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Parc Ferme - 新ひだか町のハードエンデューロクルー No.235より

 4月。新ひだか町のハードエンデューロライダーたちの招きをいただいた。北海道はちょうど桜の頃である。ぼくはハードエンデューロが専門ではないが、岩の上を進んでいくようなライディングも嫌いではない。念のためにAcerbisのスキッドプレートを装着していったのは賢明だった。リアサスのリンケージまでカバーするやつだ。それに、普段はめったに使わないAcerbisのハイドレーションバッグもダッフルバッグに忍ばせて行った。どんな目にあわされるのかわからないから! もちろんタイヤも履き替えた。IRCのVE33s Gekkotaである。このタイヤなら、どんなところでも走れる。岩でのグリップも文句なしだ。
 札幌から約3時間。太平洋は朝の陽光に輝き、ゴールデンウイークらしいリラックスした気分を楽しんだ。本当だったら、日高町に行って、6月に開催予定だったヒダカロックスの準備をしているはずだったが、COVID-19のために、2年連続でレースは中止が決まった。それは残念なことではあったが、反面、こんなことでもないと、毎年毎年、決まったルーティンに縛られて、新しいこと、新しい仲間に出会うこともない。何事も前向きにとらえることもできれば、悲観的にとらえることもできる。どうせなら、いいほうに考えたほうがいいに決まっている。


 集合場所は、仲間の一人が経営している牧場だった。エンデューロで知られている日高は、日勝峠の麓で、山の中に位置しているが、広く「日高=ひだか」というと、えりも岬から苫小牧の東部ぐらいの太平洋岸の一帯を指すことのほうが多い。雪が少なく、夏は霧が多く、冷涼。そのため軽種馬(競走馬)の育成、また牧畜、酪農業が盛んだ。新ひだか町のエンデューロ仲間にも、それに関係する職種に就いている人が多いようだ。
 同じ「日高」である。なのに、ずっと日高で2日間エンデューロに携わってきたぼくたちが、この仲間たちと接点持てずにいたのには、割合シンプルな理由がある。酪農業など、動物の飼育に関わる仕事に従事する、特に経営者は、おいそれと2日間、2日間と仕事を休むことをしないのである。それでも、最近始めたヒダカロックスは、開催地が近いし、しかも日曜日だけ休めば参加できる。ぼくたちは、やっと彼らの存在を認知することができたのである。
 「新ひだか町には、ヤバいやつらがいる」と。

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