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エンデューロとは自主、自律を楽しむこと - エンデューロ日記 No.44


写真/文 春木久史

エンデューロの朝はパルクフェルメから始まる。Parc Fermeとは、フランス語源のモータースポーツ用語で車両保管所のことだ。

この競技では、各選手ごとに毎日、朝パルクフェルメに入る時刻、モーターサイクルを整備するるワーキングエリアに入る時刻、エンジンをかけてスタートする時刻、各タイムチェックポイントに到着すべき時刻、そしてまたパドックに戻ってきてモーターサイクルを整備する時間、それを終えて再びパルクフェルメにモーターサイクルを収める時刻まで。これらが分単位で決められている。

取材する、撮影する立場にある人、観戦し応援する人、もちろん選手をサポートする人たちも、どの選手が、1周250~300kmもある広いルートであっても、いつどのあたりにいるのか把握するのが難しくない。選手は、時間通りに、ある意味では時計の一部のようになって競技をしている。300人、400人、500人という選手が、朝のパルクフェルメに入る時から、整然と淡々と動き、またパルクフェルメに戻って来る。

過去のISDEでこんな光景を見たことがある。

最初の組の選手がパルクフェルメから出て、スタート台の手前にあるワーキングエリアで整備を始めた。ワーキングエリアには、スタートのちょうど10分前に選手たちが移動してくる。スタートは1分間隔で大抵3~4名一組なので、最初の組がスタート台に上がる頃には、30~40台のバイクと選手、そしてメカニックたちがひしめく空間になる。

そしてスタートの1分前には、大会の役員が選手をスタート台に誘導する。選手たちは、ライディングナンバーと名前ぐらいを読み上げられ、スタート時刻きっかりになるとスタートの合図が出されて、ここで初めてエンジンの始動を許され、そしてスタートしていくのだ。

だが、この時は、どういうわけか、スタートの1分前になっても、選手をスタート台に整列させるべく、誘導する役員が見当たらない。それどころか、スタート台の付近に、大会の役員が誰もいない。

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