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セゾン・デ・シリィ

今回はベルギーのセゾンビール。セゾンは今のクラフトビールブームの中でも人気だけど、本家のベルギービールスタイルよりは、奈良醸造さんが得意とするようなアメリカナイズドされたスタイルの方が人気だろう。ま、それはさておき。

■セゾンビールがわからなかった件

さて、年月を少しさかのぼり、ベルギービールブームの時。
私はどうにも、セゾンビールがわからなかった
セゾンビールというものがわからなかった。
セゾンビールスタイルの標準的な味がわからなかった。
それはたぶん俺だけじゃなかった。
よく見かけるのはセゾン・デュポンとセゾン・デ・シリィ。たまに見かけるボン・ヴーとサンフーヤン・セゾン。
全体的にけっこう味が違うくないですか?
特にセゾン・デ・シリィは異端過ぎない?!
全然違うじゃん!!!セゾン!西友?セゾンカード?
なんでこいつらまとめて、1くくりになってんのよ。
こんなの絶対おかしいよ!

セゾンは農家が農作業の合間に飲むビールだから、家ごとに風味が異なるって言ったって、違い過ぎるでしょ!我が家のツナギ多めの合い挽き肉ハンバーグと牛100%手ごねハンバーグくらい違うでしょ


■セゾン・デ・シリィは異端

結論から言うと、セゾン・デ・シリィは異端です。でした。
というかシリィの醸造所近辺で作る熟成期間の長いダークセゾンというスタイルだそうな。な~んだ。わかってしまえばどうということはなかったのだ。

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さて、主な比較対象としてデュポンを考えるとして。
全体的に少し熟して落ち着いたフルーティーな飲み口、ブラウンで少し甘く熟したセゾン……というより落ち着いてフルーティーなベルギー系アンバーに近いのでは。

セゾンの特徴でもあるフルーツフレーバーでもある青りんご、梨、バナナ、レモン系の風味は控えめ。代わりにイチジクや苺と梨かな?

そしてこれが、ちょっとブラウンになった麦芽の味わいと合わさる。麦芽糖の甘みと少しのコクがフルーツ風味と合わさって、梅酒や赤ワイン、わずかなコーヒーリキュールとコアントローのカクテルような味わいになってくる。

スパイシーさもさほどじゃないねぇ。よく嗅ぐとあるんだけど。ほっといてもガンガンに弾けてくる感じではない。

適度な熟成感から来る味わいが深くて、ちょっとした複雑さもある。ボディが軽めなのがまたポイントでフルーティーさが少し表にでやすい。
セゾンデュポンより飲みやすくすら感じるぞ。

今まではちょっと苦手な銘柄だったけども、楽しみ方がわかったらめちゃめちゃ美味しかったわ。定期的に飲みたいねぇ。

セゾン・デ・シリィ
スタイル:セゾン、ダークセゾン
国:ベルギー
醸造所:シリィ醸造所
原料:麦芽、ホップ
アルコール度数:5%

■おまけ
さて。現在のベルギー系セゾンビール…金色で度数が5度以上でスパイシー…については20世紀初頭に大きく変化して成立したタイプらしい。
冬に発酵させ貯蔵しておき夏の農作業に飲むビールなので、熟成期間は長く、色味も金よりは褐色・ブラウン等。飲みやすいように度数は低め(3度~)だが、腐敗防止のためにホップがかなり利いていたようだ。現代のホッピーなセッションエール、イギリスのビターにホップ増量したものが近いのではないだろうか。
となるとセゾン・デ・シリィはむしろ昔のセゾンに近いスタイルなのかもしれない。