見出し画像

消費税法・解法プロセス

 今回は、消費税法の解法プロセスを紹介させていただきます。

 消費税法は、一般的には捨て論点として扱われる傾向にあり、多くの方が部分点狙いの戦略を取られるとは思いますが、僕が受験生の頃は、周りには反して、消費税法で高得点を狙いに行く戦略を取っていました。その理由としては、①消費税法は多くの受験生が敬遠する傾向にあることから、攻めどころでもあり、差を開き得る分野であること②消費税法はハマりさえすれば大量得点が狙えることが挙げられます。
 租税法は、論文式試験においても、攻めの科目として捉えられ、僕自身も租税法で稼ぐことを意識していました。実際、本試験では満点(15/15)を勝ち取ることができ、科目1位となることができました。なので、同じように、租税法で稼ぎたいと考えている受験生の中で、消費税法のコツをつかめていない方がいらっしゃいましたら是非参考にしてほしいです。

 以下、目次となります。

1.消費税法の問題を解くにあたってのポイント

 消費税法の問題を解くにあたって、問題となるポイントは2点挙げられます。1点目は、知識・理解に基づく判別です。消費税法の問題では、各具体的事象について、規定に基づく区分を行う必要があります。こちらについては、事前の学習において頭の中で落とせているかが重要であり、テキストや答練を通じて各規定を抑えていくほかありません。僕自身は、ポケコンに情報を集約し、定期的に確認することで、抑えようとしていました。
 そして、2点目は、判別結果に基づく正確な集計です。多くの受験生はこの2点目を抑えられていないために、消費税法に苦手意識を有していると感じます。僕が所属していた大原でも、レクチャーにおいては集計方法についての解説がなかったので、本試験において出題されるような、資料が多く存在する総合問題の解法プロセスが最初は分からなかったです。しかし、集計方法さえ抑えられれば、意外にも簡単に得点可能なので、今回は、この2点目の集計方法に着目していきます。

2.消費税法の集計フォーム

 消費税法の総合問題を想定した場合の集計フォームを紹介します。これは、大原の消費税法(テキスト)の問題の一番後ろに添付されています集計フォームを基に、一部アレンジを加えたものとなります。

消費税法・解法プロセス1

 大まかなポイントは上記資料内に記載ありますが、もし利用方法が分からなくなりましたら、ご連絡ください。また、僕自身は問題を解くときに色ペンやマーカーを多用していましたので、本集計フォームにおいても色ペンを用いることで集計しやすくしています。
 なお、本集計フォームは、昨年度の事業年度(平成31年4月1日~令和2年3月31日)を想定したもの(税率が3種類登場することを想定)となっていますので、令和3年度以降の出題形式を想定すれば、もう少しコンパクトになると思います。

3.各数値の算出方法

 次に各数値の集計方法について紹介します。

1.課税売上割合の計算
(1)課税売上額(免税売上及び非課税資産の輸出等を含まない。)
⇒ 集計フォーム右上の「7.8%/6.24%/6.3%」に記載されたものを税抜処理して合算する。
(△も考慮する。「特定」は集計しない点に注意する。)
(2)免税売上額(非課税資産の輸出等を含まない。)
⇒ 集計フォーム右上の「0%」に記載されたものをそのまま合算する(△も考慮する)。
(3)非課税資産の輸出等の金額
⇒ 集計フォーム右上の「非輸」に記載されたものをそのまま合算する(△も考慮する)。
(4)非課税売上額(非課税資産の輸出等を含まない。)
⇒ 集計フォーム右上の「非」に記載されたものをそのまま合算する(△も考慮する)。
(5)課税売上割合の計算式の分子の金額
⇒ (1)~(3)の数値を合算する。
(6)課税売上割合の計算式の分母の金額
⇒ (1)~(4)の数値を合算する。

2.課税仕入れ等に係る消費税額の計算
(1)課税仕入れ等に係る消費税額のうち課税資産の譲渡等にのみ要するもの
⇒ 集計フォーム左上の「課のみ」に記載されたものから税額を計算する。
(△も考慮する。黒と赤で税額算出方法が異なる点に注意する。青はそのまま合算する。(2)及び(3)も同様。)
(2)課税仕入れ等に係る消費税額のうちその他の資産の譲渡等にのみ要するもの
⇒ 集計フォーム左上の「非のみ」に記載されたものから税額を計算する。
(3)課税仕入れ等に係る消費税額のうち課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの
⇒ 集計フォーム左上の「共通」に記載されたものから税額を計算する。
(4)個別対応方式による控除対象仕入税額
⇒ (1)+(3)×課税売上割合
(5)一括比例配分方式による控除対象仕入税額
⇒ {(1)+(2)+(3)}×課税売上割合

3.消費税額の計算
(1)課税標準額
⇒ 集計フォーム右上の「7.8%/6.24%/6.3%/特定」に記載されたものを税抜処理して合算する。
(△は考慮しない。「特定」は税抜処理が不要な点に注意する。千円未満の端数切捨てに注意する。)
(2)課税標準額に対する消費税額
⇒ 集計フォーム右上の「7.8%/6.24%/6.3%/特定」に記載されたものから税額を計算する。
(△は考慮しない。黒と赤で税額算出方法が異なる点に注意する。)
(3)控除過大調整税額
⇒ 集計フォーム右下の「回収」に記載されたものから税額を計算する。
(4)返品等対価/貸倒れに係る税額
⇒ 集計フォーム左下の「返品」or「貸倒」に記載されたものから税額を計算する。

4.実践編

 それでは、実際の総合問題を用いて実践してみましょう。今回題材として使用するのは「令和 2 年論文式試験 租税法 第 2 問 問題 3」となります。問題については、各自以下のURLをご参照ください。

 以下が集計フォームとなります。

消費税法・解法プロセス1_02

 以下が各数値の算定方法となります。

1.課税売上割合の計算
(1)課税売上額(免税売上及び非課税資産の輸出等を含まない。)
⇒ (1,672,000,000-27,500,000-1,650,000)÷1.1+(2,627,640,000+2,700,000+41,580,000-44,982,000-4,860,000)÷1.08=3,921,350,000
(2)免税売上額(非課税資産の輸出等を含まない。)
⇒ 1,188,000,000
(3)非課税資産の輸出等の金額
⇒ 1,120,000
(4)非課税売上額(非課税資産の輸出等を含まない。)
⇒ 129,600+1,620,000+11,880,000+371,206,800=384,836,400
(5)課税売上割合の計算式の分子の金額
⇒ 3,921,350,000+1,188,000,000+1,120,000=5,110,470,000
(6)課税売上割合の計算式の分母の金額
⇒ 3,921,350,000+1,188,000,000+1,120,000+384,836,400=5,495,306,400

2.課税仕入れ等に係る消費税額の計算
(1)課税仕入れ等に係る消費税額のうち課税資産の譲渡等にのみ要するもの
⇒ 1,540,000,000×7.8÷110+7,830,000+(2,351,160,000+26,730,000+21,600,000+9,720,000+16,038,000+20,790,000)×6.3÷108+5,940,000×6.3÷100=260,089,770+20,790,000)×6.3÷1085,940,000×6.3÷100=260,089,770
(2)課税仕入れ等に係る消費税額のうちその他の資産の譲渡等にのみ要するもの
⇒ 3,920,400×6.3÷108=228,690
(3)課税仕入れ等に係る消費税額のうち課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの
⇒ (23,760,000+11,664,000+11,761,200)×6.3÷108=2,752,470

3.課税標準額に対する消費税額
⇒ 1,672,000,000×7.8÷110+(2,627,640,000+2,700,000+41,580,000)×6.3÷108+5,940,000×6.3÷100=274,796,220

4.納付すべき消費税額の計算
(1)控除対象仕入税額
① 個別対応方式による場合
⇒ 260,089,770+2,752,470×90%=262,566,993
② 一括比例配分方式による場合
⇒ (260,089,770+228,690+2,752,470)×90%=236,763,837
⇒ (27,500,000+1,650,000)×7.8÷110+(44,982,000+4,860,000)×6.3÷108=4,974,450
⇒ (27,500,000+1,650,000)×7.8÷110+(44,982,000+4,860,000×6.3÷108=4,974,450
(3)貸倒れに係る税額
⇒ 8,640,000×6.3÷108=504,000
(4)中間納付額(前課税期間の実績によっている。)
⇒ 6,600,000÷12=550,000≦4,000,0000
6,600,000÷12×3=1,650,000>1,000,000
1,650,000×3=4,950,000


 以上となります。今回紹介した解法プロセス(集計フォーム)は一例に過ぎず、やり方は人それぞれだと思うので、色んな方法を試してみて、自分なりの集計方法を身に着けてみてください!

 今回のテーマは、アンケートの中でも比較的人気のないもの(租税法の勉教法)でしたが、自己満足で紹介させていただきました。次回は、アンケートの他の候補であった、「会計学(財務会計論)の勉強法」か「論文式試験対策」についての記事を作成しようと思います。最近疲れたんでサボりそうですけど笑

 ではまた!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?