ハートに何を持っているか - Parc Ferme - No.240より
カバー写真 - Taddy Blazusiak Romaniacs 2019 - Future7Media
インタビューは、ぼくがもっとも好む取材のスタイルで、今号では、昨年、ハードエンデューロ選手権でタイトルを獲得、そしてシーズンインのビッグイベントだった、石戸谷蓮が主催する「ケゴンベルグ」でも優勝した山本礼人に協力してもらった。インタビューは、なんといってもその人の個性、人柄に直接触れることができるのがいい。
彼と初めて会ったのは、2015年に、外務省の外郭団体が主宰する日露青年交流事業の一環としてサハリン3日間ハードエンデューロラリーに出場した時だった。両国のエンデューロライダーが参加したこの事業の、日本側の参加者を募るにあたり、当時、ハードエンデューロ選手権の事務局を務めていた河津浩二さんが、3名のライダーのうちの一人として彼を推してくれたのだった。山本は当時20歳で、トップライダーというわけではなかったが、河津さんはまず、彼の若さと将来性、何より人柄を買ったのだろう。そのことは、約1週間彼とともに過ごしてよく理解できた。さすがは河津さんだと思ったものだった。
山本は、それからハードエンデューロに取り組み続け、時に、「自分はいつでも勝てる」というような大口も、わざと叩きながら、次第にトップの一角を占める存在となるが、結局、栄冠を手にするまで8年かかった。
インタビューの中で彼は、こう話している。「マインドセットを学んでから強くなった」。彼は、木村幸司さんという重要な助言者、いわゆるメンターがいる。木村さんは、長年、カラテを続けている人。勝敗の中で生きるアスリートにとってのマインドセットの重要性を山本に教えていたのだった。
アスリートにとってのマインドセットには、もちろん、いろんな考え方があるが、共通するのは「目標を設定すること」そして、目標を達成するために何をすれば良いのかということを具体的にして、それに従って生活すること。その目標はなぜ達成しなければならないのか、それを常に意識することも重要だ。「目標は小分けに設定し、ひとつずつ達成していく」ということは、日本ハムの監督に就任したばかりの新庄氏も言っていたことだ。
漠然とした気持ちで、漫然とレースに臨んでいた山本は、自分のマインドをセッティングする、という考え方を得て、一回りも二回りも強くなった。彼はもともと、はっきりとものを言うことができるタイプの人間だったが、取材では、特にこの部分、なぜ自分は強くなれたのかということについて客観視し、論理的に話すことができていた。おそらく彼の強さは本物で、これからも次々に目標を達成していくだろうと感じる。
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BIGTANKマガジンは、年6回、偶数月に発行されるエンデューロとラリーの専門誌(印刷されたもの)です。このnoteでは、新号から主要な記…
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