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河和田微住エピローグ/河和田微住

文・攝影:Jerry Wang
翻訳:伊藤ゆか

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大阪と京都を通るのは3度目だったか、5度目だったか。そこを通り過ぎるということは、濃厚な地方文化へ迫っていくということだ。微住というものは、その土地の人々と一緒に、心ゆくまで遠慮なしに自分の才能を発揮するもの。青春は短く、存分に楽しまねばならない。微住に参加することで、互いの関係はぐっと近づく。

地方を知るのには、たくさんの段階がある。河和田の微住プランでは、最初に「地方の生活をリアルに質感として味わって」と言われ、日本のメンバーは、私たちに日本のありのままの真面目な人や人情といったものを見せてくれた。河和田地区の特徴は、人口がしだいに流出して手工芸が勢いを失ったところへ、移住者たちが独自の深く中身のある生活様式を新たに創り出したところにある。その特徴が今回の旅を実現させ、微住メンバーに希望と、各々の可能性を見出させた。

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微住による私たちへの影響は未知数で、例えばまちづくりに関心のある人たちは、より多くの資源との繋がり、そして工房との深い関わりを生み出すかもしれない。他にも微住が私たち個人に及ぼす影響には複数の「タイプ」がある。ある人は故郷でまちづくりに取り組もうと考えはじめるだろうし、ある人は生活の中の工芸に関心をもつだろうし、職人の魂が宿る作品を購入しはじめる人もいるだろう。

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微住を推し進める地方の活動家たちは、河和田地区の地盤ををしっかりと固め、すぐにガイドの域を飛び越えジャーナリストの域に達するだろう。微住を通じ、河和田地区の変化については様々な可能性を提示したが、それは微住が若者のネットワークを繋げるからである。言い換えれば、微住はその場で感動するだけのものではなく、微住をひとつの資源とし、整理・連結・協創の土台にすることができる。

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微住は一種の土台で、台湾でも同じようなものに”竹山小鎮文創公司”の「share bank」プロジェクトがある。彼らは毎年地方産業と住民の要望の棚卸しをしていて、例えば百年続く打刃物の店がデザイナーを求めたことで竹山を代表する包丁が新たに開発され、ポン菓子の店では包装用小袋のために精緻なパッケージデザインが作られ、布団屋ではショートフィルムを撮るのを手伝うことになった。同時に彼らは近隣では有名な妖怪村や、吊り橋、指南宮、田舎の空き家などの地域資源の棚卸しもしている。空き家は人々が無料で泊まれる場所にリノベーションして、ワークエクスチェンジに利用しているのだ。

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竹山の若者はこのような(ワークエクスチェンジの)マッチングプランを「share bank」と呼び、ここでは求人や給料ではなく、地元の空き家や生活を用いて外の地域の専門性といかに交換するかを議論する。訪れた人はそのプランを完了させると、残った時間は好きに近くの名所で遊ぶ。これは、かなり持続可能な物々交換のモデルといえるだろう。

「産業が不完全な状態から素晴らしい形に完成されるまでの過程を、皆んなが喜んで見に行くようになれば……一人ひとりが実際に現地を訪れ活動に加わった時、このプランが後押しされる」
コミュニティデザインの方法論の一つに「shifting focus」というものがある。竹山と河和田は同じように、高齢化や産業淘汰、活気の消失など、多くの問題に直面している。しかし角度を変えて見てみると、一つひとつのコミュニティのメンバーは皆それぞれ違った天賦の才や能力や資源などを持っている。彼らは無論とても追い詰められた状態ではあるけれども、皆んなが自分の能力を活かし、一緒に改変を進めることができる。このように、田舎の住民はより積極的に変わることができるのだ。

仕事でもないし、旅行でもないし、ただ寛ぐだけでもない。微住はグラデーションの中間に属していて曖昧なものだ。泊まるのは旅館ではなくて民家で、生活はちょっと不便なところもある。けれど、そんな”不便”があるからこそ、一緒に微住生活をする人たちは問題を見つけて共に解決し、思い出を作ることができるのだ。

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未来のことについて語ると───私は次に来る人がどんな理由で河和田へ微住に来るか知らないわけだが───来るのはきっと、仕事から逃避したい人、自分に潤いを与えてくれる環境を求めている人、伝統工芸に魅入られている人なのではないかと思う。次の微住はおそらく一連の大きなプロジェクトになると思う。春になり福井の至る所で花が咲く頃には、2020年度の「RENEW」の計画、東郷の田植えなどのプロジェクトが始まる。私はもうすでに今年10月のRENEWに期待を募らせていて、再び谷口眼鏡のイノベーションを見たいと考えている。それに、来年の3月末には、ぜひ東郷の佐々木さんの田んぼで田植えをしたい。

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