「現代調の将棋の研究」の研究① テーマ1 後手、早繰り銀の速攻(矢倉) テーマ図に至るまで

皆さんこんばんは。羽生先生が新刊を出してから少しだけ将棋のモチベが上がりました。本が届き次第すぐに読み始めたのですが内容が中々に高度で難解のため、私のレベルをもってしては一読しただけでは到底理解できませんでした。そのため、疑問点についてソフトを使って色々と検討したのですが、その際に得た知識の整理をすべくnoteでまとめたいと思いまして記事執筆に至りました。

※勿論ですが本の内容を垂れ流すわけにはいかないので本に書いてある手順は最小限の引用で済ませるつもりです、気になる方は是非お買い求めください!本を読んだ後に記事を読むと少しだけ理解が深まるかもしれません。

まずはテーマ1:後手、早繰り銀の速攻(矢倉)を見ていきます。

このテーマ図以降の進行を読んで、私は一つ疑問が生じました。

△4一玉の一手は必要なの?

この後の進行を見ると分かるのですが、角交換の筋が出てくるわけではないので王手飛車のラインを気にする必要はないですし、△4一玉▲5六歩の交換を入れているせいで先手から▲4六角の反撃が間に合う展開になっているのです。後手は速攻をしたいので、必要がないなら△4一玉の一手も省略するべきではないでしょうか。…というわけでテーマ図以降の変化を調べる前に、まずは後手居玉の仕掛けの成否を見ていきたいと思います。

テーマ図の3手前、7筋の歩交換の前まで巻き戻し、そこから△4一玉と▲5六歩の2手をカットして第1図。

上図より
▲同 歩 △同 銀 ▲5六歩
で第2図。

放置しても後手が△8六歩突いてくるのは明らかなのであえて▲7六歩と催促する必要はありません、歩は攻めに残そうということで▲5六歩。ここで△4一玉なら▲7九角でテーマ図に合流しますが、ここで△8六歩から銀交換したらどうなるか見ていきましょう。

第2図以下
△8六歩 ▲同 銀 △同 銀 ▲同 歩
△同 飛 ▲8七歩 △8四飛 ▲7九角
で第3図。

こうなると、次に▲2四歩△同歩▲同角が王手になるのが気持ち悪いですね。例えばここで△7三桂と攻めの手を指すとどうなるでしょう。

第3図以下の指し手①
△7三桂 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 角
△4一玉 ▲4六角
で変化図1。

この角引きが桂取りになっていて後手はかなり忙しいです。△6二金と支えるくらいですが、▲2四歩でも▲7五銀でも支えきれないでしょう。というわけで居玉は危ないということで、第3図の時点で△4一玉と予めかわしておくくらいですが…

第3図以下の指し手②
△4一玉▲4六角
で第4図。

2筋交換をせずに単に角を出るのがポイントで、△4一玉と備えた状態で▲2四歩△同歩▲同角は王手にならないので△3五銀が生じて面倒なことになります。

▲4六角と覗いた第4図は結論から言うと△7三歩と謝るのが最善です。でも、これなら後手が手損で屈服している形なので先手としては銀交換されてもまずまずだと思います。

では△6四銀と銀を打ち付けて頑張るのはどうでしょうか。これは桂を跳ねる余地を残すための苦心の一手ですが、以下一例として第4図より

△6四銀 ▲7七桂 △4二銀 ▲7六歩
△7三桂 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 角
△2三歩 ▲5七角 △8二飛 ▲4八銀
で第5図。

後手は手が進むにつれて駒組みに制約を受けます。例えばここから△5四歩と突くと▲4五銀が両取りになり、△4四歩や△3三銀は角道が止まるため、▲7四銀~▲6五歩のB面攻撃が生じます。後手は何がいけないかというと△7三桂・△6四銀の組み合わせが負担になってしまってるんですね。▲5七角型のために△8四飛型を作れませんし、そのため△7五歩から攻めることもできず、また△6四銀の存在が邪魔で△6五歩からこじ開けることもできません。すぐに技が決まるわけではありませんが先手作戦勝ちといっていい局面です。

というわけで第4図では△6四銀と突っ張るのはやや無理をしているので、△7三歩くらいが相場ですが、これなら先手も主張がある展開です。

最初に戻り、後手が居玉のまま早繰り銀で仕掛けられるかという問いを立てましたが、これに対する答えとしては後手がつまらない展開になる、が結論となります。言語化してまとめると下のようになります。

「後手が居玉で仕掛けても、先手が引き角から2筋の歩交換をしたときに王手になるため、△4一玉の一手が結局必要になる。先手は1手稼げたため▲4六角が間に合い、後手は7筋交換したにも関わらず△7三歩と謝る必要があり、手損の上に桂の活用が見込めなくなるのでつまらない。」

改めて、居玉は避けよという格言の偉大さを感じますね。

次はテーマ図以降の展開の疑問点をまとめていきます。今回はここまでです。

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