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君よ、めざせブルル社長

目の前のキットカットのパッケージにこう書いてある。
●本品は卵、アーモンド、ごまを含む製品と共通の設備を使用しています。
●本品は高温でやわらかくなった後、冷えて固まると表面が白くなることがあります。これは油脂分が分離したもので、風味は劣りますが召しあがっても身体にさしさわりはありません。
●万一品質に不都合がございましたら、ネスレお客様相談室にご連絡ください。お取り替えいたします。
といったぐあいに。ここで一つ小袋をあけて、そして食おう。味についてはいうことない。しかし短くなってんなぁ。気付かなければ気にならなかったが、気付いてしまったから気になる。「小さくなりゆくお菓子」はネット上ではホットな話題。よく気付くものだなぁ。やはりネット民は目ざとい。私がメーカーの社長なら、自社のお菓子は発売当初から一定期間ごとに0.1ミリずつ小さくしていく。そうすれば、ロングセラーになればなるほどコスパが上がるし、万一客に気付かれた際も「いや、うちのお菓子はすべて、年々小さくするよう設定していますよ」と開き直ればいい▼

なんか…考えることがブルル社長だなぁ。匿名ラジオにもあったけど、人々の脳裏にきざみこまれるブルルイズムなんなんだ。もちろんかいけつゾロリが偉大なればこその現象だが。どうせならゾロリイズムな人でありたかった。そういえば、かいけつゾロリのツイッターアカウントが有名になって久しい。ゾロリ(およびブルル社長)は絵本のみならず、ネットとの親和性が高いようだ。ゾロリ公式がバズる頻度は、カントリーマアムのサイズボケがバズるのとちょうど同じぐらいかもしれない▼

キットカットに話を戻そう。バーコード横の小さな文字を書き起こした。手書きで(初稿はノートにペンで書いた)。あの文字を読んでいると、そして書いていると、気づくことが山ほどある。いや、山ほどは言い過ぎか。丘ほどある▼

「卵、アーモンド、ごまを含む製品と共通の設備を使用しています」パッケージに度々ある、こういった文言。見るたびに、細かいわぁ~と思う。いい意味でね? だって気付かんもん普通。食材だけでなく、避けるべき”設備”があるなんて。あなたが探偵なら、アレルギーを利用した殺人事件を捜査する時は、お菓子の工場のことまで考えが及ばないといけない▼

「これは油脂分が分離したもので、風味は劣りますが召しあがっても身体にさしさわりはありません」これももう、細かさがすごい。この世界のどこかには、表面で固まった油脂分を見つけ、これは何だと警戒する人が居る。その人ことを想ったお菓子メーカーの人々は、無数にあるお菓子のパッケージのほぼ全てにこのようなメッセージを書きくわえる。これはもはや文学的である▼

気付く方も気付く方だが、それを想う方も想う方だ。なんだろう、お菓子を好きになると、視覚や共感性が鋭敏になるのか? そういえば、賢い人はみんなお菓子を好んで食べる。漫画では天才肌の探偵が、現実では対局の合間の棋士が、「これが自分の原動力」と言わんばかりに好みの甘味を楽しむ。てっきり糖分補給のためにやっているとばかり思っていたが、あれは逆で、お菓子を食べたから賢くなったのかもしれない。であれば、客よりお菓子を食べているはずのお菓子メーカーの人々は、我々一般のお菓子好きより賢いはずだ。なるほど、パッケージの気配りが私の想像を超えて細かいことも、ブルル社長の考えに魅了されることも、これで納得できた。我々が目指すべきは探偵でも棋士でもなく、お菓子メーカーの社員なのだ。

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