エルモの崩し方②

前回の記事が意外と好評(?)のようだったので第二弾を書いていきます。今回も3問構成で全て振り飛車番です。再度言いますがここでいう答えは最善の保証はないのであくまでも参考程度に捉えてくださいね^^

まずは第1問。

▲1一角成として舟囲いだったら振り飛車優勢となるものの、エルモ囲いのために距離感がよく分からずどう形勢判断すればよいか分からない、となった方は多いはず。ここからどう指しますか?

答えは▲2六香。

ここで他の手を指しても▲1二馬と指せば△2二銀と受けることになります。というわけで上図ではすぐに△2二銀が無難でしょう。対して先手は▲1二馬。そして居飛車が並に△7七歩成とした次の手が急所です。

振り飛車は▲4五銀。これがエルモ攻略の急所です。エルモには玉頭銀が有効な場合が多いです。今回のケースでは持ち駒の銀を打ちましたが、もちろん▲5六銀型から▲4五銀とすることもできます。これで次に▲3四銀から23の地点を狙います。

仮にここから居飛車が△9九竜と香を取ったとして(もちろん最善ではないですがあくまで振り飛車の狙いを知るためにあえて緩手を指してます)、以下▲3四銀に△1一桂で受かってるようですが…

そこで▲1一馬!!、△同銀、▲8二飛(下図)とすればエルモは寄り形です。

部分的に馬と桂の交換は大損でもこの場合は桂の価値が高いので十分成立します。上図で23の地点を受けなければ▲2三香成で挟撃形ですし、△2二銀とすれば▲3五桂が痛いです。居飛車は23と43の地点が同時に受かりません。こうなると振り飛車の美濃囲いが堅く見えますね。

さて、最初の図に戻ります。

ここで指してしまいがちなのは▲1二飛ですが対エルモには効果はいまひとつです。

居飛車は△2二銀と受けますが、実はここから狙いの構想があります。以下▲2六香△6六角▲1五歩に△4一玉!

これがエルモ囲いの特性を生かした反撃。次の△1一銀が受からなくては△3九角を見せられて振り飛車敗勢です。

舟囲いでは1二飛+1一馬は比較的安定しやすかったのですがエルモではそうはいかず、早く催促されてしまうのでご注意を。1二飛が毎度悪手になるとは思いませんが、△3一金と備えている形に対して打っているのでその意味では味が悪い手と言えるでしょう。

ここでもう1度最初の図に戻ります。

ここで▲1五歩はどうか。この端攻めも理にかなっている手といえます。

しかしエルモならではの受け方があるのでこの場合はそこまでうまくいきません。少し進めてみましょう。

▲1五歩以下△7七歩成▲1四歩に△2二銀▲1二馬△1一歩。

舟囲いなら△4一金or△4二金型なのでこんなところに歩を打ったら▲2二馬~▲1三歩成で早速崩壊してしまいますが、△3一金型なので△1一歩が成立しています。

対して▲2二馬に△同金と取れるのが強みで、▲1三歩成に△同金とした下図は意外とエルモの隙がなくて玉が見えません。▲1三香成は△1六桂が怖いので流石に指しきれないでしょう。

というわけで▲1五歩も微妙な展開。まとめると、本問は玉頭銀を狙う構想がよかったようです。

続いて第2問。

エルモが桂を跳ねている形です。どこかで角切りが見えますが、さて今すぐ切るのか、それともどれくらい味付けをするのか、というところが読みの焦点となってきます。

答えは▲5三香。

これに金を逃げると▲5二銀と足されて崩壊するので△5二桂と受けるくらいですが、この交換を入れて角切りを決行するのがポイント。▲3三角成△同玉に▲4五桂(下図)です。

以下△2二玉▲3三銀△2一玉▲4二銀成△同金右となったときに香を打った効果が表れます。▲5二香成△同金と形を乱して、▲3三桂打(下図)で居飛車寄り形です。

以下△2二玉▲4一桂成△3二金に▲3一桂成が効きます。ポイントは▲3三桂打として▲4五桂という種駒を残すことで、こうすることで振り飛車の攻めは切れません。

さて、問いに戻り、ここで単に角切りがなぜだめなのかを検証します。

ここから△同玉▲4五桂△2二玉▲3三銀に△同銀が成立してしまいます。▲同桂成△同玉▲5一竜で寄ってそうですがそこで△4二銀打とした下図は龍を逃げる必要があり攻守交替してしまいます。

ここで▲5三香△5二桂の交換があれば▲3一竜~▲5二香成でむしろ面白いのですが…。

と、ここまで読めて▲5三香と指せれば100点満点ですね。

さて、ここでもう1度問いに戻り、ここで▲5三銀とするとどうなるかを見ていきます。

これはpart1に出てきた攻め筋ですが、この場合は桂を持っていないので厳しさは薄れています。というのも、居飛車が無視して△1五歩としたとき、▲4二銀成△同金右に▲2四桂と打てないからです。仕方なく▲4二銀成△同金右に再度▲5三銀とするくらいですが、そこで△4一銀(下図)と粘られると厄介なことになります。

これは振り飛車が自玉を見ながら攻める展開になりそうで、難局だと思います。以上、細かい持ち駒の差によって攻め方が変わるという例でした。

最後に第3問。

今度は振り飛車が高美濃です。立体的な囲いを活かして上から攻めたいところですが、さてどうしますか。

答えは▲4四歩△同歩の突き捨てを一本入れて▲2五香と逆サイドから迫るのが好着想。

この香がぼんやりしているようで結構厳しいのです。仮に△3三桂と催促すると、以下▲4三歩△同銀▲2三香成△同玉に▲7五角(下図)と進みます。

この金取りをどう受けても角切りから▲4一飛(▲2一飛)があり、居飛車は持ちこたえられません。

では▲2五香に対して△3三銀打と受けるのはどうか。

これは鍛えの入った受け方ですが、▲4三歩△同銀▲4五歩(下図)とすれば振り飛車好調な攻めが続きます。

4筋からの攻めがうるさいのと、▲7五角がどこかで攻防になりそうですね。ちなみに△3三銀打ではなく△2二香に対しても同様の攻め筋で攻めていけば、壁形の分、△3三銀打よりも更に振り飛車が得をしています。

以上、エルモの崩し方②でした。最後までご覧いただきましてありがとうございました。

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