仮定として私がナスを手に取ったとしよう。

おそらく年単位でナスに触れていない。もしかしたら私は人生でナスを触ったことがないのかもしれない。皿、箸を経由して口に入場する間に私の皮膚は一切の接触をしない。

ナスの手触りを想像する。

おそらく、やわらかく、そして、かたい。

一般的なダイニングの高さから落としてもギリギリ潰れないだろう。一方、トマトは凄惨たるありさまだ。でも、体重をかけたらぐずりぐずりとペタンこになるに違いない。

滑り具合はどうだろう。ちょうど消しゴムくらいだろう。机に押し付けながらずらしていけば、小気味よく摩擦で震えそうだ。でも、力加減を間違えたらぐずりぐずり。

爪を立てるとほんのり跡が付く。時間がたってもそれは治ることもなく、傷が私に反省を促してくる。お前のせいだぞ。すみません。

包丁で切るのはおあつらえ向きだ。トマトのようにつぶれず、西瓜のように硬すぎず、お子さんが初めて包丁を使うときはナスがいい。

こんなことを考えても、まだまだ数年はナスに触れないのだ。




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