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上岡龍太郎さんがいなくなってしまってすごく寂しい

5月19日に上岡龍太郎さんが逝去していたと報じられた。2000年に引退してしまっていたとはいえ、心底憧れた芸人さんが亡くなったのは初めてかもしれない。この1週間は様々なラジオパーソナリティが振り返る上岡さんの思い出を聴いて過ごした。

僕は大阪出身だが、芸人・上岡龍太郎はほぼ間に合っていない。リアルタイムの記憶は、夜ふかしした時に見た『探偵!ナイトスクープ』と、土曜の昼間に父が欠かさず見ていた『ノックは無用!』程度である。しかし、後にお笑いに興味を持ち、上岡さんがやってきたことを追っていくうちに、「多感な頃に上岡さんを見ていたら、僕は東京に行かなかったかもしれない」と思うほど、心酔するようになっていた。スマートで理知的で、ひねくれていて理屈っぽくて、流暢にスラスラと喋り、その一方でとんでもない下ネタと毒舌が飛び出す。上岡さんには僕の好きなものが詰まっていた。独演会やライブでの上岡さんを見ることができなかったのは、一生後悔し続けるだろう。

今の仕事を始めてからも、方々で上岡さんのことが好きだ好きだと言っていたら、とある方から連絡をもらい、全放送の9割ぐらいにあたる『パペポTV』の録画映像をBlu-rayディスク17枚分もいただいた(後継番組の『LIVE PAPEPO 鶴+龍』の映像はない)。ある日、そのパペポのBlu-rayを見ていたら、上岡さんが爆笑問題さんについて少し語っている回を発見した。「これは…」と思い、昔事務所の会議室で太田さんと二人きりになった時、「僕、実は上岡さんの大ファンで、『パペポTV』を見ていたら爆笑さんの話をしていた回があったんですけど、上岡さんに会ったことってあるんですか?」と尋ねたことがある。太田さんは「パペポは毎週見てたけど、その回は覚えてないなあ」と前置きをしたのち、「いつかパペポみたいなのができたらと思ってたけど、なかなかその機会はなくて、『太田上田』でやっとそれっぽいことができたかなあ」「漫画トリオの記憶はほとんどないけど、時事ネタをやっていて、一回上岡さんと俺と田中で漫画トリオの再現をやらせてもらった」「引退間近の頃、談志師匠と上岡さんが対談をしていたのを偶然見て、俺らのことを話してくれていた」と教えてもらった。僕にとって、上岡さんに会ったことのある人から直接聞くことができた、唯一の上岡さんの思い出である。

上岡さんへの憧れの思いや、パペポで大爆笑したトークなどは到底語り尽くすことができないが、僕が上岡さんの凄さを一番感じたのは、映画批評ネタ『浜辺にて』。普通の講談に縛られない上岡流講談の一つで、『浜辺にて』という映画についての30分近い批評が淡々と語られる。面白いのが、『浜辺にて』という映画は存在しないということ。説得力のある設定と上岡さんの語り口に思わず引き込まれ、架空の映画だと分かった時にはゾワッと全身に鳥肌が立った。

そんな『上岡流講談“浜辺にて”』が、今日13日関西エリアだけではあるがNHK『日本の話芸』で再放送される。東京在住のためリアルタイムで見られないことを悔いつつ、NHKプラスの見逃し配信で思う存分鑑賞します。

頑張って生きていたら、もしかしたらいつかどこかで上岡さんとニアミスできるかもしれない。そんな夢を抱いていたが、叶わぬものとなってしまった。上岡さんが亡くなってしまって、僕は想像以上に寂しい。


好きになった時には引退してしまっていたので、もはや資料を集めることしかできない。
『パペポTV』のポスター。コピーは糸井重里さん。ちなみに、パペポのポスターは僕のスマホの待ち受け画面。
『パペポTV』のカセットとプロマイド。


インスタグラムに昔描いた上岡さんの似顔絵があった。

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