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ダークウェブの子猫達(1)

2014年5月、タイで歴史上19回目のクーデターが発生し、東北部ナコンラーチャシマー県出身のプラユット・チャンオチャ陸軍大将を首班とする暫定政権が発足した。北部及び東北部を地盤とするタクシン派とバンコク及び南部が票田の反タクシン派のどちらにも反感を買わないように配慮した人事だが、タクシン派を勝たせない選挙を行うことが存在目的。だがクーデター発生当時私は「またか」と思い大して関心を持っていなかった。

タクシン派を勝たせないための選挙なら過去に何回も行われていたが、その全てがタクシン派の勝利に終わっていたので、選挙なんて何回やっても同じだと思っていたからだ。タイ人の大部分も選挙とクーデターの無限ループに飽き飽きしていて、別に政治に興味を持っていなかった。

だが、バンコクのインテリ層は自分達の利益を守るため、民主主義の名の下で軍政に反発していた。
「私を信じて。選挙は誰も殺さない!」タイなのに英語で書かれた垂れ幕を掲げた小柄な女性は26歳の割に童顔で幼く見えた。

その女性タプティム(仮名)は某日系企業勤務のOLでクラブDJのバンコク大学卒。日本への語学留学歴もあったが、当時彼女の経歴は報道されなかった。

「民主主義のセレブ」と呼ばれ、不敬罪の廃止、選挙の早期実施をやはり英語で訴えていた謎の美少女はネット上で「あのサーオ・ウェン(眼鏡っ娘)可愛いね」と政治的主張もどこへやらアイドル視され、フェースブックでファンページも作られた。

しかし彼女には猟奇的なところがあり「自分の膣内の細菌でヨーグルトを作る」という実験とその結果を自身のフェースブックに公開していた。

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