薬


1 カルシウム拮抗薬

カルシウム拮抗薬とは血管の平滑筋が収縮するのを抑えることによって血圧を下げる薬です。
平滑筋とは血圧の壁を構成する筋肉で、平滑筋が収縮すると血管全体が収縮します。
この平滑筋を収縮させる原因のひとつがカルシウムイオンです。
平滑筋の表面にはカルシウムだけが入れる通り道(カルシウムチャンネル)があり、カルシウム拮抗薬はこのカルシウムチャンネルを塞ぐことでカルシウムイオンが平滑筋に入ってくることを防ぎます。その結果、血管の収縮を防ぎ、血圧が下がるのです。
基本的に降圧薬は人によって(というか高血圧となった原因によって)効く効かないがあるのですが、このカルシウム拮抗薬はほとんどの高血圧患者に効果があるといわれています。
そのため、降圧薬としては第一選択薬として使われることが多いのです。

2 レニン・アンジオテンシン系抑制薬

レニン・アンジオテンシン系抑制薬とは、レニン・アンジオテンシン系のホルモンの反応を遮断することによって血圧を下げる薬です。
レニン・アンジオテンシンとは腎臓から分泌されるホルモンです。これらのホルモンの反応によって血圧は上昇します。

① レニンがアンジオテンシンシノーゲンを分解
      ↓
② アンジオテンシンⅠができる
      ↓
③ アンジオテンシンⅠをACE(アンジオテンシン変換酵素)が変換
      ↓
④ アンジオテンシンⅡができる
      ↓
⑤ アンジオテンシンⅡが血管を収縮させる
      ↓
血圧が上昇する

このような反応が起きているのです。
そこで、薬によって、このようなホルモンの反応を遮断することで血管を拡張させ、血圧を下げるのです。

そして、レニン・アンジオテンシン系抑制薬も大きく以下の2種類に分けることができます。

アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)
アンジオテンシンⅡが血管を収縮させると書きましたが、具体的にはアンジオテンシンⅡが血管の平滑筋にあるアンジオテンシンⅡ受容体に結合することで血管が収縮するのです。
そこで、アンジオテンシンⅡ受容体を塞いでアンジオテンシンⅡの働きを抑制するのがアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)です。
上記のフローチャートの⑤の段階で作用する薬です。

アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬
この薬はアンジオテンシン変換酵素(ACE)の働きを抑え、アンジオテンシンⅡが作られないようにする降圧薬です。
上記のフローチャートの③の段階で作用する薬です。

3 α遮断薬

交感神経の働きが活発になると交感神経系の伝達物質であるカテコールアミンというホルモンが分泌されます。このカテコールアミンの一つであるノルアドレナリンが血管の平滑筋にあるα受容体と結合すると、血管が縮小して血圧が上昇します。
そこで、ノルアドレナリンとα受容体の結合を遮断して、血管を拡張させ、血圧を下げるのがα遮断薬です。


血液量や心拍出量の増加を抑えて血圧を下げる薬


心臓から送り出される血液の量が増えると、それに比例して心拍出量も多くなります。
その結果、血圧が上昇するのです。
そこで、血液量や心拍出量を抑えることで血圧を下げる薬があります。
この降圧剤は大きく分けて利尿薬とβ遮断薬に分類されます。

利尿薬

食塩をとりすぎると高血圧になります。

食塩の過剰摂取
      ↓
血液中のナトリウム濃度が高くなる
      ↓
血液の濃度を調整するため血管内に水分が多く取り込まれる
      ↓
血液の量が増加する
      ↓
心拍出量が増える
      ↓
血圧が上昇する

という流れになるわけです。
そこで、血液中のナトリウムの排出を促進させることで血圧を下げるのが利尿薬です。

血液中のナトリウムは腎臓で濾過されて尿細管に送られます。
ところが尿細管には体に必要な物質を再吸収する機能があり、濾過されたナトリウムやカリウムの大部分は再吸収されます(イオンチャネル)。

利尿薬は、このイオンチャネルの働きを抑えてナトリウムを再吸収させないようにするのです。
再吸収されなかったナトリウムは尿として体内から排出されます。
利尿薬の服用により血液中のナトリウムが減ると、血液中の余分な水分も排出されるので、血液の量が減り、その結果血圧も下がるのです。

そして、この利尿薬は主に2種類あります。

サイアザイド系利尿薬

尿細管にあるナトリウムを再吸収するためのイオンチャネルとカリウムを再吸収するイオンチャネルの両方を抑える利尿薬です。
最もよく使用される利用薬です。
ただし、カリウムの再吸収を防ぐため、副作用として低カリウム血症を引き起こすケースがあります。

カリウム保持性利尿薬

尿細管にあるナトリウムを再吸収するためのイオンチャネルだけを抑える利尿薬です。
カリウムの再吸収は防がないので、高カリウム血症を引き起こすケースがあります。

β遮断薬

交感神経の働きが活発になると交感神経系の伝達物質であるカテコールアミンというホルモンが分泌されます。このカテコールアミンの一つであるノルアドレナリンが心臓に分布するβ受容体と結合すると、心臓が強く縮小して血圧が上昇します。
そこで、心臓のβ受容体を遮断して、心臓の収縮を弱め心拍数を減らすための降圧薬がβ遮断薬です。
β遮断薬の服用により心拍数が減れば、血圧は下がります。
このようにβ遮断薬は心臓の収縮を抑える薬なので、高血圧患者の中で心臓病のリスク(頻脈性不整脈や狭心症など)が高い患者に適した降圧薬です。


処方してもらった降圧剤がどの分類に属するのかを患者自身が確かめよう!!


高血圧患者で医者から降圧剤を処方してもらった場合、多くの患者は医師に言われるがままにその処方してもらった降圧剤を飲み始めると思います。

もちろん、ちゃんと薬を飲むことは大切なことです。
しかし、その前に処方された薬がどういうものなのかを知っておくことは必要です。
降圧剤であれば、それがどの類型に属するものであるか、その商品の作用と副作用は、他の薬との飲み合わせはどうか、などといった点をちゃんと確認し、理解することは絶対に必要です。

自分の体に対して何らかの作用を及ぼすものを口に入れるのですから

そして、何かわからない点や不審な点があれば早急に、かつ遠慮なく医師に相談することです。

医師が処方した薬が必ずしもあなたにとって最適なものだとは限らないのですから


参照文献


高血圧治療薬ハンドブック
医者からもらった薬がわかる本
NHK今日の健康 高血圧


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