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G-NET2020 R2 ブラックバレー広島

G-NET全日本ハードエンデューロ選手権 第2戦

2020年10月18日 広島県
Report and Images:Satoru Ii(ANIMAL HOUSE)

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絶対王者ロッシ不在のG-NETチャンピオン群雄割拠

 2020年、世界中を震憾させた新型コロナウイルス。その影響はもちろんエンデューロにも及んだ。その中でも全日本ハードエンデューロ選手権G-NETは大きな影響を受けた。当初は全5戦を予定していたスケジュールだったが、第2戦のHINO HARD ENDURO 春の陣と、第3戦のHIDAKA ROCKS EXTREME ENDUROが中止、3月の開幕戦CGC大和奈良HARD ENDUROから10月のブラックバレー広島まで半年以上もの長い長いブレイクができてしまった。そしてその間になんと、6連覇を樹立していた高橋博が靭帯を負傷。戦線を離脱するという大事件が起きたのだった。

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山本が「このタイヤのためのコースだった」と豪語したシンコーの540DC。ブロックの間隔の広さだけでなく、秘密はそのコンパウンドにある。


 新チャンピオン候補として有力なのは2018年に最終戦まで高橋を苦しめた若手、山本礼人。そして2019年ランキング2位、G-NET初代チャンピオン(2010年)でもある水上泰佑。さらに「今年の俺のメインレースはG-NETだ」と豪語したミスターエンデューロ、鈴木健二だ。まさに誰が勝ってもおかしくない、三つ巴の戦いが始まった。
 ブラックバレー広島の舞台はホワイトバレー松原。JECエンデューロ選手権の地方選や、ビギナーズエンデューロといった地元レースはかねてから開催してきたが、ハードエンデューロの開催は今回で2回目。しかし、この廃業したスキー場はサバイバル広島が開催されていたテージャスランチに勝るとも劣らない難コースだった。その秘密は開拓スタッフにもある。かつて中国地方に限らず全国から猛者が集まり、もはや伝説となっていた琴引マウンテンエンデューロのスタッフが開拓にあたったのだ。全体的にガレは多いとは言えないコースだが、キャンバーとロングヒルクライムがライダーを苦しめた。さらにレースが進むにつれて土の下に隠れていた石が顔を出し、難易度が上昇していった。
 レース序盤に待ち受けていた難所「ヤミ金キャンバー」を山本がトップで抜けると、レースはそのまま山本リードで展開。僅差で水上が追いかけるものの、じわじわと差が開き、気づけば山本の独走状態になった。鈴木は「タイヤチョイスをミスした」と後に語った通り、得意のワイドオープンも虚しくなかなかヒルクライムが登れず、3番手を走行。今回、山本の好調の要因の一つに、タイヤがあるのは明らかだった。シンコータイヤを愛用する山本はデュアルコンパウンドの540DCを選択していたが、このタイヤはセンター部分に柔らかいコンパウンドを採用してヒルクライムでの直進性能を確保し、サイド部分は硬いコンパウンドを採用してキャンバーやコーナリング性能を確保するという特性を持っている。キャンバーと柔らかい土のヒルクライムが多くレイアウトされた今回のブラックバレーは、まさにこの540DCのためのレースだったと言えるかもしれない。

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