棋譜並べ 小池重明編① 四間飛車対急戦 (天野高志)

久々のnote更新。今回から何回か(飽きるまで)棋譜並べやりたいと思います。以前の色んな記事が書きかけで放置されてますが、楽しみにしてる方申し訳ないです、飽き性なのをどうか許してください…(^^)

題材として選んだのは昭和の真剣師・小池重明。終盤の粘り強さと勝負術がアマチュアにとって参考になるのと、巷に小池重明棋譜集がないので、いっそのこと自分が作ってしまえということで執筆に至りました。

本局は朝日アマ名人の天野高志との1局です。91年の対局なので小池にとってはかなり晩年の対局となります。(小池は翌92年に死去)

この将棋は後手番の小池が十八番の四間飛車穴熊に組み、対して天野が急戦から先攻する展開となりました。序盤はお世辞にもあまり参考にならないので飛ばして、終盤から次の一手形式で5問紹介したいと思います。妙手と言うほどの手ではなく有段者なら容易く思いつくレベルの手ですが、粘りある手が多く、こうした積み重ねが勝率UPにつながるのだと思います。アマチュアの短い将棋では100点を追求するのはなかなか難しく、秒読みの中で70~80点の手を継続して指せるかどうかが往々にして勝敗の分かれ目です。深い読みは要らないので、第一感の方向が合っているか確認する感覚で解いてみてください。

※ソフトで細かく調べたわけではないので最善手ではないかもしれません、そこはご容赦ください。選定基準は実戦的な手で参考になるかどうかで、多分に私の主観と偏見を含みます。


それでは第1問。

先手が▲8四桂と両取りをかけてきたところ。どう対応しますか?

910315天野 第1図



910315天野 第1図答

答は△8三香。ここでやってはいけないのは△3七銀成や△9九とです。確かに駒得或いは駒損を避けられますが、▲9二桂成△同玉に再度▲8四桂と打たれて後手玉がかなり露出します。具体的にすぐ負け筋に陥るわけではないですが、王手がかかりやすくなるという意味でかなり勝率を下げる手であることは間違いないです。まあこの場合は駒得が大きいのでそれでも勝ちなんでしょうけど…。

ここで真っ先に考えるべきは次の▲8四桂のお代わりをどう防ぐかということ。△8二金は場合によってはある手ですが、薄い受けなのでできれば考えたくないところ。△8三銀や△8三歩でもいいのですが攻め味に乏しいのが難点。よって、84の地点を守りながら87まで狙う△8三香が正解。同じ意味でも△8二香だと92の香が露出するので、将来▲5六馬+▲3八馬の二枚馬でいきなり詰めろがかかる展開があり得るので、ここは△8三香のほうが良いでしょう。

続いて第2問。▲6一銀と金に引っかけられたところ。どうしますか?

910315天野 第2図



910315天野 第2図答

答は△7一銀。前問と同じ発想で、受けないと玉が露出するので気持ち悪いです。駒をはがす攻めには駒を投入する受けということで、がっちり△7一銀が正解。△7一金もあるのですがこの場合は▲4五馬が王手で入るのが気持ち悪いのと、△8三香が浮いてしまうので、実戦的には逆転の可能性を高めてしまっています。ソフトは△7一金を推してますが、30秒の秒読みなら△7一銀の方が勝率高いでしょう。

続いて第3問。前問から先手が▲4六歩と銀を取ったところです。攻めだけの手だと反動が怖いです。さあどうしますか?

910315天野 第3図



910315天野 第3図答

答は△5四桂。これは攻防の手で、効果は2つ。

①27の馬が将来▲4五馬と出た際の馬のラインを予め消している

②好位置にいる▲6六馬に働きかけ、あわよくば△3九飛成を実現させるor▲7七銀の紐を外して逆サイドからの攻めを効果的にする

実戦は▲5五馬に対して更に△6三桂と追いかけ、気づいたら27馬の馬筋が三重に止まったので後手玉が大分安全になりました。

続いて第4問。▲8六歩と桂に当てて攻めを催促したところ。自玉は安全でしょうか?3手読んでください。

910315天野 第4図



910315天野 第4図答

答は△7七桂成▲同玉△8二銀。銀は取るとして、桂を渡すと後手玉は▲8二銀△同玉▲7四桂以下、27の馬まで働いて詰んでしまいます。この詰み筋は少し長いので省略しますが、仮に詰まないとしても相当に危ないです。△8二銀は読みとしてでなく指が自然にそこに行ってほしい一着。この手入れをするだけで後手陣は見違えるように堅くなります。

最後の第5問。これは前の4問と比べると少し難しいです、少し技を使います。先手が▲3三歩と打った局面。無策に歩を取ると▲6二金から張り付かれる筋が気になります。さてどうしますか?5手示してください。

910315天野 第5図



910315天野 第5図答

答は△2九飛▲3九桂△同飛成▲5九歩△3三竜。手順を尽くして龍で歩を回収して自陣を鉄壁にするというのが出題意図でした。問題図では飛車を逃げてみたいのですが、気の利かない逃げ場所でどうしても利かされ感があります。そこで、飛車を取られた瞬間がまだZだということに着目して△2九飛が好着想。次に金を取っても馬を取っても詰めろになるのがミソです。先手が両取りを受けるには▲3九桂の犠打を放つしかないですが、手順に33の歩の回収に成功した上図は逆転の綾がほぼなくなりました。

本局の棋譜並べは以上となります。最後までお読みいただきありがとうございました。

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