嬉野流 端角対策の考察①

こんばんは。

数日前に嬉野流への端角対策について書いた記事(西村さんの「嬉野流の潰し方」シリーズ)を読んで以来、嬉野流への有力な対策を持ち合わせてなかったこともあり、嬉野流には専ら端角を用いるようになりました。

しかしながら指していくうちに嬉野流側の嫌な対策がいくつか見つかってしまい、さてどうしたものかと西村さんの続編に期待すること数日。どうやら続編の兆しはなく、その間に嬉野流に当たったらRや達成率を吸い取られる由々しき事態になるので、嫌々ながら端角対策への対策を講じることにしました。奇襲戦法への対策は正直乗り気ではないんですけどね…。

それと、本来であればお題は「嬉野流対策への対策に対する対策」とするべきなんですけど流石に意味不明なので上記のようにしてます(笑)。

さて本題へ。まずは嬉野流側の対策を紹介してから、それに対する端角側の対策を見ていくという形にします。

早速端角対策その1について見ていきましょう。

初手より

▲6八銀 △8四歩 ▲7九角 △8五歩

▲7八金 △7二銀▲5六歩 △1四歩

▲5七銀 △1三角で下図。

嬉野流に対する端角の思想は嬉野流側の角銀を牽制してその間に棒銀を間に合わせようとすることですが、「いや牽制になってないよ?」という反論が対策その1。

上図以下

▲2六歩 △8三銀▲2五歩 △8四銀

▲4六銀 △9五銀 ▲5七角で下図。

▲5七角が急所の一手です。この手の狙いは▲8四歩を見せて端角側を足止めすることにあります。まずは嬉野流側の成功図を見ましょう。

上図以下

△8六歩 ▲同 歩 △同 銀 ▲8四歩

△9五銀 ▲2四歩 にて嬉野流優勢。

▲8四歩と打たれては攻撃続行するには△9五銀と銀をバックして歩を回収するよりないですが▲2四歩がぴったりで、以下△同歩でも△同角でも▲3五銀~▲2四銀のドリブルが速いですね。

筆者は実戦で対後手嬉野流でこの形を指されたことがあり、その時は先手番で1手得して△3四歩型のため▲3五銀がなく、△8四銀~△9五銀が間に合う形となり端角側の優勢になりましたが、嬉野流が先手番の場合はそうはいきません。では端角側はどうすればよいでしょうか。

まずは最初の図に戻りましょう。

ここから▲2六歩 △8三銀▲2五歩
△8四銀▲4六銀までは前と同じ手順ですが、ここから
△8六歩 ▲同 歩 △7五銀▲5七角△6四銀
(下図)が工夫の手順。

一本△8六歩と突き捨ててから△7五銀とこちらに出て、▲5七角に△6四銀と中央に引くのがポイントです。

上図からもし▲2四歩△同角▲3五銀と攻めてきたら、すかさず△8六飛▲8七歩△5六飛(下図)で一丁上がりです。次に△5七飛成~△3五角が受かりませんね。このために△8六歩を突き捨てていたのです。

△6四銀の局面ですぐに攻められないので、では突き捨てを咎めて▲8七金はどうか。他にしっくりくる手がないのである意味一番自然ですが…。

前々図より▲8七金以下、△6五銀▲5八金△5六銀で下図。

△6四銀の狙いは次に△6五銀と出て56の歩を掠め取ることでした。

56の歩を防ごうと▲5五歩と突いても構わず△5六銀で傷が深まるので▲5八金はこうするよりないところです。上図では角が当たっているのですが、逃げ場が実は難しいのです。

仮に▲6八角だと△8五歩▲同歩△同飛▲8六歩△6五飛(下図)

で67が受からず端角側の優勢です。以下▲7六金には構わず△6七飛成と突っ込み嬉野流側は収拾不能です。

これは△5六銀に▲7九角でもほぼ同じ展開です。そして▲6六角と逃げる手は△4六角~△7八銀で、次の△6七銀成を狙われてしまいます。

また、▲7五角は▲5三角成を狙っていて難しいようですが、よく見たら角を成ると△5七歩が生じるので先手になっていません。下図のように△8五歩と合わせられるくらいでも痒い感じです。

▲同歩△同飛に▲8六金と上ずって受けると△8八歩が残ります。形勢自体は難しいですが、少なくとも端角側が攻勢を取れる展開でしょう。

これで端角対策その1についての解説は終わり。

続いて端角対策その2を見ていきましょう。

初手より

▲6八銀 △8四歩 ▲7九角 △8五歩

▲7八金 △7二銀▲2六歩で下図。

これは、▲5六歩~▲5七銀を後回しにして飛車先の歩を突くことで後手の態度を聞く指し方。「このタイミングで端角なら二枚換えの筋がないので端攻めしますよ?端角しないなら銀がドリブルしますけどどうしましょ?」と言っているわけです。

ではこれに対して端角を諦めて棒銀を目指すとどうなるか。

上図以下△3二金▲2五歩△8三銀▲7六歩で下図。

嬉野流側は後手が△8三銀と形を決めたことに満足して▲7六歩と通常形に戻し、矢倉を目指します。勿論一局の範疇ですが、専門的にはやや後手が形を決めすぎの嫌いがあります。

端角を諦めてはつまらないことが分かったので、それでは端角にして端攻めを受けて立つ方法はないかと考えたのが以下の対策。

前々図より△1四歩▲2五歩△1三角▲1六歩△3二銀で下図。

△3二銀では△3二金もあるところですが個人的には銀の方が左右対称で美しいので銀を採用しました。さて端攻めが見えてますが大丈夫でしょうか…。

上図以下▲1五歩△同歩▲同香△1七歩で下図。

角取りを受けずに△1七歩が好手。後手の陣形はバランスが良く、角を渡してもすぐに不都合なことはありません。対して先手は▲6八銀▲7九角といびつな形をしており、玉が右側から攻められたら逃げ道がありません。ということはこの局面では、角香交換でも端を逆用して手を作るのが正しい方針となります。

角換わり棒銀で△1六歩は部分的に定跡としてある形ですが、ここでは△1七歩が勝ります。放っておくと△8六歩~△同飛~△1六飛の展開を見せつつ、どこかのタイミングで△1八歩成の際に飛桂両方に当たる形だからです。(△1七歩成は飛車にしか当たらないので▲2六飛とされて効果が今一つ)

さて上図より進めてみましょう。△1七歩以下▲1三香不成△同香に先手はやることがないので▲2六飛と先受けするくらいですが黙って△1八歩成で下図。

この後は桂を拾って△7四桂~△8六歩を狙っていけばよいです。先手は駒得ながら次の狙いに欠けるので実戦的には後手が勝ちやすいでしょう。

というわけで早めの▲2六歩に対しては構わず端角にして端攻めに対応できることが分かりました。では最後に端角に対して端攻めをしない場合どうなるか見ていきたいと思います。

上図は▲1五歩と突くところで▲4八銀と自重した局面。これは様子見の手で、場合によっては次に▲1五歩を狙ってます。ここで後手は△3五角とするのが好手。対して▲5六歩から銀を繰り出していきたいところですが、今すぐ歩を突くと△8六歩から横歩を取られてしまうので、▲6九玉と様子見するところでしょうか。

しかしこれには後手の狙っている手があります。▲6九玉以下△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩に
△2六飛!(下図)

これで飛車交換が確定となり、こうなると後手陣のバランスの良さが光ります。形勢はまだ難しいながらも大分後手が勝ちやすいでしょう。

以上、嬉野流 端角対策についての考察でした。今後新しい対策が出てきたらまた書くかもしれません。(そうならないことを願います)

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