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「ト-ベ・ヤンソンを知る」読書案内

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2022年8月の記事一覧

トーベ・ヤンソンの新たな挑戦 短編集『聴く女』

 トーベ・ヤンソンの短編アンソロジー2冊と自伝的な小説『彫刻家の娘』(1968)を概観しました。今回は、ヤンソンがムーミンの小説の完結後にはじめて発表した本格的な大人向けの本を紹介します。  その本は『聴く女』というタイトルで、18の短編小説を収めた短編集です。1971年に出版されましたが、その前年の1970年は、ムーミンの小説として最後になる『ムーミン谷の十一月』が出版された年であり、また、ヤンソンの母シグネ・ハンマシュティエン=ヤンソン(通称「ハム」、※1)が亡くなった