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タイの報道を読む もはやこれまで?

TwitterThailandが本格的に始動した。アカウント取得は3月だが初ツイートは5月13日。「タイランドこんにちは!」というただそれだけのものが見事にタイTwitterユーザーの反発を買い炎上。軍事政権が非常事態宣言期間中に認可したものだったので「当局の監視垢だろう」と嫌われたのだが5月11日の春耕節終了後というタイミングもあった。


今年の春耕節は「新型コロナウイルス感染拡大中につき」という理由で本来必ず臨席される国王夫妻が帰国すらしなかったという状況下でスラユット枢密院議長が国王代理となり執り行われた。某英国人ジャーナリストはその様を「新しい国王かな?」と皮肉った。

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2010年5月の強制排除から十周年、#真相究明というハッシュタグがつけられて当時の画像や映像がTwitterに投稿され多数シェアされていた。非常事態宣言下でなければ普通にデモがあったはず。正直なところ、その目的の少なくとも5割は反政府・反国王運動拡大抑制目的の非常事態宣言。軍事政権にとっては流行り病様々とも言える。

上記マガジンは私が2010年5月のバンコクを取材した記録中心のもの。当時の首相アピシット氏は殺人罪で起訴されているが2014年5月のクーデターでそれもうやむやになり今に至る。別のマガジン「ダークウェブの子猫達」で述べた某日本人男性も関与した猟奇事件とアピシット元首相には深い関係があるのだが詳細はご購読頂くとして、時系列的に「バンコク黙示録」とこの「タイの報道を読む」シリーズを繋ぐものと捉えていただければ幸い。

今30歳のタイネチズンも当時20歳の大学生で地方在住だったりする。当時タクシン派は反国王的で富裕層子弟から嫌われていた。赤シャツ隊に至っては無教養な田舎者集団扱いで「あいつら日当1000バーツで雇われてるんだぜ」とバカにされていたのだが、9世が亡くなり10世が即位すると「なんで王様が国に必要なの?税金の無駄じゃないの?」という声が公然と上がるようになった。9世も「足るを知る経済よりタクシノミクスだ」という逆風はあったにせよ批判を押さえ込む人徳と功績があった。しかし10世には何もない。相対的に赤シャツ隊が民主勢力として認識されるようになった最近だが、10年前は親ラーマ9世の黄色シャツ隊の方が圧倒的に「民主派」とされていた。

私は2008年に訪タイした際に「あなたは政治家と軍上層部のどちらが好きですか」というアンケートをバンコクで取った。結果から書くと政治家の方が好きと答えた人はゼロ。9世存命・在位時は「国王の承認したクーデターなら支持する」という風潮。つまり軍事政権幹部は国の為に働いているという一般認識。当時はネットで軍事政権の汚職が暴露されるということも無かったし出来なかった。これはスマホの普及とは関係無い。9世批判に繋がることはタイ国民が自粛していたのだ。

だが皇太子時代から評判の悪かった10世は昨年の戴冠式以降も暗殺を恐れドイツで逃亡生活。5月4日の戴冠記念日にも姿を現さなかった。影武者のナナシさんもどこに消えたのか。「新型コロナウイルス感染拡大防止の為行事を縮小しマスコミ取材もさせない」という姿勢も非常事態宣言期間、つまり5月31日以降は通用しない。国内感染者数ゼロが続き規制緩和も始まっているのに更なる延長は無いだろう。

6月3日はスティダー王妃生誕日。この日に国王陛下が帰国しない口実はあるだろうか。帰国しなかったらもう余生は国外で過ごすのだろうと見なされても仕方の無いところ。

9世存命時は「皇太子が即位したらタクシン元首相に恩赦を出し復権させるのでは」という不安を民主派タイ人は口を揃えて言っていたがその可能性は1%。タクシン元首相も70歳。もはや孫のいるおじいちゃんになった。

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