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【MLB】アンドリュー・フリードマンの異質な手腕

みなさんはMLBのデータサイト「baseball reference」の「franchise page」を見たことがあるでしょうか。

ここでは球団の成績や永久欠番、観客動員数などがまとめられています。その項目の中で気になるものがありました。

「Number of Players used in Games」、「Number of Pitchers used in Games」。すなわち試合に出場したバッター、ピッチャーの数がそれぞれまとめられているわけですね。MLBの試合に出場する選手は26人ロースターに登録されている必要がありますが、マイナー選手の昇格やトレードなどによって、シーズン合計で見るとMLBの試合に出る選手はかなりの数になります。

ちなみにこの年のブレーブスでは53人のバッター、33人のピッチャーがMLBの試合でプレーしていたそう。ざっと他の球団のデータも確認しましたが、これは決して多いほうではありません。ブレーブスといえば有望な若手選手を早い時期に長期契約で囲い込むことで有名ですよね。2023年は囲い込み契約をした選手たちがほとんど怪我することなく試合に出場していましたので、そりゃまあこの数字になるわけです。

以下、「Number of Players used in Games」と「Number of Pitchers used in Games」をまとめて「出場選手数」と呼称しますが、この数字は少ない方が良いんですかね?

先ほどのブレーブスの例を見ると、出場選手数が少ない→主力が怪我なく試合に出場している→チームも好調、というロジックが成り立つような気もします。

では実際に調べてみましょう。古すぎるデータを持ってきても微妙かなと思ったので、2001年〜2023年を対象に勝率と出場選手数の相関係数を求めてみました。

これを見ると、MLB全30球団中26球団が負の値をとっていることがわかります。すなわち、ほとんどの球団は出場選手数が多いほど勝率が低くなっているのです。裏を返せば出場選手数が少ないほど勝率が高くなるということなので、一般的には先ほどのブレーブスのロジックが適用できるといえそうです。

しかし、この傾向から完全に外れている球団が三つありますよね。ミルウォーキー・ブルワーズ、ロサンゼルス・ドジャース、タンパベイ・レイズの三球団です。

もちろん様々な要因が考えられますが、ブルワーズの編成トップはデビット・スターンズ、ドジャースとレイズの編成トップはアンドリュー・フリードマンが長らく務めていましたよね。彼らの手法といえば、若手有望株を長期間囲い込んだり大型契約を乱発したりというよりも、選手層を厚くすることでリスクを分散させている印象を受けます。

実際、今オフにスターンズ率いるメッツが獲得したのはエイドリアン・ハウザーショーン・マナエアルイス・セベリーノハリソン・ベイダージョーイ・ウェンドルといったバウンスバックまたはWAR2.0~3.0くらいを期待できる選手たちばかりです。フリードマン率いるドジャースは、今オフは派手な動きが目立っていますが、ジェームズ・パクストンキケ・ヘルナンデスの獲得、ライアン・ブレイジャージェイソン・ヘイワードとの再契約など、しっかりと選手層に厚みを持たせようとしています。

一方、2001年から2023年の出場選手数ランキングを見てみると、↑の三球団はせいぜい平均レベルの水準に留まっていることがわかります。となると、選手層に厚みをもたせ、個の強みが最大限活きるようにするというアプローチは、他の球団もトライしていないわけではないのでしょう。

ただ、先のデータからもわかる通り、選手の頭数を闇雲に増やしたからといって必ずしも勝利につながるわけではありません。出場選手数を増やすことで勝利に導くアプローチは、MLBのフロントオフィスに入るだけの特別な才能を持った人の中でも、本当に獲得すべき選手を見分けることができるような、ほんの一握りの人間にしかできないのかもしれません。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

【References】

【Photos】
・Andrew Friedman 2011 by Jennifer Huber CC表示-継承2.0
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Andrew_Friedman_2011.jpg

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