究極の、儚い

まずは、部屋を出よう。
あらかた決めていた。次は、コンビニに向かおう。そこで、一番安いアイスを買う。スーパーではいけない。コンビニでなくてはならないのだ。
コンビニでは、その、一番がすぐにわかった。きっとそうであると最初から思っていた。
一つ手に取る。僕にとっては、今、君が一番、美しい。当然である。そして、尊いものにしてみせよう。これは決心なのだろうか。ああ、そうさ。醜いが、しかし、決め事は守る。

僕は、とっておきを思いついたのだ。

そして、家に連れ、シェルターに閉じ込める。ここは安全だから、少しの時間待っていておくれ。僕は深夜に、ビニール袋にありったけの保冷剤を詰めて、再びアイスを出し、上からまた被せた。
その日は、近所の公園に行った。六月であった。到着して、中をぐるっと散歩し、帰宅すると、案外へっちゃらな様子で、やるなあと感心した。僕は、素直な子供の、父親の帰りを待つみたいに嬉しかった。

次の日はもっと遠い、隣町のような所まで散歩をした。たまに探ると、ピンと背筋を伸ばしていて、堂々として可愛かった。街灯と月を交互に見上げて、どちらも良いのだと、耽るほどに余裕だった。僕はビニール袋からアイスを出して、掲げてやったりもした。

次の日は、昼間に。また別の日は、軽い食事にも連れて行った。細心の注意を払えば、なんてこともなかった。そして、日々を繰り返した。

僕は、わかっていた。

ある日。七月のこと。語りかけられたのだ。海に行きたいと!「わかっていたさ」だから、その日はどこへも連れて行かなかった。その代わり一人で、ホームセンターに出かけて、クーラーボックスを買って帰った。帰り道は、あまりにも最低な夕暮れで、無論、それは僕のことであった。僕は、馬鹿野郎。買える中で一番高いものを購入したのだ。許しておくれ。そして、親を恨んだ。生まれてきたことを後悔するなんて、そんな覚悟はとうに無かったが、それでも恥ずかしくて仕方がなかった。

朝、自然と目が覚めた。外はまだ暗いじゃないか。僕は、再び眠れるわけがなかったので、思い出したように外に出て、あのコンビニで、氷を大量に買い足した。帰って、おや、少し明るくなったかな。ねえ、そうでしょう、おはよう。夢を叶えに行こう。きっと大丈夫、大丈夫さ、そうだろう。いや、心では、頼むからそんなに嬉しそうににしないでくれと、本当にそればかりであった。


これ以上書けてたまるものか。
僕のユーモラスはなんとも平凡か。
そして、今の感情さえ捨ててしまえ、なにが、なにが究極だの、儚いだの、死んでしまえ。
馬鹿にするな。僕には、ポリシィがある。せめて、僕よ、素直であれ。


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